2018 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災被災地のコミュニティ形成を支援する社会教育の構造と論理
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18K02300
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
手打 明敏 東京福祉大学, 教育学部, 教授 (00137845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 孝典 筑波大学, 人間系, 准教授 (30453004)
池谷 美衣子 東海大学, 現代教養センター, 講師 (00610247)
生島 美和 弘前学院大学, 文学部, 准教授 (80535196)
丹間 康仁 帝京大学, 教育学部, 講師 (10724007)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会教育 / 公民館 / コミュニティ形成 / コンパクトシティ / 学校再編 / 民俗行事 / 伝統芸能継承活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の被災地である宮城県山元町の地域復興とコミュニティ形成にかかわって山元町へのフィールド調査を7月と12月の2回にわたって行った。7月調査では、津波被災地区における男性住民による「みんなの図書館」運営にかかわるボランティア活動等について聞き取りをおこなった。また、自治会役員から念仏講等の民俗行事の実態や子ども神楽等の伝統芸能継承活動について聞き取りをおこなった。12月調査では、4年前から山元町の青年層が中心となって実施している「やまもとはじまるしぇ」を視察し、関係者と懇談した。 山元町では、震災後に人口流出、高齢化が加速度的に進み、地域の祭りの継承や地域コミュニティの継続が課題となってきていることを確認した。震災後の山元町における地域課題に取り組む住民の動向とそうした住民活動を支えた震災以前からの社会的基盤や住民の学習活動の蓄積の解明を行う必要を明らかにした。山元町では、コンパクトシティ構想のなかで小・中学校の新設が実施され、通学区域の再編が実施された。本年度(平成30年度)は、山元町における学校再編にかかわる基礎的な情報収集に着手した。また、被災後の山元町の行政施策に関する行政資料を収集し、整理をおこなった。 山元町でのフィールド調査と併せて、東北地域の被災地のなかで山元町の復興過程を位置づけるため、宮城県南三陸町、気仙沼市、岩手県大船渡市、住田町において情報収集と住民への聞き取りをおこなった。また、国際比較研究の観点から、2004年のインドネシア・スマトラ島沖の地震による津波で3万人を超える犠牲者と50万人に上る被災者をだしたスリランカ調査に参加し、民間団体(SALVODAYA)による地域災害対応事業(Community Disaster Managment Centre)について調査をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初、研究の主対象地域である宮城県亘理郡山元町の沿岸部に居住する住民のコミュニティ意識、コミュニティ形成にかかわる課題意識について調査を実施する計画であった。しかし被災地が「震災復興の局面からまちづくりの局面」に移行している段階においてまちづくり(コミュニティ形成)に関わる多様な活動が展開されている。こうした活動は歴史的に形成されてきたものであり、また、住民の被災程度や社会的活動の有無によってコミュニティへのかかわり方も異なっていることが明らかとなり、被災地域を限定して質問紙調査重視の研究方法では、多様化する地域住民の活動やコミュニティ形成のプロセスをとらえることは困難であることが自覚されるようになった。 こうした研究状況を乗り越えるため研究方法の再検討をおこない、研究代表者および研究分担者がそれぞれに関心を持つテーマを設定し、そのテーマに従って歴史的、社会的視点からの聞き取りによる質的研究を進めることにした。こうした個別研究の結果にもとづきアンケート調査を設計することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
山元町では、震災以前において青年団、婦人会等の社会教育活動が展開されていた。社会教育活動の蓄積や住民間のつながりが震災復興の基盤となっているということが想定される。このような観点から、研究代表者、研究分担者が以下のようなテーマを設定し、調査研究を進める。 1)被災地の住民の結節点となっている寺院(曹洞宗 普門寺)の役割の解明。2)山元町の新しい祭りである「はじまるしぇ」の実行委員会に集まっている青年の地域コミュニティ形成に関する意識の解明。3)山元町における婦人会等の組織、公民館の趣味サークルなどの女性のネットワークに着目して女性の視点から地域づくりの検討。4)社会教育委員の活動や地域の文化・芸能活動の担い手育成について検証。5)山元町における学校統合計画に対する住民意識の解明。6)山元町における公民館活動を歴史的に跡づけながら、震災後の行政計画及び社会教育計画について考察をおこない、山元町の地域づくりにおいて社会教育が果してきた役割の解明。 以上のテーマについて山元町での聞き取り調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
研究方法の検討を行い研究計画の修正を行ったため、調査票設計費用を執行しなかった。 次年度(2019年度)には、聞き取り調査を中心におこなうため、研究メンバーが複数回フィールド調査を実施し、アンケート調査票を作成する予定である。
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