2019 Fiscal Year Research-status Report
雇用・労働市場政策と社会保障制度の接点に関する研究
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18K01971
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
廣瀬 真理子 東海大学, 教養学部, 教授 (50289948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下平 好博 明星大学, 人文学部, 教授 (40235685)
小渕 高志 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 准教授 (10405938)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会保障制度 / 国際比較研究 / EU / 最低生活保障 / ベーシックインカム / 社会的投資 / 労働市場 / オランダ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の2年目は、初年度の文献研究の継続からスタートした。国内での研究会は平成31(令和元)年末までは予定どおり、3か月に1度のペースで定期的に行われた。そこでは、本研究メンバー3名が、それぞれの問題意識に沿って発表と議論を深めることができたので、その内容とこれまでの研究実績の概要を以下に報告する。 第1の柱として、欧州の福祉国家におけるベーシックインカムの導入志向に関して、Chapel Hill Expert Survey や、European Social Survey また、OECDなどのデータを用いて、「左翼ポピュリズム」と「ベーシックインカム」の関係が明らかにされ、それは格差社会とポピュリズムの台頭に関する実証研究へと発展した。さらに、欧州の福祉国家におけるポピュリズムの影響について研究が重ねられ、年度末には「ポピュリズム政党の台頭に関する実証研究」と題する論文にまとめられて発表された。 第2の柱として、近年の欧州の福祉国家における地方分権改革に焦点を当てて、それがもたらす各国の最低生活保障制度改革の動向について、急進的な改革を進めてきたオランダの事例を中心に分析・考察を加えた。その結果、雇用・労働市場政策と公的扶助制度の間にはますます就労優先策が進められるいっぽうで、労働市場では不安定就労層が急速に拡大したことが明らかにされた。しかし、こうした「最近の貧困層」の実態も年齢・家族形態・教育歴などにより多様かつ重層的であり、「ベーシックインカム」の試験的事業や「社会的投資」について分析するためには、現地での実証研究が不可欠であることが明らかにされた。 第3の柱として、重回帰分析により、日本国内の生活保護受給者の受給期間が長期化している決定要因について分析が加えられ、年齢階級ごとの受給期間の特徴を扶助の種類の違いに照らし合わせて検討された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画は、平成31(令和元)年末まで順調に進められてきた。これまで研究会と並行して準備を進めてきた欧州における「ベーシックインカム」や「社会的投資」などを中心とした、労働市場と社会保障制度の接点に関する現地調査は、当初、研究メンバーが現地に集まれる時期として、校務が一段落する令和2年の2月~3月に実施する予定であった。 しかし、思いがけないコロナウイルスの感染拡大の影響により、欧州への渡航が不可能となり、現在でもまだその状況は改善されておらず、オランダ・ベルギーにおいて、現地調査が可能かどうか不明である。最終年のまとめの時期を前にして、現地調査を延期せざるをえなくなったことは、大変残念であった。 この間、パリ政治学院が主催した「欧州におけるコロナウイルスの福祉国家への影響」に関するWEB会議に参加するなどして、本研究をできるだけ進められるように、現地の研究者とも連絡を継続している。また、本研究メンバーの間でも情報共有につとめており、最終年度に現地調査が行えるようであれば、ぜひ実現したいと考えており、その準備は現在も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に現地調査を実施することを第一の目標にすえて、今後、コロナウイルスによる渡航条件が緩和されるかどうか注視しつつ、夏季休暇期間に渡航が可能となり、日程調整ができるようであれば、現地調査を行う予定で研究計画を進めている。 また、研究代表者が定年を迎えたため、令和2年度限りという条件で、客員教員として所属機関での科研費活動をみとめられていることもあり、本年度中に調査が実施できない場合は、研究期間を延長できないため、本研究を最優先して全うする覚悟である。 国内での研究会は、WEB会議などを使って行う準備を進めているところである。たとえ現地調査が不可能となっても、可能な限り、これまでの研究成果をまとめて発表することに専念する所存である。
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Causes of Carryover |
研究計画調書に示したとおり、本研究の主要目的として、欧州でのヒアリング調査を通じた実証研究と資料収集を行うため、令和2年の2月から3月の期間に現地調査を行う研究計画を立てて、研究メンバーの旅費と現地での資料収集費を残していた。 しかし、今回のコロナウイルス感染拡大による影響により、同時期のオランダ・ベルギーへの訪問が不可能になったため、平成31(令和元)年度の旅費の予算執行が延期となったことから、次年度使用額が発生することになった。 この繰り越し分は、渡航が可能になった時点で現地調査を行うための予算として使用する予定である。
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