2021 Fiscal Year Research-status Report
Estimating Human Resource Abundance in Terms of Economics and Management Studies
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18K01799
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
宇都宮 譲 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60404315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福澤 勝彦 長崎大学, 経済学部, 教授 (00208935)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人的資源量 / タイ / 労働力調査 / 状態空間モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はタイ労働力調査結果を用いて、都県別人的資源量を推定した。人的資源は潜在的に就業し得る人々を、人的資源量は人的資源の数を指す。労働力人口は人的資源から抽出された人数とするならば、人的資源量は労働力人口から統計的に推定可能である。対象期間は1994年から2020年。データはタイ統計総局ホームページからダウンロードした。推定には統計解析環境RおよびMCMCサンプラStanを用いた。 結果、以下が明らかになった。第一、労働力人口は、人的資源量の95%信用区間内にほぼおさまる。ただし、ナコンラチャシマ、ブリラム、スリン、ウボンラチャタニ、およびウドンタニ各県においては上記区間を上下に外れる労働力人口が観測される時期がある。第二、各県・四半期に由来する変動は資源量に比べて微小であること、バンコク都を除いてほぼ人的資源量のばらつきが同じかつ小さいことを見出した。人的資源量トレンドを表現する項は正であった。第三、労働力人口にみられるばらつきは、人的資源量にみられるばらつきよりも大きかった。特に、上記5県において大きなばらつきを見た。 以上から、われわれは以下に示す結論を得た。第一、期間を通じて人的資源はほぼ全量利用されたと考えられる。ただし、上記5県においては、過大/過小な人的資源利用があったことが推測される。第二、これら各県における過大な人的資源量ばらつきは、こうした過剰/過小な利用に由来すると考えられる。第三、各県において人的資源量は異なるが、期間を通じて安定していたと考えられる。人的資源量にみられるばらつきは各都県における人的資源量総量に比較して小さく、また微増傾向にあったことは、こうした推測を支持すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度、関連する学術業績は国際会議発表2本である。新型コロナウイルスが猖獗を極め、所属機関用務が急増したことに由来する。次年度は用務も落ち着く見込みである。2022年度は上記発表をもとに、国際雑誌に論文を投稿したい。 必要なデータはほぼ揃えた。本年度前半にデータを連続的に読み込み整形するコードを改良したところ、数千あるMSExcel形式ファイルを正確かつ高速に読み込み必要なデータセットを構築することに成功した。今後、タイ王国政府がデータ提供を再開しても使えるコードであり、研究を持続可能とする途がひらけた。 簡単ながら人的資源量推定モデルを構築して、検討に値する結果を得た。並行して構築した複雑なモデルに比べて、あてはまりもよい。欠損や変化点にも強いモデルであり、本研究が対象とするような不完全なデータを用いても十分に人的資源量を推定できると考えられる。 なお、上記欠損データは、各県にある統計局が誤入力したことが原因にて発生している。印刷された各県統計書を参照することで、欠損は解消され推定精度は向上すると考えられる。欠損部を補間することは可能であるが、データがない期間が長くなると推定誤差が大きくなる傾向がある。データがあればあるにこしたことはない。また、確信がもてる結果を算出するために、現状では相応に長い計算時間(48時間程度)が必要である。既往研究と成書によれば、Stanコードを改良することで計算時間を半分程度に短縮できることが明らかになった。2022年度はかようなリファクタリングにも取り組みたい。 以上、年来遅れていた研究が進捗したこと、2022年度に取り組む作業が具体に見出されたことから、「おおむね順調に進展している」と結論付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は上記成果について、論文を執筆することに傾注する。すでに執筆開始しており、5月末までには執筆終了予定である。余裕があれば、Academy of International Businessなど国際会議にも発表原稿を投稿したい。 論文投稿後、下記についても検討予定である。第一、ナコンラチャシマ、ブリラム、スリン、ウボンラチャタニ、およびウドンタニ各県各県において過大/過小な人的資源利用や大きな労働力人口分布ばらつきが発生するメカニズムを組み込んだモデルを構築したい。タイ王国全土から労働力が流入しがちであるバンコク都では、過大/過小な人的資源利用やばらつきが推定されないことは注目に値する。バンコク都において人的資源利用する人々は、人的資源利用が季節毎に急激に変動するようなことをしないことを意味する。上記各県に共通しかつ他都県においては考えられない人的資源利用行動が存在することが示唆される。有力な理由は、特定時期に作業が集中しかつ労働集約的な生産技術を用いる農業と考えられる。稲作やサトウキビ栽培が例として挙げられる。 こうした推論が正しいとすれば、人的資源は必ずしも労働生産性が高い部門へ集中するとは限らないと考えられる。Lewisが唱えた伝統的な無制限労働供給理論によれば、労働生産性差異を理由として農業部門から工業部門へと移行することになっている。労働移動に関する議論にも、一石を投じる可能性がある。ただし上記5県以外にも農業を主産業とする県が存在することから、より慎重な検討が必要であろう。 第二、地理的自己回帰モデルも試したい。人的資源量やそのばらつきには、地理的自己相関があるようには考えられない。一方、労働力人口には明瞭な地理的集中がみられる。集積を説明する理論モデルも加味しながら、いくつかの統計モデルを試行したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス大流行にて国際会議出席が叶わなかったことから、旅費を執行しなかった。結果、資金計画に余裕が生じた。2022年度には、各種会議に出席したい。事情が許すならば、上記5県も訪問して産業構造について調査したい。 現在執筆する論文に必要な英文校閲料および投稿料にも投稿料にも充当する予定。
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Research Products
(4 results)