2018 Fiscal Year Research-status Report
1848~1871年のドイツ系革命家たちの活動とネットワークに関する研究
Project/Area Number |
18K01050
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小原 淳 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386577)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ドイツ史 / 1848/49年革命 / 帝国創設期 / 亡命 / 転向 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の初年度にあたる平成30年度は、1848/49年革命に参加した革命家たちのなかでも、革命の敗北後にドイツ諸邦に残留したグループについての研究を中心に進めた。具体的には、ルートヴィヒ・フォン・ロハウの「レアルポリティーク論」に影響を受け、革命期の理想主義を離れて、より現実主義的な政治路線へと移行し、革命期の政治的分裂を克服していった中小諸邦の自由主義者、民主主義者たちの1850年代の動向を、一次史料の分析に基づいて検討した。その成果は、「レアルポリティークの時代」(森原隆編『ヨーロッパの政治文化史』成文堂所収)に発表した。従来の研究においては、革命後の1850年代のドイツ諸邦における政治活動は著しく制限され、自由主義者、民主主義者の多くが政治の舞台からの撤退を余儀なくされたと説明される。しかし本研究は、この時期にあっても、プロイセン、オーストリア以外の中小諸邦の議会では、自由主義者や民主主義者が一定の議席を占めていたこと、彼らのなかには諸邦内閣において要職を占めた人物がいたこと、また彼らが邦のレベルを超えて交流してネットワークを保持、拡大していったこと、さらにはその過程で、自由主義者と民主主義者の現実主義的な提携関係が構築されていったことを指摘した。 さらに、この論考をふまえて、「合評会 共同研究論文集『ヨーロッパの政治文化史 統合・分裂・戦争』(早稲田大学西洋史研究会第72回大会 2018年7月14日)を行った。 また、以上の研究と並行し、リチャード・J・エヴァンズ『力の追求-ヨーロッパ史1815-1914 (シリーズ近現代ヨーロッパ200年史)』上下巻、白水社と、ローベルト・ゲルヴァルト『敗北者たち――第一次世界大戦はなぜ終わり損ねたのか 1917-1923―』みすず書房の訳出を行い、本研究が対象とする時代についての最新の研究成果の導入、批判的考察に努めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた、1848/49年革命以降もドイツ諸邦に残留した革命家グループの動向について、その概観を把握することができた。とくに、革命のなかで分裂した自由主義派と民主派が、反動の時代と言われる1850年代も諸邦で政治活動を持続させたこと、両派が現実主義的な路線へと転換し、歩み寄りを示したことを明らかにし、1860年代に再びドイツの「自由と統一」をめぐる政治運動が活発化する要因の一端を示したことは、次年度以降の研究が展開するうえで、大きな意味をもつ。史料収集活動も順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ドイツ人革命家たちの大部分は、スイスを経由して、フランス、イギリス、イタリア、アメリカ合衆国へと亡命した。本研究の第二段階となる平成31年度以降は、これらの各国での亡命者たちの生活世界、ネットワークと活動空間を研究する。 具体的には、①彼らの生活の場であった亡命先のドイツ人コロニーや、多くの革命家が行っていた共同生活や縁戚関係、②書簡のやり取りや会合、支援団体、職業の斡旋や金銭的援助をつうじて構築される革命家たちのネットワーク、③アソシエーション、メディア、政治的イベントと示威行動といった革命家たちの活動空間を検討する。 この課題を達成するために、欧米各国の図書館、文書館での資料収集活動を継続して行う。
|
Causes of Carryover |
資料整理のための人件費が予定したほどかからなかったため。
|
Research Products
(5 results)