2021 Fiscal Year Research-status Report
国家財政と世代間衡平~行動洞察と租税法・財政法の法システム再構築~
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18K01241
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神山 弘行 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00361452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 租税法 / 財政法 / 法と経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,租税法・財政法と他の法制度の協働に加えて,行動経済学の成果を法政策に導入する行動洞察(behavioral insights)の手法を活用することで,現在世代及び将来世代の双方に過度の負担を課さない財源確保の新たな法的枠組みを探求することにある。 本年度は研究計画の4年目であるところ、研究計画の第3段階(行動洞察による租税法及び財政法の再構築)及び、研究計画の第4段階(行動洞察と世代間衡平の統合)の作業を遂行した。さらに、研究計画策定当初には予期し得なかったCOVID-19の世界的拡大を踏まえて、研究対象をCOVID-19対応のための財政支援と危機対応の財源の関係について拡張することで、研究の深化を試みた。さらに、世代間衡平の考察に際してこれまでの時間軸という分析視座に加えて、地域間格差という空間軸の分析視座を加えることで、世代間衡平と地域間衡平の交錯領域に関する知見を得ることができた。また、途上国にワクチン支援を行うGAVIアライアンスに対して、先進国が20年前後の長期間の資金提供を現時点で誓約することでワクチン提供の促進を図るIFFIm の資金調達メカニズムや、COVID-19ワクチンの供給(GAVI COVAX AMC)を題材に、国際連帯税など新たな資金調達メカニズムについて世代間衡平及び地域間衡平の交錯領域として考察を加えた。 本年度の研究成果の一部を、神山弘行「租税法における時間と空間」論究ジュリスト37号232頁(2021年)、神山弘行「地方税と社会保障の視点:個人と世帯」地方税72巻11号2頁(2021年)、神山弘行「租税原則と世代間衡平:国債管理政策の影響」法律時報94巻5号(2022年5月)として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の世界的拡大にともない、海外渡航や学術会議が制限される状況下において、可能な限り研究計画の遅延を回避する方向で研究を遂行した。理論的検討については、研究計画当初の作業をほぼ遂行できた。なお、COVID-19の世界的拡大と各国政府による巨額の財政支援・金融緩和という研究計画策定当初には予見し得なかった新たな研究課題が発生したことを受けて、研究内容の深化を図るとともに研究成果の普遍性を高めるために、COVID-19対応のための各国の財政支援とその財源問題について研究対象を拡大させるべく、研究計画を必要に応じて修正・拡充した。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の世界的拡大にともない、海外渡航や学術会議への参加が制限される状況下において、研究成果を学術シンポジウムで公表・発表する作業計画については、2021度中は海外渡航を中心に移動が制約されたことを受けて自粛した。そのため、研究成果のシンポジウム等での発表とフィードバックを受けた上での修正という作業については、国内外の移動制限等が緩和されることを前提に、2021年度に予定していた研究成果の発表及びフィードバックを通じた改善作業については、2022年度に遂行をする予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)2020年度~2021年度に予定していた国内及び国外での調査・研究報告について,COVID-19の拡大防止の観点から,研究計画当初に予定していた国内出張・海外渡航等を次年度以降に延期することとなったため。また,2021年度に入手を予定していた書籍・デジタル機器等について2021年度内の納品困難となったため次年度以降に入手を繰り延べたため。 (使用計画)2022年度は,研究計画の第四段階を中心に遂行することになるため,日本語文献・外国語文献の購入及び2020年度及び2021年度から延期となった分を含めた国内旅費・国外旅費等を中心に研究費を支出することが見込まれる。なお、2022年度も海外への渡航制限が継続する場合には、Web会議システム等の活用により可能な限り対応する予定である。
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