2019 Fiscal Year Research-status Report
世代間ケアに関する意識変化の解明:複数データの二次分析に基づく検証
Project/Area Number |
18K01977
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
中西 泰子 相模女子大学, 人間社会学部, 准教授 (50571650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
施 利平 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (20369440)
鈴木 富美子 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50738391)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会意識 / 世代間関係 / 性別分業 / 地縁 / 高齢者ケア / 子育て / 地域間比較 / 時系列比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、世代間ケア(高齢者ケア及び子育て)に関する意識の時系列的趨勢を明らかにするとともに、当該意識の現代的位置づけを示すことである。そのために複数データの二次分析を行い当該意識の変容の内実を把握した上で、その背景にある世代間ケアの「実態」の変化との関連から、意識の変容の持つ意味を解明する。 高齢者ケアや子育てを、家族がいかにしてどの程度担うのかは少子高齢社会における最も重要な問題の一つだが、世代間ケアに関する意識の長期的変容とその背景は明らかではない。また、ある意識や実態の特徴を捉えるためには、一時点や一地域のみの分析ではなく、比較分析が必要であり、本研究では特に時系列比較の観点から検討を行う。 初年度に全国家族調査(NFRJ)、日本版総合社会調査(JGSS)、「日本人の意識」調査、国際社会調査プログラム(ISSP)の4データの調査票検討や基礎的分析を実施したが、2019年度は調査期間がより長期な「日本人の意識調査」を用い、「老後の生活」「性別分業(女性の就労と家庭の両立・女子教育・家庭内役割分業)」「人とのつきあい方(地縁・血縁・職縁)」に関する意識の趨勢について統計分析を行った。分析には、意識の変化の要因として時代、コーホート、加齢の効果を弁別して把握することができるAPC分析(Age-period-cohort分析)を用いた。分析の結果、「老後の生活」「性別分業」「人とのつきあい方」のそれぞれの意識の変化において、加齢や時代による変化に加えて特定コーホート(団塊世代)の影響がみられることが示された。加えて地域(都市規模)によって、時代やコーホートによる影響が異なった形であらわれることも確認された。そのため、地域による違いを時系列変化に組み込む必要が見いだされた。APC分析に地域変数を含めた分析枠組みについて検討し、分析手法についても研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2ヶ月に1回程度の頻度で共同研究者との研究会を開催し、分析結果について報告し議論を重ねてきた。「日本人の意識調査」を用いた戦後の意識変化についてAPC分析による統計的な把握を行った。分析過程において、地域差の影響力の大きさが確認され、主要な分析軸として分析枠組みに組み込むこととなった。現在までの研究成果を2019年度の数理社会学会大会にて報告予定であったが、コロナ禍による中止で未報告である(報告予定タイトル「女性の就労に関する男女の意識変化と地域差」)。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはコロナ禍によって未報告となってしまった学会での成果報告を2020年度内に行うとともに、地域別の世代・コーホート・加齢効果を推定できる新たな分析手法について検討をすすめる。またこれまでは日本人の意識調査」データを中心として分析してきたが、その分析結果をふまえてNFRJやJGSS、ISSP調査データの分析を行い、結果の頑健性について総合的な検討を行う計画である。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究を通して、当初予定していたAPC分析にさらに地域差を組み込んだ分析手法の検討が必要であることがわかった。そのために、さらに応用的な統計分析を行う必要が生じた(ソフトの購入)。さらに2019年度に予定していた学会報告がコロナ禍で中止となったため、予定していた報告も含めて国内外での学会等において報告を行う予定であり、そのための旅費等が必要となる。また研究会において、関連領域の専門家、研究者を招いてフィードバックを行う計画であるが、コロナの影響がなければ招聘のための交通費や謝金等が必要となる。一方でコロナ禍によりオンラインでのやりとりが必要となる場合には、PC環境やネット環境の充実が必要となる。また先行研究の検討も引き続き行うため、書籍費も引き続き必要となる。
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Research Products
(3 results)