2018 Fiscal Year Research-status Report
講義の談話の展開構造と講義ノートの分析に基づく理解過程の研究
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18K00706
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡辺 文生 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00212324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 講義の談話 / ノート筆記過程 / メタ言語表現 / 談話の理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、講義の談話の聞き手が談話の中のどのような表現を手がかりに内容の要点を理解しているのかということを調査することにより、談話の流れに沿った理解の過程を明らかにすることである。2018年度の計画は,調査に用いる講義の談話の選定および分析を行い,日本語母語話者および日本語学習者を対象とした理解調査を行うことであった。 2018年度中の研究実績としては、日本語母語話者4名、日本語学習者14名をインフォーマントにした理解調査を行い、部分的な分析結果について研究発表2件、論文1本を公表した。理解調査は、①語彙リストの提示、②講義のリスニングおよびノートテイキング(タブレット端末上にデジタルペンで記入してもらい、筆記過程を記録できるアプリケーションを用いてノートのデータ収集を行う)、③理解テストという内容で行った。 調査データの分析から、ノートの記述内容およびその筆記過程と講義後の理解テストの結果とのあいだの相関については、1)要点項目の列挙に対するノート記述の対応が理解テストの結果と関わっていること、2)〈評価型総括〉メタ言語表現が先行して現れる方がメタ言語表現に関するノートの記述が多く、理解テストの得点も高くなる傾向があることなどの結果が得られた。また、メタ言語表現とそれに関するノートの筆記過程を詳細に記述・分析した結果、項目がいくつあるのかという〈サブポイント提示〉のメタ言語表現に関するノート記述については,母語話者の場合,メタ言語表現の発話後の時点より遅延してノートに記載される傾向があるが,学習者の場合は,意識的に先取りして項目をノートに書こうという傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、当初の計画に沿って理解データ収集の調査を行い、途中経過としての分析結果を学会発表等で公表しているという点で、概ね予定通りに研究が進んでいると言える。今後とも、調査と分析を並行して行い、計画通りに研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の計画は、理解調査の継続とその分析である。2018年度の調査では、日本語学習者を対象とした調査を優先して行ってきたため、日本語母語話者のインフォーマント数と不均衡な状態になっている。2019年度においては、日本語母語話者をインフォーマントとした調査を増やして、日本語母語話者の講義理解過程に関するデータの蓄積を図りたい。分析の観点としては、2018年度と同様に、メタ言語表現の情報に関するノート筆記過程を談話の時系列に沿って調べ、受講者が講義を理解するためにメタ言語表現の情報をどのように利用しているのか、その利用の仕方は母語話者と学習者ではどのように異なるのかを明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
ノート筆記過程の記述・分析作業について、2018年度は、その作業の手順や方法を確立するために、研究代表者自身が試行錯誤する必要があったため、謝金アルバイトに任せる補助的作業が比較的少なく,その結果、人件費・謝金をあまり使用せずに済み,次年度使用額が生じている。 次年度使用額は、2019年度に行う研究成果発表のための旅費等に当てる予定である。
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Research Products
(3 results)