2020 Fiscal Year Research-status Report
無形財情報の開示と金融機関の事業性評価融資の促進に関する研究
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18K01950
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
古賀 智敏 東海学園大学, 経営学部, 教授 (70153509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
付 馨 京都先端科学大学, 経済経営学部, 准教授 (80551051)
姚 俊 明治大学, 商学部, 専任准教授 (00610932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 融資モデル / 非財務情報 / 事業性評価 / 古賀・榊原・高橋(KST)モデル / ローカルベンチマーク / 非財務指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、昨今の金融機関の財務情報に焦点を置く伝統的な融資モデルから知的財産や経営力、営業力、製品開発力などの無形の非財務情報を重視する「事業性評価」融資モデルへの移行を受けて、評価対象となる非財務項目をいかに選別し、評価・測定・開示すべきかを究明するとともに、最終的には事業性評価モデルを開発し、その有効性を実証することである。 このような課題に対して、本研究の1つの重要な成果は、事業性評価のための計算モデル、「古賀・榊原・高橋モデル(KSTモデル)」をファイナンスや中小企業経営の専門家の支援を得て、共同開発したことである。このモデルは、ドイツのWulf,Pfeifer & Kivikas(2009)のEarnings Capability Indexモデルを参考にしつつも、日本の中小・中堅企業のビジネス実践に対応するように全面的に作成し直したものである。現在、このKSTモデルが企業の成長力評価にどの程度有効であるか、その検証作業の準備を研究協力者の協力のもとで進めているところである。 これまで政府関係主導型で進められた事業性評価の方法は、ローカルベンチマークの選別とその組み合わせによる簡略化されたものであル。選別された非財務指標は、主に実務家の経験と勘に頼る手法がとられ、学術的・理論的成果に基づく体系性と理論性が欠如したものであった。われわれのKSTモデルは、上記のドイツモデルの詳細な分析と検討に基づき、わが国経営環境のなかで得られた知見を加味して短期、中長期の時間軸のもとで体系的に設定されたものであり、政府主導型モデルよりも理論性・体系性・発展可能性の点で優れていると考える。本研究の成果の詳細は、古賀智敏著『企業成長のデザイン経営』2020年、同文館出版を参照されたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、次の4つであった。① 「無形財情報と事業性評価判断に関する理論的フレームワークの画定」② 「金融機関の事業性評価融資に関する調査分析」③ 「事業性評価モデルの構築と金融機関の融資決定への適用可能性」 ④ 「無形財情報の戦略的活用と企業の最適開示システムの発展ー総括・課題・展望」 これらについて、上記①~③については、先に述べたように、実施し、その成果を一冊の著書『企業成長のデザイン経営』(2020年4月刊)として成果を公刊した。しかし、上記課題④については、本評価モデルの有効性の検証と併せて、非財務情報をいかに既存の財務情報に組み込み、企業開示の最適開示制度を構築するかは、今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題として次の2つがある。第1に、非財務情報の有用性・有効性の研究である。インタンジブルズの貨幣金額での価値評価が限界ある現状では、情報開示は企業価値の把握に実効性ある方法である。本来、指数データや記述情報は、定量的測定値の信頼性を裏付ける補完機能をもつことから、定量的金額数値が得られない場合、主観的判断に基づく定性的情報開示(KPIなど)も企業価値の相対的評価を把握する上で有効である。それとともに、近年の統合報告やサステイナビリテイ報告など企業レポーテングの展開は、明らかに非財務情報の重要性に注目するものである。最終的には、財務と非財務情報との最適開示による企業レポーテング制度の構築が望ましい。 第2に、企業の成長力評価の重要性と評価モデルの有効性の検証である。融資先企業の成長力を把握することは、金融機関の融資決定に役立つのみならず、企業の取得・買収(M&A)判断や取引先の開拓にも大いに役立つ。大企業の評価は、ファイナンス理論を活用して企業価値を算出することができるが、中小・中堅企業の成長力、すなわち企業価値評価は、非財務項目の主観的判断を用いた事業性評価によらなければならない。それによって、金融機関の融資を活性化させ、融資先企業の資金需要を満たすとともに、企業のM&Aや企業取引を促進させることが可能となる。最終的には、政府が目指す地域経済の活性化とマクロ経済の成長に貢献することが期待される。このような評価モデルの有効性と精緻化は、今後の研究の課題である。
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Causes of Carryover |
2020年1月から現在(2021年3月31日)までの期間にわたってコロナウィールス感染 蔓延により、県をまたぐ出張や研究報告の海外出張が困難となり、その分、次年度の研究活動に資金を充当せざるを得なくなった。今後、追加的研究活動を行うことにより、本研究を完成させたい。
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Research Products
(2 results)