2020 Fiscal Year Research-status Report
イノベーション・ダイナミクスと地域貢献型中小企業の事業展開に関する経済史研究
Project/Area Number |
18K01718
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平沢 照雄 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70218775)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イノベーション・ダイナミクス / 地域貢献型企業 / 地域中小企業 / 企業城下町 / グローバル競争 / 電球産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はグローバル競争の進展とともに地域経済の衰退、空洞化が問題視されるなかで、「地域にこだわり地域に貢献する企業」を地域貢献型企業として注目し、その革新的な事業展開について経済・経営史的に明らかにすることを目的とする。そのために令和2年度は、主に以下の3つの調査研究を進めた。1つは、平成30年度からの継続課題として、長野県南部地域で中堅・中小企業によって取り組まれている新規産業創出に関する現地調査を行った。特に新型コロナの影響が顕在化した本年度は、昨年度まで取り組まれてきた上記の事業展開が、新型コロナによってどのような見直しおよび変更を被ることになったかについても新たに調査した。それとともに同地域で地域貢献型企業として活動するT社からスピンオフして創業したM社に着目し、長野県南部で創業した同社が青森県三沢に移転し、同地おいてT社の支援を受けつつ地域貢献型企業として発展するに至った過程について経営史的に明らかにすることができた。2つ目は茨城県における地域貢献型企業に関する調査研究に取り組んだ。特に本年度は、企業城下町型経済の代表地域である日立地域において、1960年代から下請協同組合に加盟してきたS社が、1980年代後半以降に革新的な事業を展開するに至る過程について調査した。また本年度は新型コロナ危機下における茨城県の地域経済および企業活動についても新たに調査し、その成果を中間報告として研究会で報告することができた。3つ目は、電球産業におけるイノベーション・ダイナミクスとの関連で、日本における電球工業の歴史的展開と電球企業の地域貢献的な事業展開を明らかにする調査研究を行った。そしてその成果の一部を公刊することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度は、昨年度実施できなかった海外(中国)と国内(青森県他)での聞き取り調査を実施する予定であった。しかしながら新型コロナウィルスの影響で海外での調査は中止せざるを得なかった。その一方で国内での調査に関しては、国会図書館や長野県南部での資料調査を重点的に実施した。これに対して昨年度から計画していた青森県三沢での聞き取り調査は、調査先の了解を得て電子メール等を利用しての調査に切り替えて実施した。その結果、同地域で活動する地域貢献型企業の情報収集と論文の作成が実現でき、一定の成果を得ることができた。しかし長野県飯田や茨城県日立周辺地域での聞き取り調査などは実施できなかった。以上を総合した場合、現在までの進捗状況を遅れていると自己点検評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究を推進するうえでの最も大きな問題は、新型コロナウィルスの影響である。本研究は精力的な現地調査と資料収集を起動力として進めるものであるが、令和3年度も海外出張が大幅に制限された状況が続くことが予想されるため海外調査は中止し、国内調査に特化する形で研究を進める予定である。またその調査も、調査相手の了解が得られた場合は、オンラインによるリモート調査あるいは電子メールなどの手段も利活用することにしたい。そのうえで前年度から継続して行っている事例研究の成果を論文にまとめるとともに、令和3年度後半は本研究全体の総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、令和2年度実施予定であった海外と国内での聞き取り調査を中止せざるを得なかったことによる。加えて参加した学会およびセミナーなどに関しても、そのほとんどがオンラインによるリモート開催に変更されたことから、予定していた出張旅費との乖離が生じたことによる。令和3年度は、繰り越し額を含めた研究費を、主に前年度に実施できなかった現地調査を行うための旅費として使用するともに、これまで収集したデータ等の整理および研究成果を英語論文にする際に必要な費用(英文校閲費など)として使用する予定である。
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Remarks |
(研究会発表)「コロナ危機と地域経済:茨城の地域経済を中心として」歴史文化研究会、 2021年2月28日
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Research Products
(2 results)