2019 Fiscal Year Research-status Report
非同意が選好的反応となる評価の相互行為研究:「褒め」と「自己卑下」を中心に
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18K00684
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
初鹿野 阿れ 名古屋大学, 国際機構, 特任教授 (80406363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 夏穂 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (70536656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 否定的自己評価発話 / 会話分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は「褒め」に対する「謙遜」のように隣接ペアの第2成分の位置以外の連鎖上の位置に現れた「自己卑下」発話を分析し、「自己卑下」が自慢や、褒めの連続など、先行する過剰なやり取りや偏りに対して、バランスを取るような役割をしていることを明らかにした。本年度も、昨年度同様大学生、大学院生による接触場面、母語場面の会話、及び国立国語研究所「日本語日常会話コーパス」モニター公開版を利用し、隣接ペアの第2成分の位置以外の連鎖環境に現れる「否定的自己評価発話」を抜粋し、その機能を分析した。分析の結果、新たに以下のような否定的自己評価発話の働きが明らかになった。「否定的自己評価発話」とは、「謙遜」や「自己卑下」のように自分で自分に対して行う否定的な表発話である。 ①自分の発話が他者への挑戦となりうる発話への対処として働いていると思われるもの。自分の発話が意図せず、聞き手に対して挑戦的な意味合いも持つ可能性がある場合、自分への否定的自己評価を行うことで、相手が挑戦に応答する機会を失わせているようにみえる。 ②相手から期待される行為を自分が遂行できないのではないかという懐疑に対処していると思われるもの。言語化されていないものであっても、その場で期待される振る舞いが自分は十分にできないかもしれないと言うことでヘッジ(hedge)のような役割をしていると考えられる。 ③自分の未来の行為の予想(肯定的なもの)が聞き手によって十分に支持されなかったやり取りのあとの位置において、自ら否定的な結果予想を行うもの。②と同様に、自分の振る舞いがうまくいかないかもしれないと言うことでヘッジのような役割をしていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大防止のデータ収集が十分にできなかった。さらに、いくつかの学会が中止になり、発表の機会が減った。また、大学での教育におけるオンライン対応のため、時間が十分に取れなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今あるデータを精査し、隣接ペアの第2成分とは異なる位置に現れる否定的自己発話の異なる事例を集め、その連鎖の特徴と働きについて分析を続けたい。また、「褒め」や「からかい」を含め、個々の事例を通じて類似した働きがあるのかも検討していきたい。
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Causes of Carryover |
学会等の中止により、旅費として準備した予算を他に振り分けたため差が生じた。
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Research Products
(6 results)