2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on preservation management and repair technique of castle stone wall prepared for disaster
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18K01091
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
北野 博司 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (20326755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 石垣被災原因 / 胴込めコンクリート |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、第一に石垣修理の原因となった災害の種類と復旧工事に関して全国な動向を調査した。廃城後の管理が軍や自治体に移った明治から現在に至るまで、石垣崩落被害が報告されている162件についてその原因を集計した。最も多いのは大雨で78件(48.1%)、地震が47件(29.0%)、強風による倒木が6件(3.7%)、融雪・氷結・干満等が6件(3.7%)、戦争(空襲)が3件(1.2%)、不明が21件(12.9%)。地震による石垣崩壊が多いという印象に反して、実際には大雨被害が最も多かった。雨を原因とするもので月がわかるのは47件で、6,7月が57%と最も多く、9,10月が9件だった。梅雨の豪雨と台風シーズンの雨・風が石垣に甚大な被害をもたらしていることが分かった。 第二は修理工事の工法に関して土木史の視点から戦前から現代までの変化をたどった。一つはコンクリートの利用の歴史、二つ目は修理機械等の歴史である。前者では基礎の沈下を防ぐ帯コンクリートと築石を連結する胴込めコンクリートの利用が大正期から確認できた。戦後復興で天守復元ブームとなった昭和30年代には胴込めコンクリート(練積み)による石垣の補強が拡大し、昭和40年代には国庫補助事業の七尾城跡や五稜郭跡でも利用された。昭和50年代はもとより、遅い例では平成に入ってからもコンクリートが使われた。しかし、平成に入るころには石垣が文化財として発掘調査や解体調査の対象となり、空積み(柔構造)にこそ価値があると認められると、その利用はなくなっていった。 一方で兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震等を経験し、社会の安全への要請が高まると、石垣管理(カルテ)の重要性が認知され、斜面の安定解析や地盤補強、柔構造を阻害しない新たな補強工法(土壌改良・ジオグリッドなど)が取り入れられるなど、土木工事一般の基準や工法と接近しつつあるのが現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標だった土木史からみた石垣修理技術の歴史について概ねまとめることができた。成分化までは至っていないので次年度の課題とする。 現地調査は五稜郭跡や名古屋城跡、熊本城跡などに出向き、昭和30~40年代の石垣修理工事の工法を資料や写真、石工へのヒアリングを行った調査した。胴込めコンクリート(練積み石垣)の地震や大雨に対する強度や経年変化について事例を収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の核心である石垣防災の枠組みの構築に向けて、SFMを利用した石垣カルテ原図の作成と危険性を可視化するハザードマップ作成に向けて、小峰城跡の地形・地盤データ等の自然的情報と修理履歴等の歴史情報を収集していく。
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Causes of Carryover |
研究費を計画的に執行したが、若干残額があり、これを次年度へ繰り越しする。
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