2019 Fiscal Year Research-status Report
International Legal Framework on the Prevention of International Terrorism
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18K01286
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
皆川 誠 名古屋学院大学, 法学部, 准教授 (00386533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尋木 真也 愛知学院大学, 法学部, 講師 (00581662)
吉開 多一 国士舘大学, 法学部, 教授 (00739972)
廣見 正行 上智大学, 法学部, 研究員 (20707541)
高屋 友里 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 客員研究員 (70625938)
瀬田 真 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (90707548)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テロリズムの未然防止 / テロ資金供与防止 / サイバーテロリズム防止 / 犯罪過激化の未然防止 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、引き続き研究メンバー各自による個別研究が進められ、それぞれ研究発表および論稿の公表がなされた。令和2年3月に『早稲田大学社会安全政策研究所紀要』第11号が発行され、テロ資金供与防止に関する国際法上の規制(尋木真也・研究分担者)および国際的な通信活動におけるサイバーテロリズムの防止(高屋友里・研究分担者)に関する論稿が掲載された。尋木論文は、テロ資金供与防止条約や安全保障理事会決議を含む国際法上のテロ資金規制のなかでも金融活動作業部会(FATF)によるさまざまな勧告に着目し、テロ資金洗浄のセイフヘイブンとして国際的な批判の対象ともなっている日本のFATF勧告の履行状況を分析することで、FATF勧告の履行確保の現状および課題を明らかにした。高屋論文は、サイバー空間の特殊性ゆえにサイバーテロリズムへの適用法として国際刑事法、国際人道法、テロ関連諸条約などさまざまなものが考慮されるなか、国際電気通信連合(ITU)によるインターネット通信におけるサイバーセキュリティの強化の動きに着目し、衛星通信に対する「有害な干渉」概念について分析することで、「有害な干渉」の国際刑罰化の有用性について指摘した。また、海上テロリズム防止の観点から関連性の高い海上保安法制における「Use of force」の概念について検討した論稿(瀬田真・研究分担者)も刊行され、学術的研究面で一定の実績をあげることができた。 実践的研究面においては、9月にケンブリッジ大学にて開催された経済犯罪に関する国際シンポジウムに1名のメンバー(吉開多一・研究分担者)が出席し、日本の刑事司法制度に関する口頭発表を行った。発表では日本の刑事司法制度の実際について紹介し、日本の刑事司法制度の特質は精密かつ謙抑的な点にあることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、補助金交付以前も含め平成30年度から研究メンバー各自による個別研究も進んでいたため、令和元年度も引き続き一定の研究成果を公表できる段階にあった。現段階では、国際条約におけるテロリズムの定義確定の動向と課題、テロリズム防止における国家間情報共有、海上テロリズム防止、テロ資金供与防止に関する国際法上の規制、国際的な通信活動におけるサイバーテロリズムの防止について学術論文を公表することができており、本研究課題が目的とする体系的な「国際テロリズム法」の構築および日本の国内刑事立法政策への指針提供という点において、想定に近い成果があげられているように思われる。 しかしながら、本年度に一定程度進展させることを予定していたメンバー各自による個別研究の体系化については、各自の状況により一堂に会した研究会を開催することがかなわなかったりと、十分な機会を設けることができなかった。また、実践的研究の面でも海外への訪問調査・シンポジウムでの口頭発表など一定の成果は得られているものの、こうした成果をメンバー間で共有し、個別研究の体系化につなげる十分な機会が持てていない。個別研究の側面では研究目的を達成するうえで順当な進展が見られるものの、その共有・体系化の点で課題が残っているという意味で、進捗状況がやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度および令和元年度の活動を通して、メンバー各自による個別研究については研究目的の達成という点からは順当な進展が見られている。そのため、最終年度にあたる令和2年度は、個別研究のまとめおよびその体系化を意識した活動を実施したいと考えている。折しも国内外における新型コロナウイルス感染拡大の影響により、越境移動や集合といった行動が制限されているため、メンバーが一堂に会して研究会を開催するといったことは難しいかもしれないが、オンラインでの研究会開催等の方法によってメンバー間の意識共有をはかっていきたい。 また、3月に予定していたフランス刑事司法関連施設訪問およびフランス司法省でのセミナーが新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となってしまったが、実践的研究の進展という観点からは、状況が改善した折にはこうした海外調査研究も引き続き実施していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和元年度にはフランス・ルーベにおいてフランス司法省青少年司法保護研究所の訪問および同所における日仏交流セミナーへの参加・口頭発表が予定されていたが、2020年年明け頃より発生した新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する状況のなか、フランス政府の意向により同所を含む関連機関の国際的活動が規制されることになり、今回の訪問およびセミナーも中止されることとなり、次年度に繰り越さざるを得ない部分が出てきた。今回の新型コロナウイルス感染拡大の収束状況にもよるが、事態が収束した場合には改めて日程を調整し、訪問が実現できる可能性はあるため、令和元年度の繰越分と令和2年度の補助金にて研究の進展をはかりたい。
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