2019 Fiscal Year Research-status Report
協働的な説明活動におけるモニタリングと読解学習に関する研究
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18K00711
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 礼子 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (30432298)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語読解 / メタ認知 / 自己モニタリング / 他者への説明 / 評価基準 / 自己省察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,上級レベルの日本語学習者の読解において重要な自己モニタリングの働きを促すための学習法として,「他者への説明」が核となる読解活動を提案し,その方法を検討するものである。 昨年度までの研究により,上級日本語学習者であっても,書き手の意図や暗示的に示された内容に注意を向けるようになるには,質の高い問いを行うことが必要であり,気づきを促すための他者の問いかけ/働きかけが重要であることが指摘された。 本年度は,上級日本語学習者を対象に,読解した資料から考えた内容を言語化し,精緻化する活動について考察した。学習者は世界の貧困問題に関するいくつかの資料の読解後に,4つの観点(原因,現状,等)が示され,4色の付箋紙に考えを書き出した。その後,各自の考え(付箋紙)を3~4人のグループに持ち寄り,内容の分析,分類,グループ化,概念をまとめる言葉や概念間の関係を示す線や矢印の書き込み,タイトルをつける作業を行い,1枚のポスターとした。 事後コメントを分類した結果から, 1)日本語面:他の学習者の付箋紙から新しい語や表現を学べた,2)内容面:観点別に色分けされた付箋紙やほかの学習者のアイデアを見ることで,自分の考えの狭さや足りない点を振り返る機会となった,3)内容理解や思考の深まり:視覚化により,貧困問題の因果関係や構成要素に明示的に気づいた, 4)他者の視点の意識化:ポスター化のプロセスで他者への伝え方やわかりやすさを考えた,等の気づきが示された。 モニタリングおよび自己学習力を向上させる核となるのは「取り組みへの自己省察(Reflection)」のレベルを高めることである。読解後に視覚化と概念化を促す活動を,個人内と他者間の2段階で実施することが,明示的な自己省察を促すと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文章理解における「他者との協働」追究し,複数の課題を実験的に実施することで,他者への説明が内容理解によい影響を及ぼすことが示されてきている。日本語授業における「説明活動」を実践する理論的背景として,CLIL(内容言語統合型学習)を導入し,文章理解へのモニタリングの促進という当初の目的(認知面)に加えて,言語面と協学面への効果についても検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,読解後の説明活動(アイデアの書き出しとグループでのポスター化)について,学習者の事後コメントをもとにその効果の分析を行った。 今後は,説明活動の継続と読解スキルの変容との関わりを実証する方法を検討する。そのために,説明活動を継続的に経験することで,文章の読み方に違いが出てくるか,目的によって異なる読み方ができるようになるかを検討したい。特に,読解目的を適切に理解することの重要性に着目したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:当該年度(研究2年目)は当初予定通りの執行を行った。前年度に学会が近郊開催であったため計画より旅費の執行が少なく予算が残され,次年度使用額が生じた。 今後の使用計画:参加予定の研究会が中止やオンライン開催となる見込みであるため,旅費の執行は困難な状況である。さらに,調査参加者を集めて調査をすることが困難なことが見込まれる。今後実施可能な調査計画を立て直したうえで予算執行計画を検討する。
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Research Products
(2 results)