2018 Fiscal Year Research-status Report
L2習得過程における音韻処理変化と知覚スペースの再調整
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18K00848
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川崎 貴子 法政大学, 文学部, 教授 (90308114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 邦佳 法政大学, その他部局等, 講師 (70597161)
Matthews John 中央大学, 文学部, 教授 (80436906)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 注意 / 音声知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
L2音韻習得の分野では, 選択的注意や明示的な知識が学習効果に影響を与えるのかの研究がひろがりつつある. Guion & Pederson (2007), Hisagi & Strange (2011), Porretta & Tucker (2015) などでは, 明示的な指示を行うことで, 音声知覚成績が向上したと報告している. 本研究の目的は, 明示的知識と注意が, L1の影響を抑制し, L2音の知覚が向上するのか, また, 学習者の選択指向性を抑制するのかを調査することであった. 本年度は, 先行研究とは異なり, 明示的な教示ではなく, 回答選択肢の呈示タイミングの調整という, 非直接的な方法で注意の誘導を行った. たとえば, 日本語話者の LとRの知覚の場合, 音声呈示の前に, LとRの弁別問題であることを示唆する選択肢を先に呈示する群と, 音声刺激後に呈示する群を設け, 成績を比較した. 2018年度は, 日本語をL1とする英語学習者を対象とした知覚実験と, 中国語を母語とする日本語L2学習者を対象とした知覚実験を行った. 知覚すべきL2の音声刺激を聴く前に, 選択肢にて文字表記情報を呈示することで, 学習者の選択的注意が音声知覚に必要な音響情報に向けられるのかどうか, そしてL2ターゲット音声の知覚成績に向上は見られるのかを調査した. 2018年度に行った調査では, 日本語母語話者,中国語母語話者を対象とした全ての実験で,選択肢呈示を音声刺激の前に行うことで知覚成績の向上が見られた.ターゲット語の文中のポジションにより,知覚成績に影響を与えることも分かった.また選択的注意の誘導は,知覚成績の向上のみならず,プリファレンス効果の抑制という形でも現れることが示唆された.本研究の結果は, 日本認知科学会第35回大会にて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である明示的知識の影響については, 2つの言語の母語話者を対象とした実験を行い, 成果を発表した. また, もう一方の目的であるL2習得のL1への影響の研究については, 2018年終盤より母語にL2がどのように影響するのかについての研究会を定期的に開催している(月に1度). 異なる研究機関に所属する研究者・学生があつまり, 論文の購読や討論を行っている. 現在, 意見交換を行いつつ, 新たな実験の構築を進めているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
母語の第二言語への影響についての研究は, 月例研究会を継続し、様々な研究者の意見を取り入れつつ、進めていく予定である. 今年度は、異なるレベルのL2学習者の, L1の発話、および知覚を調査し, L2を学ぶことで, L1への影響は見られるのか, また, 異なるレベルの学習者の間では, L1はどのように変化するのかを調査する予定である. L2のL1への影響の研究は, 音韻論・音声学の分野ではこれまでVoice Onset Time, 母音のフォルマント分析のみがなされてきた. 本研究では2019年度から2020年度にかけ, 我々がこれまで研究を続けてきた, 摩擦音を対象とした知覚・発話の調査を行う方向である.
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Causes of Carryover |
2018年度に行った実験が予定よりも小規模なものであったため, 謝金の支払いが少額となった. 2019年度に追加実験を行うため, 翌年度に使用金額を持ち越した. また, 2018年度の学会発表が国内の学会1つであったため, 旅費も少額となった. 2019年度はNew Sounds という国際学会にて発表を予定している. 2019年度の開催国が日本であり, 当該学会への参加旅費は高額にならないが, 1名あたりの参加費が比較的高額であるため, 2019年度は学会参加費の支出が増える予定である. また, 今年度はまだWebサーバーを経由してのInquisitを使用する実験の構築が完成しておらず, InquisitのWeb版のライセンスを購入していない. Web実験が2019年度となる予定であるため, 2019年度に購入する予定である.
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Research Products
(1 results)