2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K01580
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 浩之 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (40621751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 経済発展 / 経済地理 / 地理空間情報 / 開発経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナの影響のため、現地に赴いての新しいデータの収集や共同研究の打ち合わせは皆無に終わったが、それらに充てる時間を論文執筆に割くことに専念した。その結果、研究成果がいくつか達成されたことに加え、大幅な新しい研究の進捗も見られた。以下に研究成果の二つだけを述べたい。 第一に、ベトナム戦争時にアメリカ軍によって集中的に爆撃が行われた隣国ラオスにおいて、その爆撃の経済発展への長期的な影響を検証した論文"The long-term causal effect of U.S. bombing missions on economic development: Evidence from the Ho Chi Minh Trail and Xieng Khouang Province in Lao P.D.R. "が、開発経済学分野のトップジャーナルであるJournal of Development Economicsに採択された。本論文では、経済発展のアウトカム指標に村レベルの夜間光の強度と人口密度を用いて、村に投下された爆撃の強度を説明変数として用いた。爆撃の強度の操作変数として、爆撃が集中的に行われた地域からの距離を用いた。これらの変数は地理空間情報を駆使して作成されており、まさしく本研究課題に合致した論文であるといえよう。ラオス北部では依然爆撃の負の影響が残っている一方、南部では必ずしもそのような結果が明確ではないことが示された。 第二に、ミャンマーにおける長期的地域紛争と初等教育就学の関係を分析した論文“Impacts of long-lasting civil conflicts on education: Evidence from the 2014 Census of Myanmar"がJournal of Asian Economicsに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナの影響で現地に赴いての新しいデータの入手は不可能であったが、入手済みのデータ及びインターネットから入手可能なデータを用いて、大幅に研究を進捗させることが出来た。その結果は、[研究実績の概要]で言及した二本の論文に加えて、もう一本の論文“Information acquisition and the adoption of a new rice variety towards the development of sustainable agriculture in rural villages in Central Vietnam"を学際的な国際ジャーナルであるWorld Development Perspectivesに掲載できたことにも表れている。 これらの研究成果の結実に加えて、目下三つほどのテーマに関して研究を進めている。いずれも距離や空間情報を用いているため、本研究テーマに極めて合致したものであると言える。 以上のことから、研究の進捗は当初の計画以上に進展していると考えて良い状況にあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、三つの研究テーマに関して鋭意取り組んでいるところであり、本研究課題の期間中には少なくてもすべてを国際的専門誌に投稿、可能であれば一つでも掲載受理にこぎつけるように努力することが肝要と考える。以下に三つのテーマについて簡単に触れたい。 第一に、ベトナムにおける経済特区の新設の地域経済に及ぼした効果・外部波及効果に関する研究である。ベトナムの国家統計局から入手した企業センサスや、施設に関するセンサスを駆使して、経済特区及び各企業の位置情報を特定し、経済特区の設置タイミングにも着目して分析を行っているところである。計量経済学的にも最新の手法まで援用することを試みている。 第二に、インドの大気汚染、とりわけPM2.5と新型コロナウイルスの罹患者数、死亡者数との因果関係の解明を試みる研究を進めている。インドは世界の国々の中で大気汚染が最も深刻であると言っても過言ではない国であり、とりわけ都市部の人々は長年大気汚染にさらされている環境下に置かれている。本研究では、長年にわたる大気汚染下での生活環境と、新型コロナウイルスの罹患者数や死亡者数の間に因果関係があるのかまで踏み込んだ研究を進めている。インドのDistrictレベルのデータを用いて分析を行っているため、各District単位での大気汚染の深刻度やそれ以外の天候・地理的なコントロール変数が必要になる。この点で、地理空間的な情報を駆使した研究となっている。 第三に、ベトナムにおいて1075年から1919年まで実施されていたエリート官僚選抜試験合格者数の地域別の違いが、今日の教育水準にも影響を与えているかの検証を進めている。ベトナムの歴史においては、首都変遷が何度か行われており、各地域と首都の距離も変動している。この距離情報を何とか操作変数として用いられないか検討している。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響のため、予定していた出張や新しいデータの収集が不可能であったため、補助事業期間を一年間延長した。よって、使用計画としては、国外出張、新規データの購入、英文校閲費用、論文投稿料・掲載料等を予定している。
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Research Products
(5 results)