2021 Fiscal Year Research-status Report
持続可能で公正な地方財政の構築に向けた比較にもとづく財政社会学研究
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18K02015
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
湯浅 陽一 関東学院大学, 社会学部, 教授 (80382571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原子力立地自治体 / 投票結果 / 財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、原子力関連施設の立地自治体の国政選挙や知事選挙に関するデータを収集・分析しながら、3つの国際学会(European Sociological Association、East Asian Sociological Association、International Symposium on Environmental Sociology in East Asia)での報告を行った(すべてオンラインで実施)。いずれにおいても、北海道や新潟県、静岡県などに所在する立地自治体の長期的な投票データを周辺自治体との比較によって分析し、原発の立地とそれに伴う各種の財政的便益の享受の有無が投票行動に与える影響を分析した。また、各立地自治体の長期の財政データと投票データのあいだの変動の関連も検討した。 その結果、一部の原発立地自治体においては、原発を立地していない自治体に比べて、原発を推進する政党への投票率が上昇するという傾向がみられたが、明確な因果関係を見つけることはできなかった。また、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の立地に関して、立候補などのうごきがあった北海道の自治体とその周辺自治体については、国からの交付金の受け入れの諾否をめぐり、原発立地自治体に隣接し、関連する交付金を受け入れている経験のある自治体が応諾する一方で、その経験のない自治体は拒否を示すという顕著な相違がみられた。しかし、財政力指数などの財政データの変動と投票結果との関係については確認できなかった。 これらの結果から、原子力関連施設の立地による交付金の受け入れは、周辺地域も含めて、原子力施設に対する自治体の姿勢に少なくない影響を与える可能性があることが示されたが、明確な因果関係を特定することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度もコロナ禍の影響により現地での調査を十分に実施できなかった。インタビューを実施せずに得られる財政データや投票データの分析により、研究の進捗を図った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度においては、コロナウイルスの感染状況をふまえながら、可能なかぎり現地での調査を実施する。青森県むつ市などにおいて、原子力関連施設への新たな課税のための条例を制定するなどのうごきがみられており、これらの事例についての調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、現地での調査を実施することができなかったことから、次年度使用額が生じた。2022年度は、コロナウイルスの感染状況をみながら、可能なかぎり現地での調査を実施していく。
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