2021 Fiscal Year Research-status Report
The Prospect of Post-Capitalism and the Origin of Capitalism: Theoretical and Historical Research for the reconstruction of the theory of Transition
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18K01969
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
山田 信行 駒澤大学, 文学部, 教授 (80287002)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 資本主義 / 移行 / 労使関係 / ポスト資本主義 / 互酬性 / モラル・エコノミー |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究課題については、2021年度が最終年度であったものの、コロナ禍の影響で大幅な研究の停滞を余儀なくされた。そもそも、国際会議等への等への出席を想定して支出予定であった予算がほとんど消化できなかった。そのため、研究期間の延長を申請し、2022年度には研究の進捗を期したいと考えている。 2021年度において、主に検討してきた課題は、資本主義への移行と資本主義の普遍性との関連であり、日本における「企業社会」の形成とその解体、さらにはそれ以降の過程を視野に入れつつ、労使関係の歴史的展開を理論的・経験的に把握する試みを完成することを追求してきた。このため、ポスト資本主義の展望については、その検討を先送りし、先に資本主義への移行とそれに伴う「互酬性」と「モラル・エコノミー」の帰趨について考察を試みた。その結果、日本においては、資本主義に媒介された「互酬性」(「資本主義的互酬性」)は、企業内(とりわけ大企業内)において形成され、1970年代以降、いわゆる「企業社会」形成に関与した可能性があることを指摘した。 すなわち、一般には労働者に対する「強制」ばかりが指摘される「企業社会」の内実に関して、労働者は単に過酷な労働を強制されているばかりではなく、高度成長を経過する過程でようやく制度化された「終身雇用」のもとで、努力すれば、「雇主が長期的に雇用を継続し、生活を守ってくれる」ことに納得して、過密な長時間労働を実行してきたのではないかという主張を行った。こうした労働者の意識は、高度成長期にいたるまでかなりの規模で維持されてきた農村社会における社会関係(前資本主義的な「イエ原理」に基づく関係)の影響を受けている可能性があり、それが雇主による温情主義的なイデオロギーおよびそれに基づく「制度」形成と「呼応」して、「企業社会」が形成されていることを強調した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため、海外の学会等に出席できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、あらためて最終年度として、資本主義への移行のあり方とその後の資本主義発展に焦点を当てて、研究のまとめを図りたい。具体的には、過年度と同様に、資本主義への移行の類型の事例の1つである日本に照準して、日本における「互酬性」と「モラル・エコノミー」の形成について概念的な把握を試み、事例を跡づけるかたちでその妥当性について確認したい。具体的には、2021年度の成果をふまえて、「企業社会」形成にいたるまでの「資本主義的互酬性」形成をめぐる試みが、基本的には労使関係の当事者間における利害関心の「呼応」に至らず、結局のところは挫折してきたことを歴史的にたどる作業を行う。それとともに、「企業社会」として結実した「資本主義的互酬性」の形成、さらには「モラル・エコノミー」の形成も、1990年代半ばにはグローバル化を1つの背景として崩壊し、現在では「ブラック企業」の台頭に象徴される「互酬性」が欠落した状況に立ち至っていることを指摘したうえで、「互酬性」の復権を前提として「ポスト資本主義」が待望される根拠を明示していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた国際的な研究活動がほとんどできなかったため、旅費として計上される予定の支出が余ってしまった。そのため、研究期間を延長して、有益な研究費の支出を企図するにいたった。
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