2019 Fiscal Year Research-status Report
私立大学教育学部におけるカリキュラムの標準性と自律性の形成に関する基礎的研究
Project/Area Number |
18K02290
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
浦野 東洋一 帝京大学, 教育学部, 教授 (70002467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 高樹 帝京大学, 教育学部, 准教授 (20549711)
小入羽 秀敬 帝京大学, 教育学部, 准教授 (70609750)
五十嵐 卓司 帝京大学, 教育学部, 講師 (80783513)
谷村 英洋 帝京大学, 教育学部, 助教 (50614632)
葛西 耕介 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (00769010)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育学部カリキュラム / 教育学教育 / 内部質保証 / 標準化(スタンダード化) / 教育の自律性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度における本プロジェクトの研究活動の概要は、以下の通りである。 (1)プロジェクトメンバーによる研究会を6回開催し(①5月20日、②6月19日、③8月22日、④9月23日、⑤11月25日、⑥2月17日)、研究計画を具体化する研究打ち合わせを行った。とりわけ、今年度は、全国の私立大学教育学部を対象にとする質問紙調査「教育学部教育と教員養成調査」を10月~11月にかけて実施したため、その調査票作成に多くの時間をかけることとなった。調査は「教育」の名を冠するすべての学部・学科のべ109件を対象として実施して行ない、教員139名、事務職員39名から回答を得た。本調査は、「教職課程コアカリキュラム」や、2018年度に実施された教職課程再課程認定への対応の実態、またそれと係わる各「教育」学部・学科におけるカリキュラム改革の動向を、教員のみならず事務職員からも聴き取るという独自性をもつ。コアカリに伴って授業シラバスに変更を加えた教員の割合などのほか、再課程認定に対応するための教授会審議の有無など、実務レベルの情報についても調査項目としている。その詳細の分析は次年度にかけて各研究メンバーで行い、学会発表などを通してその考察成果を公表していく予定である。 (2)その他、教育学部教育の課題創出をめぐるFDの側面とかかわっては、本研究メンバーにより民間教育研究団体の全国大会に場を得て、大学教員・学生・現職教員の三者からなるパネルディスカッションというかたちで実施した。各立場から現状をめぐる課題の所在について認識が語られる一方、「学生たちが教職について学ぶ一定の全体像」、「学生が教師として生きるとき、自己の問いをしっかりと持ち続ける必要」などの論点が共通認識として浮上するなど、〈標準性〉と〈自律性〉をめぐる本研究の中心課題の重要性が改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、「①国が制定した教職課程コアカリキュラムの受けとめ(評価)、②2018年度に実施された教職課程再課程認定への対応、③私立大学教育学部のカリキュラムの標準性と自律性についての現状認識と見解(意見)」等に関する全国規模での質問紙調査を実施するに至った。最終年度に向けて、研究の中核となる基礎情報を得ることができた。また、私立大学の教職課程をめぐっては、全私教協においても同様に教職課程コアカリキュラムへの対応をめぐる調査が行われており、それら関連する調査結果につても一部情報収集を行った。 また、定期的に開催した研究ミーティングにおいては、〈標準性〉検討の観点から「内部質保証に関するガイドライン」(大学改革支援・学位授与機構)や教育学分野の「参照基準(案)」(日本学術会議「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」)、また〈自律性〉検討の観点からは「現代社会における学問の自由」(日本学術会議)などを題材として議論を行い、考察を進めていく上での問題の所在を確認できた。 一方で、大学での具体的実践(テキストや授業内容など)をめぐっては、研究メンバーが所属する大学を除いて、その動向をじゅうぶんに把握するには至らなかった。学生の声を反映させるFD構想をめぐっても同様に、他の動向を把握する作業をじゅうぶんに確保する作業が課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の課題をふまえつつ、研究全体のまとめにあたる今年度は、これまでの調査活動によって得られた情報を整理しながら、教育学部教育のカリキュラム編成、および内部質保証の展望に向けた論点剔の抽出、および問題提起をめざす予定である。 具体的には、以下の活動を予定している。 ①われわれの理解と知見を見つめ直し、広め、深めるために、実施したアンケート調査のデータ、および学会報告の内容について、有識者4~5名を招いて研究座談会を開催する。 / ②アンケート調査のデータと考察を、2020年9月に開催される日本教師教育学会の年次大会において発表する。/ ③ 教育学部学生10名程度(最近の卒業生を含む)の参加と協力を得て、「教育学部学生の卒業基準」(「教員志望者用(校種別)」「 教員外進路志望者用」)を学生が中心になって作成する実践を企画し、実施する。/④教職課程コアカリキュラムを受けて企画、執筆、出版された教職課程科目の「大学教科書」のいくつかを検討し、その特徴を明らかにする。/⑤ アンケート調査のデータを共通の材料として、メンバーが独自の視点から本件研究のテーマについて考察し、独自のタイトルを付して論文化する。――⑥以上の研究成果を『研究成果報告書』に収録し、公表する。
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Causes of Carryover |
全体としては、ほぼ通りに使用額を執行できた。本年度実施した質問紙調査の諸経費が消費増税などの影響もあり、増額となったため、一部研究分担者経費の支出費目を変更せざるを得なくなり、その結果、次年度使用額が若干生じることとなった。 次年度の費用も限られているため、次年度の実施計画(研究報告書印刷費の一部)へと繰り越すことで対応する予定である。
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Research Products
(6 results)