2018 Fiscal Year Research-status Report
言語少数派の子どもを対象とする遠隔型の「母語による学習支援」の開発
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18K00700
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
清田 淳子 立命館大学, 文学部, 教授 (30401582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇津木 奈美子 帝京大学, 帝京スタディアブロードセンター日本語予備教育課程, 講師 (90625287)
高梨 宏子 東海大学, 課程資格教育センター, 助教 (90748542)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 言語少数派生徒 / 遠隔授業 / 母語 / 教科学習支援 / スカイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「言語少数派の児童生徒」(外国から来て日本で暮らす、日本語を母語としない子ども)に対する新たな教科学習支援の方法として、「教科・母語・日本語相互育成学習モデル」(岡崎1997)に基づく母語を活用した学習支援を、スカイプを利用した遠隔授業として行うことの可能性を追究する。本研究の目的は、①遠隔型の「母語による学習支援」にはどのような特徴があるのか、②遠隔型支援に参加する母語支援者と子どもは、支援に対してそれぞれどのような意識を持っているか、③遠隔型支援を受けることで、対象生徒は在籍級授業の参加に向けてどのような手がかりを得ているか、の三つである。 このような研究目的に対し、初年度の30年度は以下の3点に取り組んだ。 1. 平成30年5月から12月にかけて、中国出身の生徒2名を対象に母語を活用した遠隔型支援を継続的に実施し(全18回)、支援者と子どものスカイプを通じた談話データを収集した。 2. 遠隔型支援の対象生徒が在籍する公立中学校にフィールドエントリーし、平成30年5月から平成31年1月にかけて、「教科・母語・日本語相互育成学習モデル」に基づく対面支援を実施し(全19回)、教室談話データを収集した。 3. すべての支援が終了した後、遠隔型支援の対象生徒に対し、遠隔型支援に参加し続けた動機、対面支援と遠隔型支援の比較、「支援者一人に対し参加生徒二人」という形態や、映像を伴わない状況をどのように受け止めているのかなどについてインタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項で示したように、母語を活用した遠隔型支援の実施、対象生徒が在籍する中学校での対面支援の実施、及び対象生徒へのインタビュー調査の実施についてはおおむね順調に進んでいる。 これらの研究活動や調査を通して収集したデータは、遠隔型支援では全17回分の談話データと支援記録、対面支援については全18回分の談話データと支援記録、そして対象生徒へのインタビュー・データである。このうち、現在、遠隔型支援の談話データ(7回分)とインタビュー・データについて文字化作業を終え、翻訳作業を進めている。 さらに、遠隔型支援を進める中で、当初予定していた「読みの活動」だけではなく「書くこと」の活動も定期的に導入されるようになったことから、「聞く・話す・読む」だけでなく「書く」も加えた4技能の力を育成する場として遠隔型支援をとらえる視点を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度も前年度とは属性が異なる生徒を対象に遠隔型支援を実施するととともに、対象生徒の在籍校の国際教室で対面支援を行い、以下の項目について分析を進め、成果をまとめる。 1.遠隔型支援で行われる読みの活動の種類と読みの活動を支える学習課題のレベルについて、支援で用いた教材資料と談話データをもとに明らかにする。その際、対面支援との比較検討も行う。 2. 2018年度の遠隔型支援には複数名の生徒が参加したことから、生徒同士の間でどのような相互作用があったか、談話データをもとに分析する。 3, 遠隔型支援における作文活動について、文章作成過程における支援者からの働きかけ(足場かけの仕方)や、参加生徒同士のピア・ライティングの様子を探る。 4, 対象生徒に対するインタビューデータの分析に着手する。研究目的②に関わり、遠隔型支援に対する対象生徒の意識について分析を進める。
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Causes of Carryover |
(理由) 「次年度使用額」に残額312,988円が生じた理由は、遠隔型支援は予定通りの回数を実施できたが、国際教室の対面支援が学校行事の影響で予定していたよりも少ない回数の実施となったため旅費に約18万円の残額が出た(予算額400,000円、執行額224,514円)。また、物品費では、当初予定していたものより小型のノートパソコンを購入したため約13万円の差が生じた(予算額300,000円、執行額169,000円)。これらのことから全体で約312,988円の残額となった。 (使用計画) 2019年度は、前年度の残額を今年度の「人件費・謝金」の額に合算し、教室談話データの文字起こしと翻訳作業への謝金に使用する予定である。そうすることで、「今後の研究の推進方策」に述べたように、遠隔型支援の特質を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)