2021 Fiscal Year Research-status Report
フランスのコメルス・アソシエ(協同商業)に関する実証研究
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18K01900
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
佐々木 保幸 関西大学, 経済学部, 教授 (20268288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 道雄 大阪学院大学, 商学部, 教授 (10248263)
鳥羽 達郎 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (40411467)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コメルス・アソシエ / コロナ・パンデミック / 経済危機 / ネット通販の成長 / 反アマゾン法 / ボランタリーチェーン / E.ルクレール / アンテルマルシェ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、研究代表者が研究論文2本、学会発表1、研究分担者の田中が研究論文3本、学会発表1、同鳥羽が研究論文1本、学会発表2を成果として発表した。 研究代表者は、2019年末までのコメルス・アソシエの発展と現状について考察するとともに、個別企業レベルでの研究を進めた。フランス流通企業最大手であるカルフールの売上高に匹敵する業績をあげるコメルス・アソシエの代表的存在であるE.ルクレールやアンテルマルシェなどについて、その歴史的発展経緯、大型店出店規制法であるロワイエ法に対する対応、業態戦略や共同仕入れ機構の創設、その他の経営戦略を明らかにした。 また、新型コロナウイルス感染症拡大下におけるフランス小売業の動向や流通政策(小売商業調整政策)についても研究し、学会研究会(統一論題)でその成果を発表した。コメルス・アソシエの振興とも関連するが、フランスの流通政策の「総合性」や「体系性」といった特質が、コロナ下においても現出され、発揮されたことを明らかにした。 さらに、コロナ下で拡大したEC市場およびインターネット小売販売(ネット通販)について考察し、その急激な成長に対する流通政策の制度化という点から、日本とフランスの政策を研究した。本研究においても、フランスの流通政策の特質がいっそう明確に析出された。 以上の研究に対して、研究分担者の田中はフランスの流通機構および政策の側面から、鳥羽は流通企業の行動変化や社会的責任という側面から研究を補強し貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が長期化する下で、2021年度も計画していたフランスを中心としたヨーロッパでの現地調査を遂行することができなかった。その点が、研究の進捗に影響を与えたことは否めないが、研究代表者および研究分担者ともに、2020年度における同様の経験に則して、利用可能な資料を活用・精査することによって、研究を進展することができた。その成果は別欄に記したとおりである。 研究代表者および分担研究者ともに、研究成果を論文にまとめるのみならず、コロナ下でリモート形式によって催された学会研究会において、積極的に研究報告を行う機会を設け、そこで多様な議論が展開され、それを研究内容に反映できるよう努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、夏期にフランスほかヨーロッパでの現地調査を何とか実施したいと考えているが、新型コロナウイルス感染症の収束も見通せない状況であるので、日本でのボランタリーチェーンに対する現地調査を並行的に計画している。フランスのコメルス・アソシエと比較した日本のボランタリーチェーンに対する研究は、本科研費における研究として2019年度に実施しているので、業種や業態特性を踏まえたさらなる現地調査を行うことを計画している。 また、2021年度における研究を基礎として、新型コロナウイルス感染症拡大下におけるフランスのコメルス・アソシエの対応や取り組み、経営動向などについて研究をまとめていく。このことは、資本制企業とは異なる経営原理に立脚する事業体の特性を明らかにする意義を持つと考えている。さらに、コロナ・パンデミックによる経済危機の下で協同組合的商業組織が果たした機能や成果を明示することができると思料している。 そして、研究期間の再延長を認めていただいた2022年度を本研究の最終年度として、研究分担者に社会的連帯経済を研究する研究者を加えた研究会を開催し、本研究の総括を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
2021年度も、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、ヨーロッパを中心とした現地調査を実施することができなかった。このことが、次年度使用額が生じた主な事由となった。2022年度は、ヨーロッパでの現地調査を何とか実施したいと考えているが、この2年間と同様の事態が予想される。そこで、複数回に渡る日本でのボランタリーチェーンに対する現地調査を並行的に計画している。日本のボランタリーチェーンに関する研究も、本研究における重要な課題の1つである。このように、日本国内における旅費による使用計画をたてる。 また、2022年度を本研究の最終年度として、研究分担者に社会的連帯経済を研究する研究者を加えた研究会を開催し、本研究の総括を行うことを計画している。研究会に招へいする研究者に対する旅費や謝金を予定している。
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