2018 Fiscal Year Research-status Report
教員の職能成長と学校の活性化に寄与する教員の評価システムはどのようにあるべきか
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18K02295
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
杉浦 健 近畿大学, 教職教育部, 教授 (30298989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 英二 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (30071278)
松浦 善満 龍谷大学, 文学部, 教授 (40243365)
大前 哲彦 大阪体育大学, 教育学部, 特任教授 (60097954)
林 美輝 龍谷大学, 文学部, 准教授 (80547753)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教員評価 / 管理職 / 教員の働き方 / メリットペイ |
Outline of Annual Research Achievements |
科学研究費の助成を受け、「学校作りと教職員研究会」のメンバーで、2018年度から2020年度まで「教員の職能成長と学校の活性化に寄与する教員の評価システムはどのようにあるべきか」をテーマに研究を進めている。 2018年度には、日本教師教育学会において「評価育成システムは教員の意欲向上、教育活性化を妨げる ― 大阪府「評価・育成システム」についての調査結果から―」をテーマに発表を行った。日本人間教育学会では「人間教育のための教員評価はいかにあるべきか?-大阪市学力調査給与反映問題を糸口として-」をテーマに研究発表を行った。日本教師教育学会では、大阪府の現職の教頭がよくぞ研究してくれた、ぜひとも研究を進めてほしいとの意見を受け取った。また日本人間教育学会では、大阪府の教育監が発表を聞きに来るなど、教員評価について教育現場での関心が高いことが伺われた。 2018年度8月には、吉村大阪市長が全国学力学習状況調査の政令指定都市最下位を受けて、成績を校長や教員の給与に連動させる案を出した。後に学力調査の成績反映は校長のみとし、教員は参考にとどめるとの案に落ち着いたが、子どもの成績を教員評価に連動させるという、教育の意味を根底から覆す暴論にさまざまな方面から批判が相次いだ。大阪市の教員評価制度は、2019年度からは校長の評価にのみ同一母集団での学力の伸びを反映させる試案になっており、2020年度には本格実施、2021年度には給与反映の予定であり、教員についてもゆくゆくは反映させる意図がある。本研究会のメンバーも研究者の観点から批判を行ってきた。子どもの成績を教員の評価に連動させる仕組みが進むと、最終的には公教育が破壊されることが危惧されている。2019年度には、大阪市の教員評価制度について、その問題点を明らかにして行きたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
管理職へインタビューを行う予定が十分な数を確保できていない。 さまざまなタイプの教員評価を各都道府県に調査に行きたいのだが、十分な時間が取れず、不十分な数しかできていない。 大阪府の行った教員の評価育成システムについてのアンケート結果のローデータを手に入れたが、テキストマイニングの方法を取り入れ分析を行おうとしているが、その手法について十分な理解ができていない。貴重なデータであり、予備分析では教員評価の本質についてアクセスできる可能性があり、今後、研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては働き方改革の観点から教員評価の研究を進めていきたいと考えている。もともと本研究会が教員評価を研究課題としたのは、学校と教員のソーシャル・キャピタル(および同僚性)を阻害し、バーンアウトを引き起こす要因の一つとして教員評価システムの問題が浮かび上がってきたからである。多くの教職員(管理職も含めて)が教員の評価システムに強いストレスを感じていること、不登校や支援の必要な児童・生徒がいたり、保護者からのクレームがあったりなど、厳しい状況におかれた学校や教員がより強いストレスを感じていることが示されている。また自由記述でも教員評価が教員の協働を妨げ、教員が生き生きと働くことを阻害していることが多数示されている。より働きやすい職場を作るために、教員評価の仕組みを改善することが不可欠だと考えている。 教員の評価システムの目的は、教員の意欲・資質能力を高めることや、教職員が一丸となって教育課題に対応するためであり、評価システムはその目的を果たすための手段であるにも関わらず、その本来の目的を果たせておらず、教員評価をして給与に差を付けるという手段が目的化してしまっていると考えている。 以上のような問題意識を踏まえ、2019年度はいくつかの調査・研究を行おうと考えている。1.教員評価を給与に連動させていない都道府県への聞き取り調査、2.2017年度に大阪府の行った教員の評価育成システムに関するアンケートの全データが手に入ったため、その分析(例えば,自由記述だけでも約2800人分)。テキストマイニングなど複数の観点からの分析、3.管理職への聞き取り調査。可能であれば、大阪市の校長への聞き取りもしくは校長会・教頭会へのアンケート調査、4.現職教員への聞き取り調査。特に教員評価システムが教員と管理職との関係にどのような影響を与えているのかについてなど。
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Causes of Carryover |
2018年度に購入予定であったパソコンについて、購入準備の遅れより、2019年度購入に変更したため。 各都道府県への教員評価の調査が2018年度に行えず、2019年度へ実施を変更したため。
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Research Products
(2 results)