2019 Fiscal Year Research-status Report
エビデンスをめぐる教育学領域の境界画定に関する思想史的研究
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18K02282
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉田 浩崇 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (10633935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 崇人 広島文教大学, 教育学部, 准教授 (00512568)
宮原 順寛 北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (10326481)
熊井 将太 山口大学, 教育学部, 講師 (30634381)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エビデンスに基づく教育 / 新カント派 / 論理実証主義 / エミール・ラスク / オットー・ノイラート / Visible Learning / 明治日本における教育研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、19世紀末から20世紀初頭に台頭した実証科学に対して新カント派と論理実証主義がどのような応答をしたのかを考察した。新カント派のエミール・ラスクを中心に、「妥当性」は、経験可能な事実の領域と形而上学の領域に還元されない、普遍的真理や明証性を明かすために機能していた。また、論理実証主義の代表と数えられるオットー・ノイラートの百科全書主義が、成人・社会教育の実践を通じた社会改革と連動していた。これら自然科学と人文社会科学の境界画定過程を丹念に読み解くことで、二元論では見落とされがちな思想背景に目を向けることができる。その成果は、杉田浩崇「『妥当性』は自然科学的真理観の批判をいかに可能にしたか―ヘルマン・ロッツェからエミール・ラスクへの系譜の素描から」(『教育哲学研究』第120号、2019年)として結実した。そのうえで、最終年度は、自然科学と人文社会科学の狭間にある教育学がどのような境界画定を行ったのかを検討する予定である。 他方で、「エビデンスに基づく教育」の現状について、他領域の研究者とセッションを持つ機会を得た。例えば、教育方法学会第55回大会ラウンドテーブル「教育実践における教師の判断を支えるものは何か―『エビデンスに基づく教育』の展開の中で」や日本教育心理学会シンポジウム「知見の統合は何をもたらすのか」に研究代表者・分担者が登壇した。さらに、研究成果の一部を含んだ『「エビデンスに基づく教育」の閾を探る』(杉田浩崇、熊井将太編著、春風社)を出版することができた。同書の出版は、広島大学高等教育研究開発センターの公開研究会で合評会の選定される(ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期)など、本科研の対外的な成果発信に繋がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最大の成果は、研究成果の一部を含んだ『「エビデンスに基づく教育」の閾を探る』(杉田浩崇、熊井将太編著、春風社)を出版することができたことである。その中では、科研メンバーがそれぞれ明治期の日本の教育研究、ドイツにおけるVisible Learningの受容のされ方、現象学的教授学の変遷を検討した。各学会のラウンドテーブルやシンポジウムに登壇者として招待されるなど、一定の成果をあげていると言える。 境界画定過程の史的検討をめぐっては、明治期日本の教育研究に関する丹念な調査だけでなく、19世紀末から20世紀前半にかけての新カント派や論理実証主義の実証科学への応答も検討できた。他方で、教育学におけるそれらの影響や、統計学等の拡がりによるモノを含めたアクターの変化を視野に入れた具体的な作業が十分ではない点は、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
前(初)年度と今年度を通じて、19世紀末から20世紀初頭にかけての統計学等の拡がりやその中での哲学を中心とした人文社会科学の応答については大まかな見取り図を描くことができた。最終年度はその見取り図をより精緻にするとともに、教育学がどのような応答をしたのかを検討する。明治期日本の教育研究や精神科学を中心としたドイツ教育学の動向等についてある程度知見の蓄積があるので、モノも含めたアクターの変化を視野に入れた具体的な調査・検討を進めたい。新型コロナウイルス感染状況に応じて、海外での成果発表等の時期等の調整が必要である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う旅費使用の一部変更などがあり、次年度使用額が生じた。次年度使用額は研究成果発表の際の旅費等に使用する。
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Research Products
(7 results)