2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on the development of economic linkage in the Greater Mekong Sub-region
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18K01574
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
野崎 謙二 高崎経済大学, 経済学部, 教授 (80444363)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | intra-industry trade / division of labor / Grubel and Lloyd index |
Outline of Annual Research Achievements |
拡大メコン地域(GMS)における経済連携の進展につき、まず、全ての産業分野におけるGMS内の域内貿易のデータを分析し、GMS域内においてどのような産業分野で生産分業が行われている可能性が高いのかを検証した。それによれば、機械及び電子産業においては垂直分業・水平分業のいずれも起きている可能性があり、その中でも特にタイとベトナムの間においてそういった動きが観察されることを指摘した。一方で自動車産業等により構成される運輸産業においては、一部で生産分業が起きていると考えられるものの、それらは垂直分業によるものであり、水平分業的な動きは確認できないことを明らかにした。こうした成果は、"Analysis on the structure of intra-regional trade in the Greater Mekong Sub-region"としてまとめ、2018年5月にインドで開催された国際地域学会の世界大会で報告した。 次に、上記の分析の中で、タイを中心に生産が増加している自動車産業を念頭に、GMS地域内の生産分業の状況について詳しく調査した。タイとベトナムの間では、自動車部品の相互貿易が増加していること、タイとカンボジアにおいても部品の貿易が始まりつつあることが確認された。しかし、それらの動きは、米国とメキシコの関係やドイツを中心とする欧州の状況と比べると、依然初期的な段階にとどまっていることが確認された。こうした成果は、"Production network of automobile industry in the Greater Mekong Sub-region"としてまとめ、2018年10月に台湾で開催された東アジア経済学会の大会で報告した。 なお、これらの研究成果に加え、2019年度以降の研究を円滑に進めるために、必要な情報・データの収集を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題として設定したGMS地域内における経済連携につき、まず、全産業分野での状況を分析して、5月30日の国際地域学会の世界大会で報告するに至った。次に、かかる分析結果を踏まえ、特に経済連携が進んでいることが明らかとなった交通産業(主に自動車産業)につき、分析を進め、ドイツを中心とするヨーロッパや北米地域との比較を行い、GMS地域においては、少しずつ進展しているものの、まだその連携は初期的な段階にあることを明らかにし、10月に別の国際学会である東アジア経済学会で報告するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2018年度に2度にわたる国際学会で報告した研究成果を、その際に討論者やフロアからいただいたコメント等を参考にして論文として仕上げることとする。その上で、国際ジャーナルに投稿するようにしたい。 次に、2018年度の作業で特徴が明らかとなった自動車産業についての分析をさらに発展させ、グラビティ・モデル等、計量分析的な手法を活用して、GMS地域の自動車生産の分業形態がが垂直的分業なのか水平的分業なのか、あるいはその両方の特徴が併存しているのかを分析することとしたい。2018年度に実施した、Grubel and Lloyd指数を用いた分析結果との整合性を確認し、もし、異なる結果が得られた場合には、その原因・背景を考察することとする。 さらに、こうした経済連携の進展を可能とする要因として挙げられるインフラの影響について分析を進めることとする。具体的には、国境インフラとして位置づけられる国際河川に架かる橋が地域経済に及ぼす影響及び効果を分析する。分析手法としては、差分の差分(Difference in Differences)分析の手法を用いる。タイとラオスの国境に位置するメコン川に現時点で開通している4本の橋の内、第1友好橋は1994年の開通のため、その前後の経済データを取得することが難しいため、2006年度に開通した第2友好橋、2011年に開通した第3友好橋、2013年に開通した第4友好橋の3つの橋を分析対象として検討することとする。
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Causes of Carryover |
研究成果を最終的に論文にまで仕上げることができなかったことから、当初予定していた論文投稿の際の英文ネイティブチェックに必要な経費を使用しなかったため。 2019年度は、その費用も活用しつつ、論文に仕上げるとともに、当初の予定通り、グラビティモデルの推計による分析や国境インフラの経済効果について研究を進める。
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