2019 Fiscal Year Research-status Report
環境行政決定の受容を容易化する民主主義的参加手続の法理の再構築
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18K01269
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
山田 健吾 広島修道大学, 法学部, 教授 (10314907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 参加手続 / 受容 / invisibleな組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は以下の研究の実施した。第一に、オーストラリア行政法及び環境法における参加手続の実定法上の仕組みや判例法理の分析をすすめる一方、ウロンゴンとキャンベラにおけるinvisible組織に係る情報収集とその分析も行った。invisibleな組織と活動につき、まず、キャンベラとウロンゴン住民からメール等で資料を収集し、意見交換を行った。それによると、キャンベラでは、地域ごとに自治組織が設立されており、自治組織ごとに規約が作られていること、同組織への参加や脱退は自由であること、同規約上、政治や行政とは独立した存在であることが強調されている。他方で、政治や行政の側からは、住民の意見集約の場としても用いられている。ウロンゴンでも同様の自治組織が存在する。ニューサウスウェールズ州環境保護庁職員によると、同保護庁は、環境影響評価手続における住民意見聴取の場の一つとして、ウロンゴンの自治組織を活用している。これらの調査結果を踏まえて、オーストラリアに赴き、オーストラリアの研究者、草の根運動やNPOの代表者、住民から聞取調査を行う予定であったが、オーストラリア東部での大規模な山火事及び新型コロナ感染症を原因とする入国制限のため、聞取調査を来年度の延期することとした。 第二に、2018年度、環境影響評価法に基づく環境影響評価手続と公有水面埋立法に基づく埋立許可手続及び埋立承認手続を素材にして、わが国における民主主義的参加の既存の法理が、参加結果の受容のための手続的仕組みを組み込む基盤を有するか否かを検討したが、2019年度においては、これを発展させ、環境実定法(条例も含む)上の参加手続全般に検討の対象を広げ、参加手続における受容容易化のための仕組みを組み込む基盤について分析を行った。これについて、2019年度日本地方自治学会・分科会Ⅰ「自治体環境政策・手法の展開」において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、比較法研究を主に進める予定であった。オーストラリアにおける参加手続の実定法上の仕組みとそれをめぐる判例分析から析出される既存の法理を精査するとともに、invisibleな組織への聞取調査を行い、同組織の合意形成が、実定法上の参加手続にどのように組み込まれているのかを検討する予定であった。上記のオーストラリアにおける既存の法理に係る文献収集やそれの分析検討はすすめることができた。ただ、invisibleな組織に関する法学的検討を加えた文献は極めて限られているため、オーストラリアの研究者、NPOや自治組織への聞取調査を行い、invisibleな組織の現実態を把握する必要があった。しかし、オーストラリア東部での大規模な山火事及び新型コロナ感染症を原因とする入国制限のため、現地に赴くことができず、キャンベラの住民とのメール等でのやり取りによる情報収集にとどまらざるを得なかった。この点について研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、第1に、2019年度に実施することができなかった比較法研究を補うことにまず重点を置く。すなわち、invisibleな組織の聞取調査を実施し、その組織の構成員、取り扱う事務の範囲、合意方法、行政機関や政治との関係などの分析を行う。これらと同時に、オーストラリアのinvisileな組織がどのような社会的政治的背景のもとに生まれてきたのかについても検討を加える。これを踏まえて、オーストラリアにおける参加において、実定法上の参加の仕組みとinvisibleな組織の合意形成がどのように組み合わされており、それが、参加結果につき住民による受容を容易化する仕組みとして、実定法上の参加手続において、いかに機能しているのかを析出することを試みる。 第2に、上記の比較法研究と、2019年度に行った環境実定法における参加結果の受容容易化のための法的基盤についての分析を踏まえ、環境領域秩序の制御に携わる多様な主体が、参加の結果としての行政決定を受容しやすくするための参加の手続的仕組みと環境領域秩序の制御に相応しい民主主義的参加手続の法理の再構築の方向性を明らかにし、これについて研究成果を公表する。
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Causes of Carryover |
オーストラリアのinvisibleな組織について、オーストラリアの研究者、NPO、草の根運動の代表者、住民に聞取調査を行う予定であったが、オーストラリア東部での大規模な山火事と新型コロナウイルス感染症を原因とする入国制限により、オーストラリアに行くことができなかったため、次年度使用額が生じた。 2020年度に、次年度使用額を活用して、上記の聞取調査を実施することを予定している。
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Research Products
(1 results)