2018 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
18K00992
|
|---|
| Research Institution | Kanazawa University |
|---|
Principal Investigator |
安部 聡一郎 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (10345647)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
| Keywords | 簡牘 / 出土資料 / 墓葬 / 走馬楼呉簡 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中国・三国時代（西暦3世紀）を代表する出土資料である長沙走馬楼三国呉簡（以下、走馬楼呉簡と簡称）を材料とし、形態観察に基づく史料研究、および周辺の歴史的・地理的環境との考量を踏まえ、当該期長沙の社会構成を簡牘・文献の両面から明らかにする。このことを通し、簡牘研究によって文献に基づく従来の歴史理解を深化させ、今後の魏晋期簡牘研究、ならびに古代東アジア書記文化形成と国家形成の研究の上で援用可能な分析手法を提供することを目的とする。
2018年度はその第1年度として、ア）走馬楼呉簡新規公開史料の集成と書式整理、写真版・出土状況の比較考量を行い、実見調査を要する簡牘を特定する、イ）近年刊行の長沙古城址に関する報告書に載せられた漢三国期墓葬の概況などを基礎とし、既公開の出土報告の集成を行う、の2点を課題として研究を実施した。ア）に関しては、新規公刊の『長沙走馬楼三国呉簡・竹簡』〔陸〕について調査・集成をおこない、特に郷―丘の統属関係に関連して注目してきた郷担当の官吏である典田掾について、その丘および民衆把握と直接に関連すると思われる簡牘史料を抽出、実見調査を要するものを特定した。特定した簡牘は、2019年3月に実施した長沙簡牘博物館における実見調査にて検討をおこない、報告書掲載の釈文の大幅な補訂を含む成果を挙げた。またイ）に関しては、関連する初歩的な研究成果を雑誌論文として公表したほか、2019年3月の調査の際、建て直しを終え再開館した湖南省博物館にて関連遺物の調査を実施した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のア）イ）とも基本的な資料の入手および分析は行えているが、ア）の整理検討および関連する別の研究課題に予想以上の時間を要したため、イ）の資料の整理において当初予定よりやや遅れている。
|
| Strategy for Future Research Activity |
原則として今後も当初計画通りに研究を進める。第2年度となる2019年度は、ア）の方面では引き続き新規公刊の『長沙走馬楼三国呉簡・竹簡』〔伍〕、および年末までに公刊が予定される同第9巻等の史料集成・書式整理および写真版・出土状況の比較考量を実施し、実見調査を要する簡牘の特定を行う。イ）では第1年度にやや遅れた資料整理を進め、墓葬分布状況の把握と地理状況との関連性の分析を行う。第3年度には以上を集成して研究の総括をおこなう。第1年度に生じたイ）の遅れは第3年度までに回復できる見込である。
なお第1年度の現地調査は当初4週間程度を予定していたが、予算および所属機関における業務の都合等により2週間に短縮せざるを得ず、これには調査対象の精選によって対応した。第2年度も同様の現地調査を予定しているが、購入を要する資料の価格等を勘案すると、同様に期間の短縮を検討せざるを得ない可能性がある。これについては第1年度と同様に調査対象の精選によって対応するほか、調査先機関の研究協力者との連携を密にすることで対処する予定である。
|
