2019 Fiscal Year Research-status Report
生活困窮者自立支援に基づく排除と差別に抗する包摂=連帯型地域社会の可能性
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18K02000
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
堤 圭史郎 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (70514826)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 差別 / 生活困窮者 / 連帯 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域社会における「連帯」を基調にした生活困窮者自立支援の条件を索出しようとするものである。本年度は引き続き生活困窮者自立支援制度の現状を整理するとともに、本研究に関わる「労働」「支援」「連帯」等の概念的、理論的整理を進めた。加えて、いわゆる「施設コンフリクト」に関する先行研究を収集し整理した。また、全国の生活困窮者支援活動の事例を文献等により収集し検討を進めているところである。 そのうち、地域社会における「連帯」を基調にした生活困窮者支援モデルの一つとして、西日本にある地域と施設(「貧者の施設」)を取材するとともに、関係資料を収集し整理した。これらの作業をもとに、施設と地域社会による「良好な関係」が継続する要因を検討し、成果を公表した。 また、研究代表者が過去に実施した市民意識調査データ、施設コンフリクトにおいて取材し収集した資料・インタビューデータについて、未着手の部分について再度整理し、今なお見られる貧者に対する差別・排除の状況やそれに対峙する地域社会・市民セクターの現状をふまえ、再検討を行った。それらの検討により、一見するとモラルパニックとして一面的に語られがちな施設コンフリクトにおいて、コンフリクトにおけるアクター間の相互作用に着目することで、コンフリクトの過程にはオルタナティブな社会関係を拓こうとする動きが見られることを見だした。このような検討を行ったのは、本研究課題における日本社会の構造変動の過程とともに、地域社会の形成を意味づけ捉える必要性によるものである。これらの検討の一部は次年度に公表予定である。ホームレス問題が社会問題化し、貧困問題が顕在化して既に久しく、それらが日本社会の構造変動とパラレルに進行する中で、地域社会は社会的排除問題とどう対峙し自身を「変化」させてきているのか/いないのか。さらに取材と重ね検討を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
おおむね、交付申請書記載の研究実施計画のとおりに進められているが,COVID-19の影響に鑑み、取材活動が制限されてきており、今後も続くことが予想されることに鑑みれば、十分とは言い難い状況にある。資料調査等を深化させつつ進めることになろうかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の影響に鑑み、過去に収集した未着手のデータの再検討を行うとともに、新たな取材について方法を検討しつつ進める。
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Causes of Carryover |
資料収集は予定通り行ったが、予定より取材を遂行できなかった。それに伴い、人件費の支出が抑制された。取材費に加え未着手のテープ起こし費用等の人件費を次年度に実施・計上することにした。
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