2019 Fiscal Year Research-status Report
日本語教育における災害時情報リテラシーの教育法の開発
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18K00730
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
本田 明子 立命館アジア太平洋大学, 言語教育センター, 教授 (80331130)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情報リテラシー教育 / 情報発信 / 災害時情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、災害時情報リテラシーの指導方法の開発を目的とし、①災害時の用語の収集およびその用語の特殊性の検証のための海外における災害対策や使用される用語の調査と、②実験的手法による学習者の情報収集能力と情報理解力の調査の実施による困難点の解明、③災害時に必要な情報と事前知識の範囲の限定とその教育法の開発という3段階の計画をしている。 2019年度は、②および③を中心に研究を進めたが、①に関連する調査も実施した。②の調査に関しては、災害時に発信された情報のデータをもちい、その情報を「やさしい日本語」に直して発信させることで、元の情報の理解度をはかるという方法で実施した。その結果、災害情報の理解について、災害用語などの理解の問題のほかに、避難を指示している文脈と、避難を勧めている文脈の違いなど、状況に合わせて「文脈を読みとる」ことの難しさがあることなどがわかった。 また、ここまでの成果の中間報告として、8月にベオグラードで開催されたヨーロッパ日本語教師会の年次大会で研究発表をおこない、これまでの調査から、情報リテラシー教育には、単に言語能力やICTリテラシーだけではなく、対象とする言語との心理的な距離や異なる社会文化の状況を理解する能力が必要であることを述べた。これに対し、さまざまなフィードバックがあり、「やさしい日本語」と情報リテラシーの関係や、複言語能力としての情報リテラシーといった新しい視点を得ることができた。この発表の内容については、ヨーロッパ日本語教師会の論集に投稿し、2020年度に発行される予定である。 さらに、2019年度前半の日本語学習者と日本語話者との協働学習の実践から、協働学習による情報リテラシーの教育法という示唆を得た。この知見は、2020年3月に発表する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、ビデオ発表によるバーチャル参加となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、上述②の学習者の情報収集における困難点の解明と③の情報リテラシーの教育法の開発を中心に研究を進めた。情報収集における困難点は、当初予想していた災害用語の特殊性だけではなく、言語学習者としての心理的な問題などがあることが明らかになり、教育法についても事前知識や用語の理解だけでは十分ではないことがわかった。そのため、教育法についても新たな視点が必要となったが、その視点を取り入れた予備的な実践をおこなうこともでき、2020年度の教育法の開発と検証に向けておおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
災害時情報リテラシーについては、災害時には、情報を単一言語によって得る必要はなく、自分の得意な言語で得られればいいということがこれまでの研究により明らかになった。しかしその一方で、外国語で得られた情報の信頼性については不安を感じるという問題があり、その不安を解消する方法や、情報を確認するためには複数の言語能力が必要であるという点を考慮に入れた教育法を構築していきたい。そのために、2019年度、協働学習の実践のなかで得られたtranslanguaging理論を応用した協働学習による情報リテラシー教育の方法を研究し、実践して検証する。その成果を学会等で発表する予定である。 実際に、8月にベルギーで開催される日本研究学会での発表が決まっていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、学会が2021年に延期されることになった。また、日本語教育国際大会での発表も計画していたが、その大会も1年延期されることになった。このように2020年度は、学会での発表の機会が失われる恐れがあるが、オンラインで実施される研究会等もあり、そうした機会に積極的に参加して、研究成果の発信をおこないたい。また、追加の調査に関しても、対面での実施が難しい状況であるため、旅費として計上していた研究費を、オンラインによる研究発表や調査のための環境整備にあて、研究が予定どおり継続できるよう努めたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月にスペインのバルセロナで開催された国際学会で、研究発表の予定だったが、新型コロナウイルスによる感染症の世界的な流行の影響で、現地での参加を取りやめ、バーチャル参加(ビデオプレゼンテーション)となった。その旅費として使用するはずだった額が、次年度使用額となった。 2020年度は、研究の最終年度にあたり、いくつかの学会で成果発表をおこなう予定であったが、新型コロナ感染症により、中止や延期、オンライン開催が決まっている。また追加調査もオンラインでの実施を余儀なくされるため、次年度使用額は、オンライン環境の整備(PC等の機材の購入)に充てる予定である。
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