2019 Fiscal Year Research-status Report
国家財政と世代間衡平~行動洞察と租税法・財政法の法システム再構築~
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18K01241
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
神山 弘行 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (00361452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 租税法 / 財政法 / 法と経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,租税法・財政法と他の法制度の協働に加えて,行動経済学の成果を法政策に導入する「行動洞察」の手法を活用することで,現在世代及び将来世代の双方に過度の負担を課さない財源確保の新たな法的枠組みを探求することにある。研究計画の2年目である2019年度は,研究計画の第一段階である「行動洞察の最新動向と体系的理解」について事実解明的分析の作業及び,研究計画の第二段階である「行動洞察の規範的検討とメタ・ルールの構築」について規範的分析の作業を遂行するとともに,研究計画の第三段階である「行動洞察と租税法・財政法の再構築」に関する導入的作業を行った。 研究成果の一部を(1)神山弘行『所得課税における時間軸とリスク:課税のタイミングの理論と法的構造』(有斐閣・356頁,2019年),(2)神山弘行「社会保障財源としての消費税:負担構造の観点から」ジュリスト1539号23-29頁(2019年),(3)神山弘行「消費税の見方:暗黙の前提とレトリック」法律時報91巻12号1-3頁(2019年)として公刊した。 具体的には,伝統的な租税法制度や租税法の基礎理論の背後に潜む人間行動(自然人)への直感的な理解を抽出し体系的に把握することを通じて,租税法制度や租税法の基礎理論の理解更新を試みるとともに,分析対象を「個人」から,個人の集合体である「法人」に拡張することを試みた。例えば,伝統的な議論では法人の限界的な投資に関する意思決定においては,限界税率を参照することが規範的分析の観点からは望ましいと考えられてきたが,事実解明的分析の観点からは異なる視座を示唆する実証分析等が提示されつつあることを踏まえて,租税法の基本的構造に関する理解更新を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は研究計画の2年目であり,研究計画書に記載をした当初計画である第一段階(行動洞察の最新動向と体系的理解)及び第二段階(行動洞察の規範的検討とメタ・ルールの構築)とともに,第三段階(行動洞察と租税法・財政法の再構築)の作業を中心に,概ね順調に遂行することができた。2019年度末に予定していた国内及び国外での調査・研究報告については,COVID-19の拡大の重大性に鑑みて研究計画当初に予定していた国内出張・海外渡航等を延期したものの,他の作業を前倒しで遂行したため,研究計画全体として概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の3年目である2020年度は,研究計画書記載の第一段階(行動洞察の最新動向と体系的理解),第二段階(行動洞察の規範的検討とメタ・ルールの構築),第三段階(行動洞察と租税法・財政法の再構築)の作業を完成させるとともに,第四段階(世代間衡平・行動洞察・法制度の統合)の導入的作業を行うことになる。 なお,COVID-19の拡大状況によっては,2020年度以降も図書館等の利用制限,国内及び国外において移動制限又は自粛要請が継続する可能性を想定しつつ,研究計画全体が円滑に進行するよう適切に作業順序の組み替えを実施する予定である。具体的には,当面は論文・書籍の本文が入手可能なデーターベース等を最大限活用しつつ,引き続き文献調査を進める。また,研究成果の報告や意見交換については,可能な限りテレビ会議システム等を利用することで研究計画を円滑に遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)2019年度末に予定していた国内及び国外での調査・研究報告について,COVID-19の拡大防止の観点から,研究計画当初に予定していた国内出張・海外渡航等を次年度以降に延期することとなったため。また,2019年度に入手を予定していた書籍・デジタル機器等について,2019年度内の納品困難となったため,次年度以降に入手を繰り延べたため。 (使用計画)2020年度は,研究計画の第三段階及び第四段階を中心に遂行することになるため,日本語文献・外国語文献の購入及び国内旅費・国外旅費等を中心に研究費を支出することが見込まれる。
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Research Products
(4 results)