2020 Fiscal Year Research-status Report
重度障害者の就労支援における工賃向上のための「高知モデル」の構築
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18K02112
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
遠山 真世 高知県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (20409551)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 障害者就労継続支援B型事業所 / 工賃 / 障害者優先調達法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は高知県内の障害者就労継続支援B型事業所を対象とした量的調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を考慮し、量的調査の実施は見送らざるを得ない状況であった。なぜなら、障害者就労継続支援B型事業所は、飲食店を営んでいる事業所や、お菓子やパンなど食品を取り扱っている事業所も多く、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けていることが予想されたためである。量的調査では、障害者就労継続支援B型事業所の工賃に影響を与える要因を分析することを予定していたが、本年度は障害者就労継続支援B型事業所の運営状況や利用状況が大きく変化しており、特殊な社会情勢の影響を避けることはできず、本来分析したかった影響要因を確実にとらえることは困難であると判断したためである。 一方で本年度は、これまでに実施してきた障害者就労継続支援B型事業所5か所でのインタビュー調査について、さらなる分析を進めることができた。障害者就労継続支援B型事業所工賃向上を阻む要因や背景を分析し、今後必要な支援や制度について考察した。工賃向上を阻害する内的要因としては、利用者の障害状況や支援のニーズが多様化していることにより、さまざまな支援の必要性の増加が増加していることが明らかとなった。また、外的要因としては受託作業の単価の安さが指摘された。こうした内的要因と外的要因が相互に関連することにより、工賃をこれ以上向上させることが困難な状況にあることも描出された。これらの分析結果から、障害者優先調達法により、受託作業の単価を管理することや、単価の高い作業を受託できる仕組みを構築することの必要性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は高知県内の障害者就労継続支援B型事業所を対象とした量的調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を考慮し、量的調査の実施は見送らざるを得ない状況であった。 なぜなら、障害者就労継続支援B型事業所は、飲食店を営んでいる事業所や、お菓子やパンなど食品を取り扱っている事業所も多く、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けていることが予想されたためである。量的調査では、障害者就労継続支援B型事業所の工賃に影響を与える要因を分析することを予定していたが、本年度は障害者就労継続支援B型事業所の運営状況や利用状況が大きく変化しており、特殊な社会情勢の影響を避けることはできず、本来分析したかった影響要因を確実にとらえることは困難であると判断した。 また各事業所の職員にとって、従来の利用者支援や工賃向上のための取り組みに加え、事業所における感染症対策や、事業所で行っている作業の内容や方法の見直し等の新たな業務を行わなければならなくなっていることは想像に難くない。そのような状況下で量的調査を依頼したとしても、回収率は低くなり十分な回答が得られないと考えられたため、本年度に量的調査を実施することは適切ではないと判断せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けることが予測されるが、新しい生活様式も定着しつつあることから、高知県内のすべての障害者就労継続支援B型事業所を対象とした量的調査を実施したいと考えている。 その前段階として、調査内容を再検討するため、各都道府県で公表されている、工賃の実績や障害者優先調達法にもとづく調達の実態などに関するデータを収集し、工賃に影響を与える要因を探索的に分析したい。 次にその分析結果をもとに量的調査の調査項目を検討したうえで、高知県内においてアンケート調査を実施し、工賃が高い事業所と低い事業所とのちがいや工賃に差をもたらす要因・背景について分析を行う。調査の際には、インターネットを活用する等、事業所職員の負担を軽減しつつ回答数を確保できるよう工夫したい。 また量的調査では、新型コロナウィルス感染拡大の影響を大きく受けた作業内容と、あまり受けなかった作業内容、売り上げを伸ばした作業内容についても分析し、社会環境の変化にも適応し工賃を維持・向上しうる障害者就労継続支援B型事業所のあり方や、就労支援を支える仕組みについても検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は高知県内のすべての障害者就労継続支援B型事業所を対象に量的調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を考慮し、調査実施を断念せざるをえなかった。障害者就労継続支援B型事業所では、飲食店を運営していたり、食品を取り扱っているところも多く、本来分析したかった工賃に影響を与える要因を的確にとらえることが難しく、また、事業所での感染症対策や新たな作業体制の構築など、事業所職員にとっても業務が増大していることから、調査を実施しても十分な回答が得られないと考えたためである。 次年度も引き続き新型コロナウィルス感染拡大の影響が予測されるが、新しい生活様式も定着しつつあることから、改めて高知県内で障害者就労継続支援B型事業所を対象とした調査を実施する予定である。調査内容を再検討するために必要な文献を購入したり、郵送での調査依頼・実施とインターネットでの実施の併用を検討しており、調査票の印刷費、郵便費、データ入力のアルバイト謝金などに助成金を使用する予定である。
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