2020 Fiscal Year Research-status Report
ASEAN現地企業への技術伝播と中所得国の経済成長に関する理論・実証研究
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18K01616
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西山 博幸 兵庫県立大学, 政策科学研究所, 教授 (00309345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
スクサバン ヴィサテップ 兵庫県立大学, 国際商経学部, 准教授 (80599027)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際貿易・投資 / ASEAN / 中所得国 / 経済成長 / 生産性 / 技術伝播 / 異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主たる目的は、ASEAN諸国経済が先進国水準に到達するための方策を提示することである。西山(研究代表者)が全体の統括と理論研究、スクサバン(分担者)が実証研究を担当している。2020年度は、(1)入手したベトナム個票データの整理とデータベース作成、(2)異質性を導入した開放経済モデルによる理論・実証研究、(3)研究会の開催と研究成果の対外発信に注力した。 (1)については、データのクリーニング作業が概ね完了し、現在は変数リストを作成している段階である。また、テーマ別プロジェクトチームを立ち上げ、研究を開始している。上記のデータベースが完成次第、実証分析を行う予定である。 (2)については、企業の異質性を組み込んだ独占的競争貿易モデルによる複数の理論・実証論文を執筆・投稿している段階である。現時点において、[1]Nishiyama, Fujimori, Sato、[2]Nishiyama, Furuta, Sugiyama、[3]Nishiyama, Gintani, Tsuboiが査読付き外国雑誌に投稿中、[4]Nishiyama & Gintani、[5]Nishiyama, Kato, Kamata、[6]Nishiyama, Takada, Tsuboi、[7]Nishiyama, Gintani, Sugiyama、[8]Nishiyama, Yamaguchi, Gintaniの諸論文が学会発表あるいは投稿前の段階にある。さらに、本研究の主要テーマである「東南アジア諸国への技術伝播」に関する本格的な調査・研究も進行中である。これは上記のベトナム・データを用いた実証論文の形でまとめる予定にしている。 (3)については、昨年度に引き続き他の基盤研究や所属機関研究所と連携しつつ、本課題に関連する研究会を開催した。研究会の情報はWebsiteにて公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の続く2020年度は、現地調査や新たなデータ購入をあきらめ、理論・実証研究に専念した。本研究課題に関連する重要な問題を取り上げ、各分野の専門家を交えたテーマ別プロジェクト・チームを発足させた。すでに複数の理論・実証モデルが完成している。「研究実績の概要」に記載した成果のうち[1]~[3]は査読付き外国雑誌に投稿中、[2]、[3]、[6]は兵庫県立大学DP(No.117, 119, 127)として発刊した。これらの論文は企業の異質性を導入した独占的競争モデルを土台としている。[2] はインド産業レベル・データを用いた排出規制の有効性に関する理論・実証研究、[3]、[4]、[8]はいずれも公正賃金モデルによる理論研究である。[3]は動学モデルによる貿易自由化と経済成長、[4]は貿易自由化と所得・厚生、[8]は賃金引下げによる経済効果に関する研究である。[6]はサーチ・マッチング・モデルを用いた雇用の二重配当仮説に関する理論研究、[7]はFDIを導入したモデルによる排出規制に関する理論研究である。[1]と[5]は2019年度の成果であるため説明は省略する。さらに、東南アジア諸国への技術伝播に関する研究も開始している。本研究用に購入した原データの情報量が膨大であったため、データのクリーニング作業にやや手間取ったが一通りの作業は完了した。 また2020年度も、他の基盤研究(研究代表者:佐藤隆広、加藤篤行、藤森梓、福味敦)や所属機関研究所との連携の下で「神戸国際経済研究会:KIES」を管理・運営し、本課題を主要テーマとする研究会を開催した。当研究会の情報は研究会Websiteで公開している。 ほぼ事前の計画通りに研究が進行しているため、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。ただし新型コロナの影響により事前の研究計画を一部変更せざるを得なかった点は残念である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナに伴う渡航中止勧告が本年度中に解除された場合は、すみやかにASEAN地域経済の実態調査や企業ヒアリングを再開する。ただし本研究課題の期限を考慮し、新規のデータ購入に関する交渉は中止する。現地調査に際しては、成長鈍化に直面しているタイと急速な経済成長を実現したベトナムを中心に視察を行う。その際は、東南アジアを中心としたASEANでの企業調査を定期的に行っている分担者のスクサバンに加え、ベトナムの現地調査に習熟した原口華奈(大阪産業大学)にも協力を仰ぐ予定である。また、西山が研究分担・協力者として参加している佐藤隆広代表の基盤研究(A)や福味敦代表の基盤研究(B)、加藤篤行代表の基盤研究(C)、藤森梓代表の基盤研究(C)とも連携しつつ効率的に調査を行いたい。 昨年度と同様に、研究代表者の西山は作成中の諸論文を完成させ、それらを査読付き英文雑誌に順次投稿する。そして、本研究課題の最終目標である「東南アジア諸国への技術伝播に関する研究」を本年度中に完成させる予定である。本研究は、加藤篤行(金沢大学)および藤森梓(大阪成蹊大学)との共同研究という形で現在進行中であり、藤森およびスクサバンを中心に実証分析に用いるデータ・ベース作成作業も順調に進んでいる。なお実証研究については、上述の佐藤、加藤、藤森に加え、鎌田伊佐生(新潟県立大学)、古田学(愛知学院大学)の協力も仰ぎつつ、テーマ別プロジェクト単位で研究を進行させている。現時点において、事前に計画していた研究プロジェクトはすべて開始されている。 ただし新型コロナの影響により、依然として海外渡航が制限されているうえ、論文投稿や査読プロセスの遅延、研究会や学会の中止等さまざまな弊害が継続的に発生している。今後の状況次第ではあるが、研究計画の大幅な変更や遅延が生じた場合には、研究期限の延長も視野に入れつつ柔軟に対応するつもりである。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、新型コロナによる海外渡航禁止と国内出張制限が継続されたため、国内外における調査、データ購入交渉、対面での打ち合わせ等が行えなかった。 本年度内に出張等が可能になった場合には、速やかに上記の諸作業を再開する予定である。ただし本年度も渡航制限が解除されなかった場合には、その分の資金を日系企業データ等の購入費用に充てることも考えている。また昨年度より、本研究テーマに関連した論文執筆および雑誌投稿作業を開始したため、本年度以降は英文校正料や論文投稿料等が増加する見込みである。
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