2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01580
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 浩之 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (40621751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 開発経済学 / 地理空間情報 / ベトナム / ラオス / 企業行動 / 夜間光 / 距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
開発経済学分野に地理空間情報データを援用することで主に以下のような研究を進めた。 第一に、爆撃の経済への長期的な影響の分析に関してラオスを取り上げて研究を進めている。爆撃が果たして長期的に貧困に結びついているのかという仮説に定量的に答えようとした既存研究はベトナムのデータを用いたMiguel and Roland (Journal of Development Economics 96.1 (2011): 1-15)しか存在しない。隣国のラオス国内にはベトナム戦争時代に、ベトナムの南北を結ぶ補給路が作られ、それをターゲットにした米軍による大量の爆撃が行われた。本研究では、爆撃のデータに加えて、地形・気温・降水量データだけでなく、経済活動の代理変数と解釈出来る衛星夜間光データなどを突合して分析を行っている。 第二に、ベトナムの地域利益誘導的政治の検証である。特に、ベトナムの最高決定機関である中央共産党のリーダー達の出生地に対して企業がより集中するのか、雇用が産まれているのかという仮説の検証を進めている。企業行動と地域利益誘導的政治の関係はいまだ明らかになっていないため、先行研究も稀である。分析の過程で、Districtレベルのコントロール変数として地理空間情報を注意深く吟味し取り入れている状況である。 第三にベトナムにおける産業特区形成による地元への経済的効果の検証を進めている。ベトナム統計局から必要な企業レベルおよび産業特区に関するミクロデータを入手し、住所情報から位置情報を検出し必要なデータ整備を行った。更には、地理的な非連続性を用いた計量経済学的分析などを援用し、鋭意分析を進めている。 第四に、医療受診機関と家計の間の距離という地理的要因を考慮した上での医療保険料支払い意思額の決定要因を分析した論文が、国際的専門誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、四つの異なった研究トピックに取り組めていることから、概ね順調に進展していると考えている。とりわけそのうちの一つのトピック(ベトナムにおける、医療受診機関と家計の間の距離という地理的要因を考慮した上での医療保険料支払い意思額の決定要因分析)に関しては、すでに国際的専門誌に論文掲載済みである。 本研究課題においては、地理空間情報データをいかに上手くコンピューターを用いて処理する技能を磨くかが大きなテーマであるが、大学院レベルのGISソフトを用いる授業を聴講したり、自習を行いながら、研究を進めている次第である。しかしながら、データ処理の過程では困難も多く、研究が滞ることも多々ある。よって、時間的な余裕を十分に持って進めていくことが肝要だと考えている。 幸いにも、他の三つのテーマに関しても、分析に耐えうるようなデータが整備されつつ、もしくは整備されており、分析は進捗している。「ベトナムの地域利益誘導的政治の検証」に関しては、データ分析が終わり、論文の体裁も整ってきている。よって、投稿に向けての準備を進めることができる段階である。「ベトナムにおける産業特区形成による地元への経済的効果の検証」のテーマに関しては、必要なデータクリーニング及びテクニカルな計量経済学的手法を用いた分析は一通り行い、論文の第一稿を鋭意執筆中である。ラオスにおける爆撃の経済への長期的な影響の分析に関しては、夜間光データの扱いや、分析単位(行政区レベルか、村レベルか、グリッドレベルか)等、今だ検討を要する課題が散見されるが、一つ一つ試していくことによって、分析を鋭意進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「ベトナムの地域利益誘導的政治の検証」に関する論文は国際的専門誌への投稿準備がほぼ整いつつあるので、準備が出来次第投稿を行う予定である。よって、投稿及び審査、改訂要求が来た際にはそれへの対応が今後の大きな課題となろう。 「ベトナムにおける産業特区形成による地元への経済的効果の検証」のテーマに関しては、計量分析を精緻化すると共に論文を書き進め、ワーキングペーパーを完成させたい。特に、空間情報データを用いた際のインパクト評価の手法を用いるため、その完成度を高めて行きたい。そして更なる改訂を進めていく予定である。出来れば国際的学会誌への投稿まで進めて行きたい。 「ラオスにおける爆撃の経済への長期的な影響の分析」に関しては、「現在の進捗状況」で述べたような課題を一つ一つ解決させることによって分析を進めて行きたい。テーマ的には空間計量経済学といった発展的手法の援用も可能と考えているため、手法の理解に努めると共にその応用可能性を探っていく。そして、論文執筆もできる限り進め、できればワーキングペーパーを完成させたい。またテーマの重要性を鑑み、ラオスの国民経済研究所や国際的な学会での発表を視野に入れたい。
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Causes of Carryover |
残金は68円であり、次年度使用額はほぼゼロとみなしてよいと考えられる。
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Research Products
(2 results)