2018 Fiscal Year Research-status Report
人口減少地域における「場としてのコミュニティ」を核とする地域教育改革の開発的研究
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18K02363
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
武井 敦史 静岡大学, 教育学部, 教授 (30322209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 桂吾 静岡大学, 教育学部, 講師 (20646674)
中村 美智太郎 静岡大学, 教育学部, 准教授 (20725189)
伊藤 文彦 静岡大学, 教育学部, 教授 (60184686)
鈴江 毅 静岡大学, 教育学部, 教授 (70398030)
梅澤 収 静岡大学, 教育学部, 教授 (90223601)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 場 / 学校再編 / 人口減少 / 地方創生 / 学校統廃合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアクションリサーチの実施に先だって、本研究の問題認識を量的に把握し、地域や一般行政・教育委員会とも共有する必要があるとの観点から、静岡県を対象に人口減少下において配置可能な学校数の推計を行った。同推計においては静岡県の公立小中学校を対象に、国立社会保障・人口問題研究所による学齢期人口の将来予測(2018年推計)および県内小中学校の児童生徒数・立地条件等を基礎資料として、通学可能な配置条件を前提に、3つの学校規模水準をできるかぎり維持しようとした場合に残存させることのできる学校数を推計したものであり、学校数の推計は国内では類例がない。 同研究の成果は日本教育経営学会(2018.6.)において報告し、その含め報告書(『静岡県における小中学校の再編検討ニーズと対応課題』 2018.7. 全40ページ)にまとめて公表した。 推計の結果によれば、例えば小学校で一学年当たり20人、中学校で一学年当たり40人程度の規模を通学圏内で維持しようとすると、2030年までに少なくとも静岡県下の小学校で22%(116校)、中学校で18%(45校)程度の学校について学校配置の見直しを検討する必要が生じる事が明らかとなった。 同報告は静岡県下の全市町に郵送し、また、新聞(静岡新聞7.30.1面、日本教育新聞9.17.4面)等を通じて広く報道された。 この他、研究分担者が本研究に関連して推進・公表した研究として・中村美智太郎がリスクコミュニティの視点から人口減少地域の教育課題を検討しており、また、鈴江毅が特に高校生のメンタルヘルスの観点から人口減少地域の課題と対応を検討している。 フィールドにおけるアクションリサーチにおいては、現在準備段階であるが、会議や研修等に組織的に参画し、今後の方向性を対象市町の担当者も含めて検討を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、理論的検討、調査対象地域の選定および学会(日本教育行政学会)における報告を予定し研究を推進した。 年間20回の研究会(一回あたり90分程度)、下田地域における合宿研究会を開催し、川根本町における事例調査を実施するなど積極的に研究を推進してきた。また、本年3月には研究の進捗により本研究の研究協力者以外の専門性も必要との判断から、有識者11名を加えた拡大研究会を行った。 精力的に研究活動を行った結果もあり、「研究実績」に記載した学会報告、研究報告書の刊行の他、日本教育行政学会において予定されていた学会報告は、より広範な問題意識に照らして公表・検討する必要があるとの観点から、その研究成果の公表と議論をシンポジウム(タイトルは「持続可能な地域コミュニティと学校システムの模索」、研究代表者が課題報告)の形式で実施し、250名あまりの参加を得て活発な議論が展開された。 フィールド調査地の選定においては、現在下田市が本研究チームとの連携を行い、すでに教育委員会においても研究打ち合わせを複数回行い、今後の調査について内諾を得ているところである。また、これと並行してその他複数の自治体(川根本町、牧ノ原市等)において訪問予備調査を実施し、本格的なアクションリサーチの可能性を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は原則的に申請書の通り「シーズの探索」「可能性の醸成」「具象化」のそれぞれに向けたアクションリサーチを行う。また、現在検討している下田市以外のアクションリサーチ対象地域についても少なくとも7月までにその採否を確定する予定である。 ただし下田市以外の地域については、そのニーズは大きいものの、アクションリサーチの推進に必要とされる個々のメンバーの負担が想定していたよりも大きかったことなどから、研究期間内に一定の成果を出す必要からどこまで対象を広げることが妥当であるかについては課題があり、この点も考慮して調査対象を選定する必要があるものと考えている。 このほか、2019年度からは特に国内の先進地域を対象とした事例調査とこれまでの理論的検討を基盤としたモデルの構築も本格的に開始する予定である。 また、「現在までの進捗状況」に記したとおり、研究が想定よりも早く展開し、本研究課題が想定していたよりも広範な人材の参画ニーズをもっていることが確認されたため、今後の研究推進を今回の申請予算内で賄うことが困難な状況が明らかになりつつある。このため、残り2年間ある研究期間待たず、科学研究費補助金への前年度の応募も含め、他の研究者の参画や資金調達の方途を開拓することも2019年度以降の検討課題である。
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Causes of Carryover |
研究費に残額が生じているのは、本年度予定されていた学会報告をシンポジウムとして実施することができたためにその資金を大会本部の資金から捻出し、支出を抑えられたことと、本研究費の支出が2019年度以降はアクションリサーチの進捗により当初想定していたよりも旅費が増大することが予想されたため最大限支出を抑え、他の財源によって研究費を賄ってきたためである。
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