2020 Fiscal Year Research-status Report
教員の職能成長と学校の活性化に寄与する教員の評価システムはどのようにあるべきか
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18K02295
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
杉浦 健 近畿大学, 教職教育部, 教授 (30298989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 英二 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (30071278)
松浦 善満 龍谷大学, 文学部, 教授 (40243365)
大前 哲彦 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (60097954)
林 美輝 龍谷大学, 文学部, 教授 (80547753)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教員評価 / 評価・育成システム / 教師のアイデンティティ / 目標管理制度 / 教員支援育成システム / 教師の成長 / 管理職 / 教員の働き方改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これからの教員評価システムのあり方を明らかにすることであった。そのために、①まずは教員評価システムの抱える問題を整理し、②大阪府の教員評価についてのアンケート結果の分析によって、教職員および管理職が教員評価システムをどのようにとらえているのかを明らかにし、③これからの教員評価システムのあるべき形を提案することを目指した。 本研究で明らかになったことは以下の通りである。1.教員の能力を客観的かつ公平・公正に評価することは不可能であること、2.教員評価システムの評価基準には原理的に教員の資質能力や業績を評価するための十分な識別能力がないこと、3.教員評価システムの問題の多くは、給与反映を行うために客観的かつ公平・公正に評価することを目指すことにその根源があること、4.教員評価システムにおける目標設定と管理職との面談は十分な意味があること、 5.教員が教師として成長・発達することとは、教師としてのアイデンティティ形成であること、6.教員としての成長・発達が教師としてのアイデンティティ形成であるからには、教員の成長・発達及びそれに伴う専門性の発達のためには、評定ではなく、支援とケアと協働性が必要であること。 これらの根拠をもとに、これからの教員評価システムについては、教員の業績や能力を客観的かつ公平・公正に評価することが不可能である以上、教員評価システムによる給与反映は無くし、教員育成のために目的を限定すること、さらには教員の成長・発達及び専門性の発達である、教師としてのアイデンティティ形成を促すために、評価と評定を育成の中心におく「教員評価育成システム」から、教員に対する支援とケア、協働性の促進を中心とした「教員支援育成システム」の構築を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「これからの教員評価システムのあり方」が、研究成果を根拠として明らかになってきていると考えられるためである。特に本研究を遂行していくにあたって大きなブレークスルーとなったのは、教員の成長が「教師としてのアイデンティティ形成」であるという考え方であった。 これまで教員評価システムが教員の意欲や資質能力の向上を目指しているにもかかわらず、その目的を果たせていないという結果が一貫して得られてきたが、その理由は十分に理論的に示されていなかった。しかしながら、教員の成長を教師としてのアイデンティティと考えると、その成長のプロセスと教員評価システムが想定する成長のプロセスとがかけ離れたものであるがゆえに、教員の成長を促さない、いやむしろ教員の成長を阻害することを理論的に示すことができた。 予定していたデータ分析やそれに伴う理論的な詰め、さらにはこれからの教員評価のあり方(教員評価育成システムから教員支援育成システムへ)を明らかにできたのは当初の計画以上の進み具合であったが、コロナ感染症のため、インタビュー調査や現地調査が行えなかったのがマイナスであった。そのため、区分としては(2)おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、教員評価システムの問題点が明らかになり、その改善の方向性が明らかになった。現時点の教員評価システムは、システムとしては教員の成長を促すものになっているわけではないのであるが、実際に管理職が教員評価システムを運用するにあたって、教員の成長を促すように活用していることが結果として垣間見られた。 今後の研究として、不完全な教員評価システムではあるが、管理職がそれをどのように活用しているのかを調べることによって、今後の教員評価システムをどのように改善していったらいいのかを明らかにすることを目指している。つまりシステムとして不完全なものをうまく活用している方法を明らかにすることによって、システムそれ自体を変える大きなヒントが見えてくるだろうということである。 またそれと同時に、そもそも教員が自らの成長をどのように形作っているのかを明らかにすることによって、やはりその成長を促すシステムのあり方を明らかにしていくことを目指している。現在の教員評価システムの問題は、リアルな教員の成長と教員評価システムが想定する教員の成長のプロセスが食い違っていることにその起因の一つがあり、教員のリアルな成長に合致した教員評価システムに修正していくことによって、より教員の成長を促す教員評価システム(それは教員評価システムではなく、教員支援育成システムと言っていいのだと思うが)を明らかにできると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症のため、調査研究旅行ができなかった。その分、報告書作成が遅れることとなった。 次年度については、調査研究旅行が可能であれば再開するとともに、報告書を作成し、関係各所に送付する予定である。
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Research Products
(3 results)