2021 Fiscal Year Research-status Report
戦後ソ連の講和問題と1950年代の国際政治―極東情勢と欧州情勢の連関
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18K01485
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
清水 聡 開智国際大学, 国際教養学部, 教授 (50722625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽場 久美子 神奈川大学, 国際学部, 教授 (70147007)
山本 健 西南学院大学, 法学部, 教授 (70509877)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 冷戦史 / 国際政治史 / 講和問題 / 独ソ関係 / 戦後日本外交史 / ソ連外交 / 極東情勢 / 欧州情勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年目は、1~3年目に収集した資料・史料の分析を継続して、冷戦時代の《極東情勢と欧州情勢》の連関の仕組みの一部を明らかにした。また《極東情勢と欧州情勢》の連関の仕組みについて、その分析を発展させるために、《米ソ外交のグローバルな展開》についても研究を進めた。 清水(研究代表者)は、3年目に実施した研究報告(日本政治学会研究大会・2020年度)を雑誌論文としてまとめた(「1950年代の国際政治と講和問題の日独比較:米ソ対立とスターリン・ノート」『開智国際大学紀要』第21号-2、開智国際大学、2022年3月、97~107頁)。このなかで、《極東情勢と欧州情勢》がソ連外交のなかでどのように連関していたのかを指摘した。東西ドイツの成立、中華人民共和国の成立、朝鮮戦争の勃発、西独の再軍備政策など、《極東情勢と欧州情勢》は、相互に複雑な影響を与えていた。安全保障問題への懸念から、ソ連は独自の対日講和案をサンフランシスコ講和会議で発表し(1951年9月5日)、また、ドイツの中立化を求める対独講和案(スターリン・ノート)を米英仏に提案した(1952年3月10日)。それは日独を中立化し、米ソ間の緩衝地帯とすることを目的としたソ連の外交方針であった。 また山本(研究分担者)は、《米ソ外交のグローバルな展開》の一部を明らかにするために、1970年代から80年代前半にかけてのヨーロッパ・デタントと新冷戦の関係を分析すると共に、近年の研究に基づき、同時期のグローバルな冷戦と国際政治経済の変容を石油危機との関係を軸にまとめた。同様に清水(研究代表者)は、ベルリンの壁をめぐる米ソ対立の実態を検討することにより、《米ソ外交のグローバルな展開》の一部を明らかにした(「ベルリンの壁崩壊」中欧・東欧文化事典編集委員会編『中欧・東欧文化事典』丸善出版株式会社、2021年、614-615頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年目は、ドイツ連邦文書館において収集した東ドイツとソ連との間の政策調整に関する史料の分析が進み、雑誌論文での研究成果の公表や、日本政治学会における報告など、精緻な研究が進んだ。とくに清水(研究代表者)は研究成果として、「1950年代の国際政治と講和問題の日独比較:米ソ対立とスターリン・ノート」(『開智国際大学紀要』第21号-2、開智国際大学、2022年3月、97~107頁)を執筆し、従来の研究には不十分であった地政学の観点から、ソ連外交の方針を指摘した。 また、《極東情勢と欧州情勢》の連関の仕組みを、冷戦時代全般のなかにどのように理論的に位置づけるかという研究上の問題点を克服するために、《米ソ外交のグローバルな展開》とする新しい視座が準備され、検討が加えられた。その成果は、日本政治学会研究大会において、山本(研究分担者)により、「新冷戦とヨーロッパ・デタント」として報告され、また司会を担当した羽場(研究分担者)により理論的な視座が提供された(日本政治学会、研究交流委員会企画「「新冷戦」とは何であったのか―《同盟・デタント・冷戦の終焉》と東西対立の最前線」2021年9月25日)。 さらに、『中欧・東欧文化事典』のなかで、中欧と東欧という文脈から、冷戦の一断面の検討も試みられた。その研究成果は、清水(研究代表者)により、「東ドイツの政治―スターリン・ノート」ならびに「ベルリンの壁崩壊」として公表された(中欧・東欧文化事典編集委員会編『中欧・東欧文化事典』丸善出版株式会社、2021年、596-597頁、614-615頁)。 個別の研究が着実に進み、次年度、研究をまとめる上での基礎が準備された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、以下の5点が推進方策である。(1)資料・史料の収集と分析。1950~1953年を中心に進めてきた情報収集について、研究の総合化の必要から、1954~1956年へと情報収集の範囲を広げる。それにより、ソ連の対日講和案と対独講和案が西側に拒否された後のソ連外交の方針を探る。外務省外交史料館での史料収集、あるいはオンラインでの情報・史料収集を中心に進める。 (2)複数の個別研究課題への取り組み。ソ連の講和構想は西側により拒否されたものの、日本と西ドイツはソ連との間において、国交回復問題、領土問題、さらには捕虜帰還問題が存在した。これらの問題の解決のために、1955年、西ドイツは平和条約の締結を棚上げにしてソ連との間で国交回復を実現させた(「アデナウアー方式」)。また1956年、日本も西ドイツの方式を参考にして日ソ共同宣言を成立させた。さらに、スターリン・ノート(ドイツの中立化)は西側により拒否されたものの、1955年、ソ連の提案によりオーストリアの中立化は実現した。これらの複数の個別研究課題について、相互の関係を分析する。 (3)極東・欧州関係史研究会の開催。研究会での報告と討議により、研究の方向性を相互に見直し、堅実な研究成果の公表を目指す。 (4)理論的視座の検討。《極東情勢と欧州情勢》の連関の仕組みを、理論的に補強するために、《米ソ外交のグローバルな展開》について、分析を進める。それにより冷戦の趨勢を問いなおす。 (5)研究成果の公表。研究報告(研究会、学会における報告)あるいは研究論文(学会誌、紀要)として、研究成果を公表する。
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Causes of Carryover |
当初、ドイツ連邦文書館において、「ドイツ問題」に対するソ連と東ドイツとの間の対外政策調整過程について情報収集と史料収集を進める予定であった。しかし、コロナ危機が続き、世界的に移動が制限されるなかで、現地調査からオンライン調査へと計画を切り換え、欧州の文書館においてオンラインで公開している情報と史料の分析に研究の重点を置いた。そのため、予定していたドイツでの情報収集と史料収集を、変更(ないしは次年度に延期)することとなり、残額が生じた。 次年度使用額については、情報収集と史料収集の一部として活用する。とくに、1954~1956年の冷戦構造の展開について検討するために、関連する情報と史料の収集を進め、また次年度は、研究成果を総合化させるために、包括的に関連情報の翻訳作業にも重点を置く。
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Research Products
(5 results)