2020 Fiscal Year Research-status Report
The Prospect of Post-Capitalism and the Origin of Capitalism: Theoretical and Historical Research for the reconstruction of the theory of Transition
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18K01969
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
山田 信行 駒澤大学, 文学部, 教授 (80287002)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 資本主義 / 移行 / 労使関係 / ポスト資本主義 / 経営家族主義 / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度については、資本主義への移行の普遍性を担保するメカニズムについて、理論的な研究を行った。結論としては、資本主義への移行に伴って通常解体されることが想定されている前資本主義的な社会関係が一定期間存続することを通じて、資本主義のもとにおいても「互酬性」が確保されることによって、移行の普遍性が担保されることになる。換言すれば、前資本主義的社会関係が解体されないことによって、かえって資本主義への移行が促進されるという逆説的な事態が起こることを明らかにした。こうした「互酬性」の確保を通じて、資本主義企業においても、いわゆる「モラルエコノミー」が生起し、市場交換の専一性を抑止する効果をもつことになる。 さらに、日本を事例として、こうしたメカニズムを具体的に跡づけていく作業を開始した。その際、注目されるものは「経営家族主義」の制度とイデオロギーである。「経営家族主義」については、それが最も喧伝された1920年代においては、むしろそれほど機能しなかったことが知られている。そこで、この研究では、「経営家族主義」を前資本主義的な互酬的関係を資本主義企業に持ち込む制度とイデオロギーとして把握したうえで、雇主と労働者の前資本主義的な利害関心が一致することとそれを下支えする制度形成とが、「経営家族主義」を機能させるという視点をもって、「経営家族主義」の歴史的展開をたどる作業を行った。この作業については、さらなる資料的な裏付けが必要とされるものの、第2次世界大戦後に確立した日本的な雇用慣行といわゆる「企業社会」の成立が、「経営家族主義」的な機制による可能性があることを明らかにした。 加えて、1990年代以降における「企業社会」の崩壊といわゆる「ブラック企業」の台頭とは、日本においても資本主義企業における「互酬性」とそれに基づく「モラルエコノミー」が失われたことを明示していることを主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、概ね順調である。当初の計画通り、資本主義の形成期とポスト資本主義への展望について、バランスよく研究が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本研究の最終年度に当たるため、日本を事例とした資本主義への移行のあり方とポスト資本主義への意向の展望について、暫定的なかたちにしろ、理論的および経験的な結論を出したいと考えている。前者については、事例となる企業(電機産業を想定)の社史や労使関係資料の収集・購入を進めるとともに、それらの読み込みを進めることを通じて、「経営家族主義」と「企業社会」における「互酬性」の存在をいっそう明らかにしたい。後者については、労働者協同組合への個別調査(事例研究)を進めることを考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度については、コロナ禍の影響によって、参加を予定していた国際学会がオンライン開催となってしまった。そのため、当初想定していた旅費主出がなくなってしまい、結果的に次年度使用金がかなりの金額になってしまった。今年度についても、引き続き同様の状況が継続することが想定されるため、本来旅費に当てる予定であった費用を歴史的資料(社史その他)の購入に充てることを考えている。
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