2020 Fiscal Year Research-status Report
国家財政と世代間衡平~行動洞察と租税法・財政法の法システム再構築~
Project/Area Number |
18K01241
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神山 弘行 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (00361452)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 租税法 / 世代間衡平 / 法と経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,租税法・財政法と他の法制度の協働に加えて,行動経済学の成果を法政策に導入する「行動洞察」の手法を活用することで,現在世代及び将来世代の双方に過度の負担を課さない財源確保の新たな法的枠組みを探求することにある。研究計画の3年目である2020年度は,研究計画の第一段階である「行動洞察の最新動向と体系的理解」について事実解明的分析の作業及び,研究計画の第二段階である「行動洞察の規範的検討とメタ・ルールの構築」について規範的分析の作業を完成させるとともに,研究計画の第三段階である「行動洞察と租税法・財政法の再構築」に関する作業を遂行しつつ,研究計画の第四段階である「世代間衡平・行動洞察・法制度の統合」の導入的作業を遂行した。 研究成果の一部を(1)神山弘行「COVID-19と租税法:危機対応の財源と世代間分配」法律時報92巻10号94-100頁(2020年),(2)神山弘行「憲法92条・94条と課税自主権:地方公共団体のインセンティブ構造」日税研論集77巻293-331頁(2020年),(3)神山弘行「コロナ禍における世代間衡平」税76巻2号2-3頁(2021年)として公刊した。 具体的には,昨年度に引き続き,伝統的な租税法制度や租税法の基礎理論の背後に潜む人間行動(自然人)への直感的な理解を抽出し体系的に把握することを通じて,租税法制度や租税法の基礎理論の理解更新を試みるとともに,分析対象を「個人」から,個人の集合体である「法人」に拡張することを試みた。さらに2019年度は新型コロナウィルス感染症の感染拡大と諸外国における巨額の財政支援・金融支援に関して,リスクと費用の配分方法を中心に世代間衡平の観点から導入的考察を試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は研究計画の3年目であり,研究計画書に記載をした第一段階(行動洞察の最新動向と体系的理解)及び第二段階(行動洞察の規範的検討とメタ・ルールの構築)をまとめるとともに,第三段階(行動洞察と租税法・財政法の再構築)及び第四段階(世代間衡平・行動洞察・法制度の統合)の作業を中心に概ね順調に遂行することができた。なお,2020年10月に予定されていた米国での国際学術シンポジウムが,新型コロナウィルス感染症拡大にともない2021年以降に延期となったため,予定していた当該シンポジウムでの研究報告が次年度以降に繰り延べることとなった。2020年度は予定していた全ての国内出張及び海外渡航等を延期したものの,他の作業を前倒しで遂行したり,研究に関する意見交換が可能になるようにオンライン会議環境を整えることで研究計画の遂行に大幅な遅れが生じないよう工夫を試みた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度である2021年度は,研究計画書記載の第一段階(行動洞察の最新動向と体系的理解),第二段階(行動洞察の規範的検討とメタ・ルールの構築)に続いて,第三段階(行動洞察と租税法・財政法の再構築)及び第四段階(世代間衡平・行動洞察・法制度の統合)の作業を完成させるとともに,研究全体の取りまとめを行うことになる。 2021年度も新型コロナウィルス感染症の再拡大にともない,研究目的であっても海外渡航や国際シンポジウムへの参加が制限される可能性が高いところ,可能な限りWeb会議システム等を利用することで研究計画を円滑に遂行する予定である。Web開催が予定されていない海外での国際シンポジウム(対面開催のみ)での研究成果報告については,国内外でのワクチン摂取の状況の進展を勘案しつつ,随時,研究計画の修正を行うことで対応をする。
|
Causes of Carryover |
(理由)2019年度末及び2020年度に予定していた国内及び国外での調査・研究報告について,COVID-19の拡大防止の観点から,研究計画当初に予定していた国内出張・海外渡航等を次年度以降に延期することとなったため。また,2020年度に入手を予定していた書籍・デジタル機器等について2020年度内の納品困難となったため次年度以降に入手を繰り延べたため。 (使用計画)2021年度は,研究計画の第三段階及び第四段階を中心に遂行することになるため,日本語文献・外国語文献の購入及び2019年度末及び2020年度から延期となった分を含めた国内旅費・国外旅費等を中心に研究費を支出することが見込まれる。
|