2018 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of the Convention Relating to International Exhibition (1928) and the International Exhibitions Bureau (1931)
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18K01497
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐野 真由子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (50410519)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 万国博覧会 / 国際制度 / 戦間期国際関係 / 植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる2018年度の活動展開は、大きく二つの側面から説明することができる。第一は集中的な資料調査であり、本研究の直接の対象である博覧会国際事務局(通称BIE、在パリ)において2018年8月、19年1月および3~4月に、またイギリス国立公文書館、国立美術図書館、大英図書館(いずれも在ロンドン)において19年3月に、総計24日間にわたって行った。 とりわけBIEでは、通常公開されていない創設以来の理事会議事録の網羅的閲覧を許されたため、研究課題の中核となる情報をすでに相当程度、体系的に把握することができた。万国博覧会史を国際制度の確立と変遷という観点から理解しなおそうとする本研究の意義を確認しなおすとともに、これをより広範な国際関係史のなかに位置づけていくための基礎固めを完了した段階である。またイギリスは、博覧会制度が整備される過程における最重要国の一つであり、上記の各館所蔵資料はBIE資料の内容を別の角度から裏付けるうえできわめて有効であった。 いま一つの側面は、資料調査の進展と並行して、研究上の人的ネットワークが大きく拡大したことである。ここには、情報収集の一環としてのインタビュー(主要事例として、2018年11月4日・在上海EXPO MUSEUMにおける主要スタッフのヒアリング、11月26日・堺屋太一氏インタビュー)のほか、国際研究集会への参加(2018年11月5日・上海社会科学院にて)、研究会の開催(2019年2月11日・京都大学にて)、研究情報の交換と打ち合わせ(2018年11月6日・華中師範大学において馬敏教授と)等の要素が含まれる。これらの研究交流によって、報告者自身が課題に対して格段に複眼的な発想を持つことができるようになっただけでなく、今後、さらに学際的・国際的な協力を得ながら研究を推進する重要な糸口を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に資料調査に関しては、初年度、国際博覧会条約ならびに博覧会国際事務局(BIE)の成立に直接関係する1910~30年代を対象に行い、次年度以降に調査対象をそれ以前、以降の時期へと広げることを想定していた。2018年度中にBIEで行った調査では、当該時期の資料を十分に収集することができたが、これに加え、同事務局創設以来の理事会議事録(通常非公開)を時系列的・網羅的に閲覧する機会を得、このために、計画を大幅に上回る研究の進展が可能となった。単に計画以上の資料に触れることができたにとどまらず、想定と異なり、国際博覧会制度の長期にわたる展開を先に詳しく把握し、いわば歴史理解の縦軸を獲得したことは、「万国博という現代も存続する公式国際催事の基本的な性格を検証し直す」という本研究の最終目的に向け、より充実した考察を行っていく基盤となるものと考えている。報告者は本研究の成果の一環として、新たな博覧会史を論文ないし書籍の形で提示したいと考えているが、現在までにその基本的枠組みがほぼ定まり、さらに詳細で複合的な資料調査を構想できる段階に至った。 同時に研究上の人的ネットワークの面で、報告者が従前から主宰している学際的共同研究を土台としつつも、本研究課題にかかる資料・情報収集を新たなきっかけとして、やはり予想以上の進展を見た。当初計画に含めていなかった海外での国際研究集会への参加や研究会の実施等へつなげることができたのは重要な成果であり、ここから得た新知見が本研究の次年度以降の進行に還元されることは言うまでもない。 また、2018年11月、2025年万博の日本開催が決定したことは、本研究の申請時には予期していなかった事実である。万博をめぐる政府レベルの動きなどが活発になり、博覧会の制度面について情報収集・交換の機会が増加したことは、本研究の進展に大きな助けとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、初年度に大きく進展した資料調査の成果を十分に生かし、以下の三事項をとくに重視して研究を継続する考えである。 1)国際博覧会に直接関係する既収集資料を、相互の輻輳的な連関を考慮しながらさらに詳細に考察すること、 2)初年度に実施したイギリスでの調査は、博覧会史の軸となるBIE資料を別の角度から裏づけるうえできわめて有効であったが、未見の資料も多いため、これをさらに継続すること、 3)必ずしも博覧会に直接関係しない、国際関係史のより広範な展開を視野に入れ、諸領域の先行研究や学際的な交流機会を十全に活用しつつ、そうした全体のなかで国際博覧会制度の位置づけを検証するよう努めること。 また、上記3)とも関連するが、初年度にもすでに実現した研究会の実施や関連シンポジウムへの参加については、引き続き積極的に取り組みたいと考えている。とくに、博覧会史の初期において日本と共通する経験があり、加えて近年、博覧会をめぐる国際政治への参画が顕著な中国の専門家とは、相互に資するところが大きいと考えられるため、情報交換を密にし、研究上の協力関係を強化していきたい。
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Causes of Carryover |
本研究の申請時には、国際的に評価の高い万博資料データベースの購入を想定し、その費用を計上していたが、交付総額が減額された結果、その範囲で研究全体を遂行するためには高額なデータベースの入手を断念し、計画を再考する必要が生じた。データベースの購入を研究開始時に予定していた影響で、減額後も初年度配分額が比較的多い形になっていたため、計画再考後はここに残額が生じたものである。 この次年度使用額を含め、2019年度には、「今後の研究の推進方策」欄に記載したロンドンでの資料調査に主たる費用(旅費)が必要となることに加え、情報収集のための翻訳費、資料複写費、図書購入費、また研究会開催に要する会場等の経費等に助成金を使用する予定である。
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