2020 Fiscal Year Research-status Report
講義の談話の展開構造と講義ノートの分析に基づく理解過程の研究
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18K00706
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡辺 文生 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00212324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 講義の談話 / ノート筆記過程 / メタ言語表現 / 談話の理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,講義の談話の聞き手が談話の中のどのような表現を手がかりに内容の要点を理解しているのかということを調査することにより,談話の流れに沿った理解の過程を明らかにすることである。2018年度においては,調査に用いる講義の談話の選定および分析を行い,1.語彙リストの提示,2.講義のリスニングおよびノートテイキング(タブレット上の筆記過程を記録できるアプリケーションを用いてノートのデータ収集を行う),3.理解テスト,という内容による理解調査を日本語母語話者および日本語学習者を対象として行った。2019年度においては,理解調査を継続し,ノートの記述内容およびその筆記過程と講義後の理解テストの結果とのあいだの相関について分析を行った。分析においては,講義者が講義の話題や内容の項目数,要点などについて言及するメタ言語表現を手がかりに用いた。2020年度においては,データ収集で用いた講義談話の展開的構造と講義ノートに記述された内容との相関を分析し,母語話者と学習者それぞれの講義理解ストラテジーについて考察を行った。2020年度までに,部分的な分析結果に基づいて研究発表3件、論文2本を公表した。これまでの分析の結果,1)〈評価型総括〉メタ言語表現が,その総括された内容より先行して現れる方がメタ言語表現に関するノートの記述が多く,理解テストの得点も高かった。この談話パターンにおいては,評価の対象となる内容に関するノート記述が,メタ言語表現に関する記述に先行して行われる傾向が強かったこと,2)主題として取り上げられた事物の特徴を説明するような文脈では,母語話者が名詞句+述語の形でノートを取る傾向があったのに対し,学習者の方は名詞句のみであったり,そもそもそれらの内容がノートに記述されない傾向があったことなどが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では,5種類の講義素材を用いて理解調査を行い,データについて講義談話の時間の流れに沿ったノート筆記過程の記述作業を行いつつ,記述が済んだ講義素材に関する分析結果をもとに研究発表を行ってきた。2020年度は,ノート筆記過程の記述作業を進めるとともに,理解調査についても,不足している日本語母語話者をインフォーマントとしたデータ収集を行う予定であった。しかし,新型コロナウイルスの影響により,インフォーマントとなる学生が大学に通えない状況が続き,十分なデータを集めることができなかったこと,また,発表予定であった学会が中止になったことなどもあり,2020年度では研究をまとめることができないと判断し,研究期間の延長を申請することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度中に行った分析結果については,2021年8月に開催される学会において発表することが決定しており,その内容は論文としても発表する予定である。今後は,記述作業が残るデータの分析作業と並行して,研究のまとめとなる分析を行う。ノートの筆記内容・筆記過程(トピック・センテンスの内容が談話中のどのタイミングで筆記されているか,メタ言語表現に関わる情報が記入されているかなどの点)と理解テストの結果との相関を分析し,日本人大学生の分析結果と留学生の分析結果の対照によりそれぞれの理解過程の特徴,講義理解ストラテジーの違い,および,留学生にとっての講義理解の困難点を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
2020年度は,予定していたデータ収集が進まなかったこと,また学会等への出張がなかったため旅費を全く使用しなかったことから次年度使用額が生じている。2021年度は,研究成果発表のための学会の参加費,旅費等に当てる予定である。
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