2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Mental Structure of Japanese Soldiers: Through Soldiers' Notes
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18K01989
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
青木 秀男 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50079266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 明 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00381145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アジア太平洋戦争 / 国家 / 日本軍兵士 / 生と死 / 精神構造 / 忠義と恩愛の共同体 / 慰霊 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究分担者(西村明)は2020年度で予定通り調査を終え、2021年度は、コロナ・ウイルス蔓延のため資料収集を十分に行えなかった研究代表者(青木)が、調査を続けることになった。しかしコロナの蔓延は収まらず、予定していた遠隔地の戦争関連の博物館・記念館・研究所などでの調査は行えなかった。同年度は、本研究に関わる主たる研究活動として次のことを行った。一つ、青木が住む広島の県立・市立図書館、出身大学である大阪市立大学の学術情報センター(図書館)において書籍・論文を閲覧・ノートし、また国立国会図書館の遠隔複写サービスにより論文を入手した。二つ、広島県三原市の人権文化センターにおいて毎月開催される部落解放同盟広島県連合会・歴史社会構造部会の研究会に参加し、近代・戦争・部落差別をめぐる研究報告を聞き、また報告を行い、被差別部落民の近代・戦争をめぐる体験報告などの本研究のための情報を収集した。三つ、社会理論・動態研究所の研究紀要『理論と動態』14号の特集「兵士の『生と死』を取り巻く社会」に掲載の原稿「兵になり兵に死す―農民兵の精神構造をめぐる一考察」を執筆し、また岩波書店刊の「戦争と社会シリーズ」1巻の「『戦争と社会』という問い」に掲載の原稿「兵になり兵に死す―学徒兵の精神構造をめぐる一考察」を執筆した。四つ、2022年3月12日に『理論と動態』戦争特集論文の書評会をズームで行い、報告と討議に参加した。五つ、社会理論・動態研究所主催の批判理論講読会に参加してA.グラムシの国家・市民社会・戦争に関する討議に参加し、本研究に関わる理論構築を行い、また同研究所の精神構造研究会に参加し、本研究の主題に関わる研究報告を行うなどの活動を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は2020年度中に資料収集を完了する予定であったが、コロナ・ウイルスの蔓延のため、遠方の研究所や戦争関連施設での資料収集、戦争体験者や遺族・その他の戦争関係者への聞き取りは行えなかった。そのためこれらの調査を2021年に延期したわけであるが、コロナ・ウイルスの蔓延は収まらず、同年度中にも行えなかった。そのため資料収集は、公立図書館・大学図書館・国立国会図書館での文献・論文の閲覧・ノート・複写、Zoomによる書評会・研究会への参加、広島県三原市で開催される月例研究会への参加、インターネットによる文献調査や文献研究によらざるをえなかった。対面的な面接が困難なこと、戦争関連施設での資料が収集できないことで、2021年度中に収集できた資料は、三原市での研究会を除いて、戦争と兵士の精神構造に関する一般的な情報が中心となったが、それは本研究の研究に十分なものとはいえず、兵士の精神構造の分析も、これまで蓄積した知見を大きく前進させたとは言いがたい。このような事情から、2021年度の後半はこれまで収集した資料を基に論文の執筆に集中することになった。戦争関連施設での資料収集、戦争体験者や遺族、その他戦争関係者への聞き取りを行い、一次資料により戦争と兵士の精神構造に関する情報を補填すること、これが今後の課題となる。そのために、本研究の2022年度への更なる延期が不可避となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はコロナ・ウイルスの蔓延が収まらず、遠方の研究所や戦争関連施設での資料収集、戦争体験者や遺族、その他戦争関係者への聞き取りなどが行えなかった。そのため、研究代表者による本研究の2022年度への再延長は不可避となった。2022年4月中旬の現在、コロナ・ウイルスの蔓延はまだ続いている。しかし、研究計画の遂行の上で、また資料データの収集の上で、これ以上本研究を先送りする時間的な余裕はなく、コロナ・ウイルスの蔓延が収束しなくとも、上記の現地調査を行う予定である。研究協力者との調整など、現地調査までにオンラインで可能な限りの準備を行っておきたい。そして、2022年度のできるだけ早い時期に調査に区切りをつけ、研究分担者とともに本研究の成果の最後のまとめに入る予定である。また、そのために本研究が活動拠点としてきた研究会(生と死研究会)を、参加者を増やしてさらに拡充し、戦争研究のネットワークを構築し、そのなかで本研究の最後の成果を問い、論文とし、最後は書籍の刊行をめざしたい。
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Causes of Carryover |
2022年度は、2020年度・2021年度にコロナ・ウイルスの蔓延のためできなかった遠方の研究所や戦争関連施設での資料収集、戦争体験者や遺族、その他戦争関係者への聞き取りを行う。一つ、兵士が戦地で書いた手記、遺書、手紙、日記等を収集する。収集の場所は、図書館(国立国会図書館、自治体の図書館)、戦争関連施設(わだつみのこえ記念館、防衛研究所、靖国神社遊就館)である。二つ、聞き取りを行う。まず、元兵士(可能ならば)や戦没兵士の遺族の聞き取りを行う。広島市在住の戦没兵士の遺族、わだつみのこえ記念館より兵士の遺族を紹介していただく。三つ、戦争関連施設の学芸員の聞き取りを行う。広島県呉市の海事歴史科学館(大和ミュージアム)、山口県光市の回天記念館を予定している。四つ、広島では部落解放同盟広島県連合会の歴史・社会構造部会の月例研究会への参加を続けて、被差別部落民の戦争に関わる体験談を聞く。2022年4月中旬の現在、コロナ・ウイルスはまだ続いている。しかし、研究計画遂行の上で、また資料データの収集の上で、これ以上本研究を先送りする時間の余裕はない。コロナ・ウイルスが収束しなくとも、上記の現地調査を行い、2022年度中に本研究の調査を完了する予定である。
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