2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K02070
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
東 優子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60330601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小貫 大輔 東海大学, 教養学部, 教授 (60439669)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | bodily integrity / autonomy / 身体の自律と保全 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間のペニスは、包皮によって亀頭が保護されているのが生来の姿であるが、ユダヤやイスラムの民が信仰の証として乳幼児のときに包皮を切除する例や、大人への通過儀礼として切除するアフリカや太平洋諸国の文化・風習などがある。フィリピンでも、古くから、宗教とは関係なく男子の包皮切除が行われており、英語圏でも、19世紀半ばから、「マスターベーション予防」を理由に包皮切除が推奨された時期があり、米国では、保健・衛生上の理由でこれを奨励する医療関係者が多く現存している。第二次世界大戦後の韓国で、一時期、特定の年齢層の90%が包皮切除を経験したというのも、この米国の影響だと推測される。さらには、HIV感染被害が深刻なアフリカ大陸では、感染予防を理由に包皮切除が奨励されている。 日本については、歴史的に「切除」は一般的ではなかったものの、青年期以上に包皮が被った状態であることが「包茎」として蔑まれてきたことは、明治32年の学会誌で発表された調査研究などからも明らかである。今日、日本家族計画協会の思春期・FPホットライン(電話相談)では、常に自慰と包茎が男子の性の悩みごとのトップを争っている。 諸外国での議論はもっぱら「切る?切らない?」に焦点化されるが、日本国内では早期の包皮切除術が一般的ではなく、「切る」ことを奨励する専門家は少ない。国内の議論を特徴づけるのは「むく?むかない?」をめぐる問題である。そこで本研究では、実態を明らかにすることを目的に、「日本におけるペニスの包皮とケアに関する調査」を実施し、4849件(内、外国籍37件)の有効回答を得た。同調査成果は、国際学会(2件)および国内学会(2件)で採択されたほか、性教育専門誌上でも発表され、一部マスメディアでも取り上げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「身体の自律と保全(インテグリティ)」を主題とする本研究では、 (A)トランスジェンダーの性別承認に係る手術要件、(B)男児性器ケアをめぐる保健指導を2本の柱としている。本年度は、(B)に関して、インターネットを利用した大規模な量的調査により、4849件(内、外国籍37件)の有効回答を得た。同調査成果は、国際学会(2件)および国内学会(2件)で採択されたほか、性教育専門誌上でも発表され、一部マスメディアでも取り上げられるなど、予想以上の成果が得られたものとして評価される。一方で、この調査にかかわる作業と調査結果の公表に時間を費やしたため、(A)については文献研究以外に大きな進捗がないことから、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の最終年度について、新型コロナによる影響を踏まえ、当初の予定を変更して研究を推進してゆく。(A)トランスジェンダーの性別承認については、当初予定していた、当事者を対象とした「手術要件」の存在が自己決定を含む「性の健康と権利」に及ぼす影響を明らかにするための量的調査は実施せず、過去10年間における国際学会のアブストラクトの内容分析により、「身体の自律と保全」に関する研究動向を明らかにしてゆく。(B)男児性器ケアをめぐる保健指導については、前年度の研究成果を踏まえ、「男児の養育者」を対象とした量的調査および質的調査を実施する他、前年度の調査票を多言語に翻訳し、国際比較調査を実施する方向で、各国の研究者と調整中である。
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Causes of Carryover |
データ入力等にかかわる人件費(時間数)が、当初予定よりも、短く済んだため
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Research Products
(5 results)