2020 Fiscal Year Research-status Report
フランスのコメルス・アソシエ(協同商業)に関する実証研究
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18K01900
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
佐々木 保幸 関西大学, 経済学部, 教授 (20268288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 道雄 大阪学院大学, 商学部, 教授 (10248263)
鳥羽 達郎 富山大学, 経済学部, 教授 (40411467)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コメルス・アソシエ / 小売業国際化 / 社会的連帯経済 / 中小小売業の組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度において、研究代表者が研究論文1本および学会研究発表1本を成果としてあらわし、研究分担者2名もそれぞれ関連した著書(単著)1冊および研究論文2本、学会研究発表3本および書評1本を公表した。 研究代表者による研究では、2019年度に実施した現地調査を踏まえて、フランスのコメルス・アソシエ(協同商業)の全体的な現状と個別企業(事業体)の経営状況並びに経営戦略について明らかにした。とりわけ、研究論文「フランスにおけるコメルス・アソシエの発展と現状」では、2010年代後半期におけるコメルス・アソシエの堅調な成長を考察し、その傾向を個別企業レベルでも確認した。コメルス・アソシエの持続可能な成長の背景には、グループ数や加盟事業者数の増加があり、食品・非食品を問わずあらゆる小売業の領域で、コメルス・アソシエ型の事業が志向されるフランス経済社会の状況を看取することができた。 また、コメルス・アソシエの発展についても、自身の従来の研究成果(19世紀以来の歴史を土台とした戦後における2段階的発展)に加えて、コメルス・アソシエ間の競争や当初カルフール等の営利企業に向けられていた「反ハイパーマーケット運動」がコメルス・アソシエにも波及していく中で、コメルス・アソシエが巨大流通企業と一般独立中小小売業との二重の競争や対立に対応にしながら成長を遂げた過程を明らかにすることができた。 さらに、個別企業における経営戦略の異同についても考察し、コメルス・アソシエ企業の多様性や複線的発展過程にも言及することができた。これらの研究成果は、コメルス・アソシエという独特の商業形態のメカニズムを解明するのみならず、資本主義における商業の発展に関する研究に貢献したと思料する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、計画していたヨーロッパやアジア各国での調査を実施することができなかった。夏季に計画していたヨーロッパでの現地調査、春季に計画していたアジアでの現地調査がともに不可能であった。また、秋季に対面形式で計画していた学際的な研究交流も、同様に行うことができなかった。これらの調査等は本研究にとって重要であり、その意味で、研究の進捗が「やや遅れている」と認識している。 しかしながら、研究代表者を中心に、2019年度に行った調査内容を踏まえ、本研究課題についての学術論文の発表および学会研究発表は着実に進めており、調査の若干の遅れはあったが、本研究課題に対する研究自体は堅調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2020年度に遂行できなかったヨーロッパ(フランス、スペイン、イギリス等)のコメルス・アソシエ組織や協同組合組織に対する現地調査を実施したい。とりわけ、コメルス・アソシエによる連合組織であるFCAや社会的連帯経済に寄与する協同組合組織について、研究期間における最終調査を敢行すべく研究を進める。また、同様に対面形式で実施できなかった社会的連帯経済研究を専門とする研究者との学際的な研究会を開催する方向である。 これらの研究活動を通して、今秋には流通経済に関する専門学会の全国大会で成果発表するとともに、学術論文にまとめていく。なお、2021年度の研究では、協同組合原則にもとづくコメルス・アソシエがコロナ・パンデミック下において、どのような社会的経済活動を実践しているのかという側面についても考察していく。同時に、カルフールのような小売企業の実践についても並行して研究していく。このことによって、コロナ・パンデミック下におけるコメルス・アソシエの社会的意義や流通経済のレジリエンスへの寄与について明らかにできると思料する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、年初来計画していたヨーロッパおよびアジア各国での調査を実施することができなかった。夏季にはヨーロッパでの現地調査、春季にはアジアでの現地調査がともに不可能であった。また、秋季に対面形式で計画していた学際的な研究交流も、同様に行うことができなかった。これらの調査活動の不履行に伴い、予算の未使用が大きく発生することとなった。 研究の延長を認めていただいた2021年度には、上記の現地調査および研究交流会の実施に向けて研究活動を進める。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の動向によって、以上の計画が困難な場合には、研究交流会の小規模化あるいはリモートでの開催を企図するとともに、研究成果の出版に充当できるよう研究活動並びに使用計画を見据えていく。
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