2020 Fiscal Year Research-status Report
従業員エンゲージメント度数向上に寄与する人的資源管理の理論的・実証的研究
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18K01859
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
橋場 俊展 名城大学, 経営学部, 教授 (10364275)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 従業員エンゲージメント / 発言機会 / 組織的エンゲージメント / 非組合型従業員代表 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究実績として、アメリカにおける非組合型従業員代表制度(NER)について考察することができた。具体的には、NERの概念確認したうえで、その史的展開を概観するとともに、このNERが1990年代以降アメリカの学界においてにわかに脚光を浴びるに至った背景、および1990年代以降の研究がNERをどのように位置づけたのか、そしてそこにはどのような新規性を見いだせるのかを検討しNER研究の現地点を明らかにすると同時にNERに伴う諸問題についても再検討した。 ところで、このNERは、従業員が発言(voice)するための有力な一手段という側面を有している。そして、イギリスの人的資源管理研究において、発言機会は、本科研研究テーマである従業員エンゲージメントを促進する要因として重要視されているのである。すなわち、発言機会が機能することで、自分たちは尊重されているとの強い感覚が組織に浸透し、組織の目標と価値観にコミットし、組織の成功に貢献する意欲を持ち、同時に自分自身の幸福感を高めることができる状態=組織的エンゲージメントを増強できるものと捉えられている。こうして、リーダーシップ、部下を支援的に育成的に管理するエンゲージした管理者、組織の高潔さと並んで、発言機会は従業員エンゲージメントを促進する4つの要因のひとつに数えられている。ところが、日本やアメリカの従業員エンゲージメント研究において、従業員の発言機会が顧みられることは皆無と言って良い。態度的エンゲージメントや行動的エンゲージメントのように、従業員個人レベルのエンゲージメントだけを考慮する場合はともかく、組織レベルでのエンゲージメントを考慮する必要が生じた場合、組織に対する発言機会の重要性はいや増すことになる。ここに、日米の主要な従業員エンゲージメント研究の限界を見出し得たことも2020年度研究の大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従業員エンゲージメントの促進要因のひとつである、発言機会の分析に想定外の時間を費やさざるを得なかったことから、従業員エンゲージメント研究あるいは具体的な従業員エンゲージメント促進施策そのものについての研究に遅れが生じた。 他方、本科研研究は日本企業における従業員エンゲージメント指数向上に資する日本型人的資源管理モデルの構築を最終的な目的として設定している。このためには、エンゲージメント向上のための先進的な取り組みを行っている企業や、エンゲージメント促進のための提唱を精力的に行っているコンサルタント会社等への聞き取り調査が不可欠となる。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって調査機会を得ることが困難な状況が続いたことも研究の進捗を遅延させる原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はヒアリング調査の実施が困難な状況が続いていたため、文献研究を主体とせざるを得なかった。そうした状況下、日、米、英における従業員エンゲージメント関連の先行研究を多々渉猟し、読み込むことができた。これらの研究成果の一部は論文という形で発表できたものの、未だアウトプットにつながっていない成果も多く残っている。そこで、まずは文献研究の成果をベースにして日米における従業員エンゲージメント研究動向の批判的検討を試みる論文を執筆することが今後の研究における課題となる。 加えて、日本的な人的資源管理や労使関係慣行とマッチした従業員エンゲージメント促進策を考案するという本研究の最終目的実現に向け、既にリスト化した企業、コンサルタント会社、財界団体等への聞き取り調査を着実に実施していくことを予定している。
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Causes of Carryover |
研究進捗に遅延が生じたことが研究費使用にも影響したことに加えて、新型コロナウイルス感染拡大の影響により予定していた国内外出張を取りやめざるを得なかったことが次年度使用額発生の理由となる。 次年度は、本研究目的を完遂するため主として国内での聞き取り調査を活発に行う予定である。また、もし、今年度同様に研究出張の実施ができない状況が続いた場合は、これまでの研究成果を図書もしくは報告書として刊行することも検討したい。
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Research Products
(2 results)