2018 Fiscal Year Research-status Report
International Legal Framework on the Prevention of International Terrorism
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18K01286
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
皆川 誠 名古屋学院大学, 法学部, 准教授 (00386533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尋木 真也 愛知学院大学, 法学部, 講師 (00581662)
吉開 多一 国士舘大学, 法学部, 教授 (00739972)
廣見 正行 上智大学, 法学部, 研究員 (20707541)
高屋 友里 東京大学, 政策ビジョン研究センター, 客員研究員 (70625938)
瀬田 真 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (90707548)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テロリズムの未然防止 / テロ資金供与防止 / テロリズム防止における国家間情報共有 / 海上テロリズム防止 / 犯罪過激化の未然防止 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、補助金交付以前から研究代表者、研究分担者および研究協力者を含む研究メンバーが各自で論点別の研究を進め、研究会の開催および研究発表等を行ってきた。こうした継続的活動のもとで、2018年度は5月にメンバーによる研究会を開催し、テロ資金供与防止に関する国際法上の規制について、主に金融活動作業部会(FATF)勧告に焦点をあてた研究報告が行われた(尋木真也・研究分担者)。本報告内容については、1月に開催された第68回早稲田大学社会安全政策研究所(WIPSS)定例研究会において発表された。また、1月には『早稲田大学社会安全政策研究所紀要』第10号が発行され、テロリズム防止における国家間情報共有(小中さつき・研究協力者)および海上テロリズム防止(瀬田真・研究分担者)に関する論稿が掲載された。小中論文はテロリズム防止における国家間情報共有についてテロ防止関連条約・安保理決議の枠組みを検討したうえで、EUにおける情報共有の取組みを分析し、テロリズム防止における国家間情報共有の現状と課題を明らかにした。瀬田論文は今後の日本における海洋開発の可能性に鑑み、主に海洋構築物の観点から国連海洋法条約やSUA条約等の国際法上の枠組みおよび日本法制について検討し、わが国の海洋テロリズム防止における課題を浮き彫りにした。このように、学術的研究面で一定の実績をあげることができた。 実践的研究面については、3月に2名のメンバー(皆川誠・研究代表者、吉開多一・研究分担者)がベルリンおよびロンドンの裁判所、司法省、NGO等を訪問し、主に再犯防止の観点から担当者と面談・質疑を行った。両国では政府・民間双方において再犯防止の取組みでもテロリズム等犯罪過激化の未然防止の観点が含まれていることがわかり、とりわけ政府・民間との連携において先進的な取組みがなされている点において有益な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、補助金交付以前からの活動においてメンバーの間で各専門分野のテロリズム防止に関する国際法の学説状況および判例・事例の動向および日本法の現状についての認識の共有がかなりの程度はかられており、また、個別研究も進んでいたため、2018年度は複数のメンバーが一定の研究成果を公表できる段階にあった。個別分野としてはテロ資金供与規制、テロリズム防止における国家間情報共有および海上テロリズム防止について口頭発表や学術論文発行という成果があったが、学術的研究の段階とはいえ、国際法における各分野におけるテロリズム防止に関する枠組みが一定程度明らかになるとともに、2020年の東京五輪・パラリンピックを控えたわが国におけるテロリズム未然防止の観点からの法的課題も浮き彫りとなり、本研究課題が目的とする体系的な「国際テロリズム法」の構築および日本の国内刑事立法政策への指針提供という点において一定の成果があげられたように思われる。 また、ベルリンおよびロンドンにおける司法関連機関・NGO等への訪問調査においては再犯防止の観点から聞き取りを行ったものの、再犯防止への取組みにおいても人々の多様な民族的背景に配慮したプログラム(再犯防止教育における宗教的・民族的観点の重視)があることがわかり、テロリズム等犯罪の過激化への対応という点から有益な情報を得ることができ、実践的研究の側面からも有益な結果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
メンバーのなかには研究会等での口頭発表を終えた後、研究会等での質疑を踏まえてその内容をブラッシュアップし学術論文として公表することを控えている段階にある者もいるため、2019年度も引き続き研究成果の公表を行うことが予定されている。ただし、2018年度には7月と9月に予定されていたメンバー内での研究会が台風の影響により2度中止になるなど、メンバー間での意識共有に多少の滞りが生じたため、2019年度以降は研究課題としての「国際テロリズム法」構築のための理念共有をはかるべく研究会の開催を予定したい。 2019年度は口頭発表や論文公表など、メンバー各自による個別研究が一定の段階に達するため、個別研究の体系化を意識した活動を進めていきたいと考えている。また、2018年度に実施したベルリンおよびロンドンにおける司法関連機関・NGO等への訪問調査において実務的観点からも有益な結果が得られたことを踏まえ、今後は日本法への指針提供の観点から警察実務家等への意見聴取等も検討していきたいと考えている。
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