2019 Fiscal Year Research-status Report
日本人英語学習者の音韻認識力向上を目指す総合的英単語発音データベースの構築
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18K00822
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
高山 芳樹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10328932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発音指導 / 音節 / 強勢 / 音素 / モーラ / 検定教科書 / 音韻認識 / 英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校3,4年生で使用されている『Let's Try! 1』および『Let's Try! 2』、小学校5,6年生で使用されている『We Can! 1』 および『We Can! 2』の文字または音声で児童が触れる英単語データベースとして、昨年度は分綴、品詞、内容語・機能語の別、音節数、リズムパターン、ジャンル、対応するカタカナ語とそのモーラ数、日英ギャップ(「カタカナ語のモーラ数」から「英語の音節数」を減じた数)の情報を入力したが、本年度は新たな情報として、各英単語の発音記号(IPA: 国際音声記号)、子音結合の「有無」の情報入力を終了した。その後、子音結合については「語頭」、「語中」、「語末」のどこにどのような種類の子音結合が出現するのか、また、1音節語については「オンセット」(onset)と「ライム」(rime)を発音記号で表示する作業を進め、現在も作業中である。 中学校検定教科書に関しては、全6種類計18冊に出てくる英単語についても、ベースとなる基礎データ入力を終え、小学校でも追加している情報を付加する作業を同時に行っている。 昨年度入力作業ができなかった高等学校については、当初の予定であった最も採択率の高い「コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」、「英語表現Ⅰ・Ⅱ」の教科書ではなく、共通必履修科目である「コミュニケーション英語Ⅰ」に絞り、多くの出版社がこの科目用に進学校レベル、中堅校レベル、非進学校レベルに対応している3種類の教科書を出版していることから、「コミュニケーション英語Ⅰ」のレベルごとに最も採択率の高い(平成30年度採択)三省堂の『Crown I』、三省堂の『My WayⅠ』、東京書籍の『All Aboard! Ⅰ』を入力対象とすることにし、前者2冊に関しては、本年度中に小・中学校の教科書と同様の情報の入力は終えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度入力作業ができなかった高等学校の検定教科書の英単語入力作業を新たにスタートさせた。上述したように「コミュニケーション英語Ⅰ」の教科書のうち、3種類のレベルに対応するもので採択率の高い3冊を入力対象としたほうが、共通必履修科目でもあり、より多くの教員・生徒が触れる英単語をカバーでき、より有益な英単語発音データベースとなると考えた。高校教科書に出現する英単語については、教科書によっては昨年度入力済みの中学校の全6種類計18冊に出てくる英単語と重なる語もあったため、中学校データベースを有効に活用しながら、比較的スムーズに入力作業を進めることができた。この作業と並行して、小学校と中学校のデータベースに発音記号や子音結合に関する情報も追加していった。年度の途中で、入力補助の作業を依頼していた大学院生の人数が、彼らの修士論文執筆や協定校への留学の都合で少なくなり、作業ペースが落ち込む時期もあったが、残った大学院生が急ピッチで作業を進めてくれたおかげで、遅れをある程度取り戻すことができた。ただ、データベース上の情報に各音素の分布情報などを追加していく作業までは進めることができなかった。 また、当初の予定通り、オーストラリアのメルボルンで開催された国際音声科学学会(International Congress of Phonetic Sciences)への参加や、小学校英語教育学会北海道大会や全国英語教育学会弘前研究大会、日本音声学会全国大会での研究発表を通し、多くの国内外の研究者と意見交換の機会を持つことにより、本研究の理論的基盤としている英語発音の明瞭性(intelligibility)や日本人英語学習者の音韻認識や発音習得に関する有益な情報を多数得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究の最終年度となるため、日本人英語学習者の音韻認識向上を目指す総合的英単語発音データベース構築の完成を目指す。具体的には、入力すべき教科書のうち、残り1冊となっている高等学校「コミュニケーション英語Ⅰ」の非進学校レベルの『All Aboard!Ⅰ』に出現する英単語にこれまで同様の情報を入力し、これと並行して、小学校、中学校それぞれのデータベースに入力中の、子音結合の「語頭」「語中」「語末」に関する情報、1音節語の「オンセット」「ライム」に関する情報の入力を行う。 また、文字情報の入力完成後には音声情報を貼り付け、現在Excel上で作成しているデータベースをWebベースに変換することができるかどうかを専門家の助言を得ながら、確認し、できるだけ実現させたい。また、途中経過報告という形になるであろうが、本研究での英単語発音データベース構築の取り組みの様子や学校教育現場での活用法等について、随時、英語教育関連の学会等で発表していきたい。
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Causes of Carryover |
英単語や音声情報入力作業を依頼している大学院生3名のうち2名が、年度の途中で留学をしたため、残り1名の院生が3名分の作業を進めたが、この院生も年度の後半に修士論文執筆で多忙となり、うまく調整できず、若干次年度使用額が生じてしまった。これらについては次年度に新たな院生数名に作業依頼をし、引き続きデータ入力作業をしてもらうため、その謝金の一部として使用する予定である。
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Remarks |
「英語の音声・文字指導の基礎となる小・中学校での音韻認識の重要性」 滋賀県高島市外国語教育授業研究会講演、滋賀県高島市立今津中学校、2019年11月
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