2019 Fiscal Year Research-status Report
三重県で増加する外国につながる高校生の進路形成の課題抽出と解決に向けた重点支援
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18K02413
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
江成 幸 三重大学, 人文学部, 教授 (20269682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
オチャンテ ロサ 桃山学院教育大学, 教育学部, 講師 (00784042)
谷垣 映子 三重大学, 人文学部, 助教 (70303716)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外国につながる高校生 / 進路形成 / 多文化共生 / 日本語学習 / 学び習慣 / 学歴期待 |
Outline of Annual Research Achievements |
三重県において、14歳以下の年齢層に占める外国籍人口の割合は、全国の都道府県別で上位に属している。本研究は、外国語を母語とする高校生と大学生を対象として、教育上の重点課題を明らかにし、進路保障の拡充に向けた分析を行う。 三重県内の制度面では、教育委員会が小中学生を対象とした初級日本語の指導(初期適応支援教室)や小学校入学前の準備クラス(プレスクール)を充実させている。志望先となる県立高校の選択肢が用意されていることや、学校での進路指導、教育委員会主催の高校進学ガイダンスなどが効果を上げ、日本語指導が必要な生徒の高校進学率は9割に達している。 大学に進学した外国につながる若者を対象とした聞き取りでは、来日してからの学習体験を軸に検討した。彼らの共通点は、大学で学ぶ目的意識がはっきりしており、日本語の習得を含めた真摯な学習姿勢を身につけていることである。学歴に関する先行研究では、大学教育の意義として「学び習慣仮説」が提唱されている(矢野, 2009; 濱中, 2013)。外国語を母語とする子どもたちの場合には、日本の学校ないし学歴システムという異文化に適応するうえで、学齢期からの「学び習慣」に注目する必要がある。 またインタビューから、親が進学を勧めたパターンが多く見られた。教育を通じて社会的上昇を願う家族による働きかけ、つまり「学歴期待」は、経済的要因とともに重要とされる(耳塚, 2007)。外国出身の親世代は、日本語の習熟が容易ではなく、単純労働に従事せざるをえない。不安定な雇用環境ゆえに、潤沢な教育投資ができるとは限らないが、子どものモチベーション向上に大きく貢献していることが明らかになった。国際移住する家族の中で、教育への価値意識がどのように醸成され保持されるのか、質的分析を深めることが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
参与観察と聞き取り調査を通じ、継続的に資料収集を行っている。令和元年度に進捗が遅れた理由は、代表者の研究室が校舎改修工事のため移転し、半年間は所蔵書籍・資料を使用できなかったことと、分担者が研究機関を異動し教育活動が多忙になったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスが流行しているあいだは、対面的なインタビューを避け、外国につながる生徒への組織的な支援について、教育委員会、県立高校、NPOを中心に聞き取りを行う。インタビューの件数をさらに増やして分析を行う必要があるため、研究期間を当初の3年間から4年間へ延長申請する予定である。
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Causes of Carryover |
共同研究者が令和2年3月に調査のためフランスへの短期出張を計画していたが、ヨーロッパで新型コロナウィルスの流行が拡大したため、渡航を取りやめた。研究全体の進捗の遅れによる未使用分は、調査費用や学会発表など今後の研究に必要な諸経費であり、研究期間を1年延長して着実に執行する。
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Research Products
(3 results)