2021 Fiscal Year Research-status Report
企業間取引におけるフォーマル・ルールとインフォーマル・ルール
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18K01338
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 真希子 大阪大学, 法学研究科, 教授 (50302641)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソフトロー / ガバナンス / 民事法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民事法分野でのフォーマル・ルール、インフォーマル・ルールについて検討するもので、そのためにソフトローについて研究を進めてきたところである。ソフトローについては国際法や行政法の分野での研究が先行しているが、民事法においては非国家主体による規範形成やその運用は通常のことであって、他分野において論じられてきたことが当てはまりにくい側面があった。本研究ではこれまでに民事法も踏まえてハードローとソフトローを連続的に把握するための検討を行ってきたが、民事法の特殊性については必ずしも十分に検討できていなかった。2021年度には、論文執筆の機会を得て、商取引という、上記の問題が一番顕著にあらわれる分野に関して、どのような点において他分野のソフトローとは異なる特殊性があるかについて考えを整理できた(拙稿「ソフトローが働く具体的な場面――商取引分野」法学教室497号25頁、2021年)。 また、本研究の着想のきっかけとなった過去の研究(拙稿「モジュール化と『日本的取引慣行』――調査の仮説と分析(1)」商事法務2142号17頁、2017年)がフランスで翻訳・公刊されたが(Makiko Shimizu, translated by Simon Serverin and Gakuto Takamura, 'Realite et transformation des "pratiques de relations commerciales japonaises" : le cas de l’architecture modulaire', Droit et Societe, 2021, No. 109 pp. 737-761)、その際にフランス語の読者に研究の背景を説明をする必要があり、日本の企業間取引におけるインフォーマル・ルールについてのこれまでの研究動向について追加的に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症に対応するために研究以外の業務が例年より著しく増したため、満足な研究時間を確保することができなかった。本来であれば、特定の分野を取り上げた検討が進んでいるはずであるが、残念ながら、まだ大きく進展させることができていない。 現在は主に2つの方向で研究を進めている。第1に、特定の分野を取り上げて、実例に基づいた検討を進めようとしている最中である。昨年度までの検討により、民事法分野でのフォーマル・ルール、インフォーマル・ルールについて理解を深めるためには、当初、予定していたように「企業間取引」に限定するのは適切ではなく、「ガバナンス」を切り口として検討を進める方が適切である、と考えるに至っていた。その観点から、まずは、主にコーポレート・ガバナンスや企業の社会的責任という対象領域について調査を進めており、あわせて、それと比較検討することができる対象領域を特定しようとしているところである。 第2に、理論的側面についてである。ガバナンスに関する理論は、簡単には研究しつくせないような幅広い研究対象である。そのため、本研究に関係するところについて理解を深めるべく、法学や企業から離れた、ガバナンス一般を論じる文脈で、引き続き、内外の文献調査を進めている。また、基礎法等の分野の研究者と意見交換を行って、基礎的な部分での知見を広げており、2022年度には、この意見交換のまとめとして、上記第1の点と絡めて、法社会学会で報告を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、現在の進捗状況として述べた2つの点を引き続き推進したいと考えている。 第1の点は、民亊法分野におけるフォーマル・ルール、インフォーマル・ルールについて、コーポレート・ガバナンスや企業の社会的責任といった具体的な対象領域につき、実例に基づいた検討を行うというものである。幸いなことに、現在、現代的な重要性が高いさまざまな領域において、本研究を開始した当時に比べて、インフォーマル・ルール(ソフトロー)が多用されるようになり、また、場面に応じてフォーマル・ルール(ハードロー)と組み合わせて利用されるようになっている。コーポレート・ガバナンスや企業の社会的責任といった領域でも、また、そのほかの領域でも、国内においても諸外国においても目まぐるしい速さで実務に動きがある。本研究にとって実務の動きが速いということは困難の原因ともなるが、多くのデータが取得できるという点でメリットでもあるので、この状況を利用して、研究を進めたい。 第2の点は、法学に限らないガバナンス一般の理論についての知見を深め、それを自分の研究対象に応用するというものである。ガバナンスについての理論は、いくつかの学問分野にまたがって論じられており、それぞれの学問分野で問題関心のあり方や議論される論点が異なっている。そのため他分野での研究成果を直ちに本研究に応用できるわけではなく、そこに一筋縄ではいかない点がある。そこで、他分野についての研究を進めながら、どのようにすると本研究を発展させられるかについて検討し、応用の道を探りたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症への対応のため、研究の時間を十分に割くことができず、また、旅費の支出もなかったため、やむを得ず、次年度使用額が発生した。 2022年度も引き続き、新型コロナウィルス感染症の状況を見ながら研究を進めていくことになる。現状では社会的に見て出張が可能な状況とは言えないので、ミーティングはオンラインが主となるものと予想され、予算の使用は書籍を中心とした物品の購入となるものと考えている。
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Research Products
(1 results)