2021 Fiscal Year Research-status Report
Historical Study on the Transnational Connection and Networking of Women Academics
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18K02323
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
香川 せつ子 津田塾大学, 言語文化研究所, 研究員 (00185711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 啓子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 名誉教授 (70406346)
中込 さやか 立教大学, グローバル・リベラルアーツ・プログラム運営センター, 特任准教授 (00778201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 女性 / 高等教育 / トランスナショナル / ジェンダー / 留学生 / 教育史 / ネットワーク / 国際交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から続くコロナ禍による海外渡航制限のため、当初計画していた現地調査は実施できなかった。しかし国内の大学図書館や国会図書館が所蔵する一次資料や先行研究の渉猟およびネット上で公開された海外情報へのアクセスによって実証的研究を進めた。前年度から引き続いて19世紀末から20世紀初頭にイギリスに留学し、帰国後に教育・科学分野で活躍した大江スミ、二階堂トクヨ、黒田チカの軌跡と業績を検証し(香川・中込)、他方では奨学金によるアメリカのブリンマー・カレッジ等への留学が日本の女子高等教育にもたらした貢献(佐々木)ついて検討した。本年度の新たな取り組みとして、研究代表者の香川は実践女子大学創立者の下田歌子の19世紀末におけるイギリス留学について重点的に調査・研究した。『下田歌子と近代日本ー良妻賢母論と女子教育の創出』(共著、2021年9月刊行)では、下田梅子と津田梅子がともに華族女学校在職中に英米に留学していることに着目し、両者の西洋文化受容の過程を比較考察した。また別の論文では、下田と相前後してイギリスに留学した安井てつと下田を比較し、イギリスの女子教育から受けた影響を体育の奨励に着目して比較考察した。 本研究課題の特質から、研究成果の海外への発信や海外研究者との交流にも努めた。2021年5月の女性と科学に関する国際研究会(Women and Science in the Twentieth Century)では香川が黒田チカについて報告、6月の国際教育史学会(ISCHE)では香川が二階堂トクヨ、佐々木が藤田たき、中込が大江スミについて報告、11月のイギリス教育史学会(HES)では佐々木が日本女性を対象とした米国留学奨学金について報告した。いずれもオンライン開催であり、海外研究者との対面での交流はならなかったが、頂いた質問やコメントを通して考察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画していたイギリスとアメリカでの実地調査が、コロナ禍による渡航制限と受入れ機関の利用制限によって実施できなかった。本研究では、女子高等教育におけるトランスナショナルな交流とネットワーク形成を歴史的に実証するという目的のもと、主として明治・大正期の日本の女性教育者の海外留学に焦点化して共同研究を進めており、日本側の資料に依拠するだけでは限界があり、留学先の資料や記録にあたることが不可欠である。長引くコロナ禍の影響で、2020年度、2021年度と連続して海外調査を断念するという予期しない事態に遭遇し、研究期間再延長の措置をとらざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も引き続き、コロナ禍や欧州の政治情勢を見極めながら、現地調査の可能性を探る。しかし本年度は研究開始から5年目となるため、海外渡航が不可能である場合にはこれを断念して、これまでの4年間に各自が国内外で収集した資料とそれに基づく個別の研究を集約して、共同研究全体としての成果をまとめ公表したい。
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Causes of Carryover |
当初の計画では2020年度を最終年度としており、期間内にイギリス現地での調査と国際学会での報告を実施する予定であった。しかし、コロナ禍という予期せぬ事態のため実施できず、国際学会もオンライン開催となった。そこでこれらの活動を2021年度に実施すべく、研究期間を延長した。ところが、2021年度においてもコロナ感染症が収束せず、海外渡航がかなわなかった。そのため、2021年度の計画を再度変更し、海外出張旅費に充てる予定であった予算額を削減し、物品費を増額して、国内での文献図書資料を精力的に収集した。次年度使用額は、研究成果公表のための経費にあてたい。
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Research Products
(11 results)