2018 Fiscal Year Research-status Report
少子高齢社会のウェルビーイング創成型地域学習コンテンツの開発
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18K01108
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Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
青柳 かつら 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (30414238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 俊介 北海道大学, 総合博物館, 助教 (50444451)
黄 京性 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (00412875)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 博物館 / 高齢者 / 地域資源 / 映像アーカイブ / ウェルビーイング / 地域学習 / 世代間交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.高齢者のニーズ把握と課題の明確化 1)道内高齢者団体の博物館利用動向とニーズ調査 ①事例調査:北海道博物館の高齢者団体の2017年度入場数は、206(24.8%)と学校団体(34.4%)に次ぎ多数だった。内訳は老人福祉・介護施設(以下、施設)が一般団体より多く、老人デイサービスセンターが最多67だった。聞き取り調査(N=5)では、施設はレク、一般団体は学習を目的とし、バリアフリーや体験型設備等が不十分な地域博物館では、ソフト面での工夫やプログラム開発が重要と考えられた。②郵送法アンケート:道央、道北の老人デイサービスセンターのレク担当職員218名(回収率37.1%)への調査では、「博物館・資料館(49.0%)」「動物園(31.2%)」が利用多数で、「出張型のレク(48.3%)」「介助支援(44.9%)」、博物館の役割では「懐かしさの体験の場(71.2%)」への要望が多数だった。 2.協働による地域学習プログラムの作成 1)地域ナレッジ収集とプログラム試行 ①実行体制の整備と試行:士別市朝日町、名寄市智恵文を拠点に、モデル組織機関と連携して計6回の活動を実施し、同地の農林業や生活用具に関する回想法サロンを試行した。②資料情報化・動画記録:地域ナレッジをモデル館の所蔵資料へ情報付与することを目的に、サロンの動画記録を行った。同地の過去の映像資料を視聴するとともに、資料所在を聞き取り調査した。2)認知症予防プログラム実践団体の組織化 名寄市日新を拠点に、市民と大学教員各数名を、賛同者・指導者として確保し、話し合い協力できる関係を形成して活動基盤を整備した。個人の生活様式、食・栄養を中心とする健康管理状況等を観点に、認知症予防に役立つチェックリストの作成を開始した。 3.成果の普及 1)ウェブでの情報発信 本研究の情報発信と映像を通じた世代間交流のため、HPとSNSページを仮構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の各項目とも、ほぼ遅滞なく実施できている。 「高齢者のニーズ把握と課題の明確化」の郵送法アンケートは北海道庁保健福祉部の協力を得ることで、2019年1月にスムーズに調査実施でき、該当地の老人デイサービスセンターの協力によって、予想を上回る回収率の調査を行うことができた。 「協働による地域学習プログラムの作成」では、申請書にて計画していたモデル組織の解散という危機があったが、その後、現地の組織機関との協力によって、代替組織との新たな協力関係を形成でき、連携事業を実施できる活動基盤を整備できた。また、試作した学習プログラムの動画記録も実施できた。さらに、本年度新たな研究分担者が加わったことで、認知症予防プログラムの開発と評価について、知見を得られる研究体制を整備できた。 「成果の普及」では、2019年度の運用開始に向け、本年度内にHPとSNSページを仮構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高齢者のニーズ把握と課題の明確化 1)道内高齢者団体の博物館利用動向とニーズ調査 2018年実施データについて、地域別、事業所種別のクロス集計を行う。レクの活発な施設、博物館利用のある施設の特徴を把握する。 2.協働による地域学習プログラムの作成 1)地域ナレッジ収集とプログラム実施:①プログラムの計画:士別市朝日町、名寄市智恵文を拠点に、モデル組織機関と連携した行事を計画する。馬を使った農作業や冬山造材、昭和期の生活用具や年中行事を題材に、高齢者の心身の健康づくりに役立てると共に、モデル館の所蔵資料に関連づけたナレッジを収集するサロンやクラフトを実施する。広報によって、活動を世代間交流の場としても機能させる。②映像・メディア利用の有効性の把握:サロン参加者を対象に、高齢者層/若年層の映像・メディア利用状態を調査する。合わせて利用状態と高齢者の身体的特性の関係を明らかにする。試作した素材で映像による世代間交流の有効性を調査する。 3.プログラムの実践と評価 1)地域学習プログラムの実践と評価 ①アンケートの実施:事業の客体である高齢者、中学生を対象に、活動目標の達成をたずねる自己評価アンケートを実施する。②ヒアリング:第三者である学校教員を対象に、プログラムの生徒・児童への効果についてヒアリングする。2)認知症予防プログラムの実践と評価:名寄市日新を拠点に、①個人の嗜好・適性に合ったプログラムを提供するため、基本的な健康チェックによるアドバイス(主に食、栄養分野)を行い、認知症とその予防のための実践事例に関する勉強会を開催する。②予防活動のプログラムを実施する(ピアノ、外国語学習、塗り絵等)。③認知症予防のチェックリストの作成と検証を行う。 4.成果の普及 HPとSNSページを公開して両者を相互補完的に活用し、成果の発信と関心を持つ層の参入促進を継続できる仕組みをつくる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額を生じさせたのは、当該研究課題の採択に当たって当初計画していた研究費からの少なくはない減額、そして、当年度に新たに研究分担者1名が増員したことを加味して、支出を抑えたためである。これらはやむを得ない措置であったが、そうした資金面の困難がありつつも、研究代表者、研究分担者、研究協力者等、当該研究課題関係者の努力により、研究はおおむね順調に進展している。最終年度には、研究分担者の増員により、当初計画を上回る成果が得られる可能性も考えられる。この次年度使用額については、次年度以降の旅費・物品費等の不足、研究分担者ならびにその所属機関への研究分担金の拠出等に充てる予定である。
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