2021 Fiscal Year Research-status Report
「他者への欲望」という視座からみた特別支援教育実践の分析
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18K02285
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
森岡 次郎 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (10452385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福若 眞人 四天王寺大学, 教育学部, 講師 (50844445)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育関係 / 他者 / 能力観 / 特別支援教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの感染収束が見通せない中で、2021年度は、本研究における「理論」領域に焦点化した研究を行った。研究分担者の四天王寺大学の福若眞人氏とともに、関西教育学会第73回大会(2021年11月15日~21日、オンライン開催)において、「『できる』ようになることを志向する教育観・人間観に対するオルタナティブの探究」と題した自由研究発表を行った。本発表では、遠山啓の特別支援(障害児)教育実践と、ジョルジョ・アガンベンの議論を検討しつつ、本研究課題における「他者への欲望」概念についての理解を深めた。 本研究における理論的成果の到達点として、研究代表者の森岡が単著『教育の〈不可能性〉と向き合う―優生思想・障害者解放運動・他者への欲望』を上梓した。本書においては、特別支援教育に関する諸議論を分析するための理論枠組みとして、戦後日本の障害者解放運動における議論を整理し、レヴィナス哲学における「他者への欲望」理論の援用可能性を模索している。また、同様のモチーフとして、『教育哲学研究』第124号(2021年11月)には、「『他者』に〈ふれる主体〉の生成―『奇跡の人』における『愛撫』に着目して」という論文を投稿し、査読を経て掲載されている。 研究分担者の福若氏は、『教育哲学研究』第123号(2021年5月)に、共著論文として、小島 和男, 福若 眞人, 樋口 大夢, 田中 智輝, 村松 灯「出生の可能性と暴力性―出生主義と反出生主義のあいだで」を発表した。本論文においては、レヴィナスの「繁殖性(多産性)」と反出生主義を中心に考察を行っている。また、『ホリスティック教育/ケア研究』第24号(2021年5月)において、「オルタナティブ」教育に関連する文献の書評、「書評 吉田敦彦著『世界が変わる学び―ホリスティック / シュタイナー / オルタナティブ』」を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染状況を勘案し、2021年度の本研究は、当初に予定していたフィールド調査、および対面での開催を予定していた研究会から計画を修正し、「理論」研究を中心に研究を行った。昨年度に引き続き、研究代表者(森岡)が研究分担者(福若)と共に共同で学会発表を行ったこと、また、各自が教育哲学研究の理論的深化を進め、複数の学会誌への投稿や単著による専門書の出版を行ったことは、十分な研究成果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までの研究成果に基づき、引き続き理論研究を行うとともに、オンラインを活用しつつ、教育実践とのかかわり、教育実践の分析を行っていく。2021年度中には、特別支援学校の教員や障害児・者に関連する施設職員などと、オンラインを通じて連携し、情報交換などを行っている。このネットワークを活用し、今後は上記の理論的成果を元に、教育実践に関する調査研究を行っていく。 研究分担者との役割分担を明確にしつつ、教育哲学の基礎理論研究、および、特別支援教育における「他者への欲望」の具体的な検討を進めていく予定である。 教育実践者、研究者との協力体制を構築するために、2021年度に引き続き、人件費の中から事務補助員を雇用し、本研究をより推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大によって、対面による研究会の開催やフィールド調査等が不可能であったため、旅費等について執行することができなかった。2022年度は可能な限り対面での研究会・実地調査等を行う予定である。また、本研究課題の最終年度として、報告会および報告書の作成などにより経費を支出する予定である。
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Research Products
(5 results)