2018 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設出身者の学生生活を支えるサポートブックの作成
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18K02439
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
上田 裕美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80302636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小崎 恭弘 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (20530728)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 児童虐待 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、児童養護施設出身者の学生生活の実態とニーズを捉え、現行の学生支援と関連づけながら、児童養護施設出身者の学生生活を支える資源を明らかにすることを目指している。研究1年目にあたる2018年度は、当事者ニーズを明らかにするために、児童養護施設出身学生を対象に、郵送による質問紙調査を実施した。児童養護施設出身者等への民間の奨学助成を受ける全国の国公私立大学等の学生111名を対象に調査票を郵送し、36名から返信を得た(回収率は約32%)。調査結果から、以下のような現状とニーズが明らかになった。 ①回答者が生活していた施設の所在地域は55.6%が都市部であり、校外と山間部に比べて差が見られた。また、施設で生活した期間は5年以上が80.6%を占めていた。 ②大学進学動機としては、「大学卒の学歴が必要であると考えた」が最も多く、次いで「就職や仕事に有利・必要であると考えた」が多かった。 ②大学進学にあたっての困難は、「大学進学にかかる経済的な問題」が顕著に多く、入学後の悩みは「経済的なこと」が最も多く、次いで「将来の進路や生き方」「就職できるかどうか」が多かった。また、悩みや不安を感じたときの主な相談相手(複数回答)は「学内の友人・先輩・知人」「学外の友人・先輩・知人」「施設の職員」の順で多い一方、「誰にも相談しないで自分で解決する」が47.2%見られた。 ④入学後の就労状況は9割の学生がアルバイトをしており、うち、1カ月に50時間以上の労働(学期中)が57.6%と最も多かった。卒業後の仕事で重視することとしては、「安定した生活の保障」と「自分自身のやりがいや成長を感じることができる」が最も多かった。 ⑤大学への要望や期待として、「奨学金・授業料免除など、経済的支援の強化」が最も多く、次いで「保証人がいない場合を支援する制度」が多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、児童養護施設出身者の当事者ニーズを明らかにするために、児童養護施設出身学生を対象にした質問紙調査を計画していた。111名を対象に調査票を郵送した結果、約3割の学生から回答を得ることができ、児童養護施設出身学生の学生生活の現状とニーズを一定程度把握することができた。次年度は、重ねて聞き取り調査を行い、質問紙調査結果をより丁寧に読み解いていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に行った児童養護施設出身者への調査結果を踏まえつつ、全国の国公私立大学を対象に質問紙調査を実施し、学生支援の現状を把握する。また、児童養護施設出身者への先駆的な取組みを行う大学および自治体を訪問し、実践の聞き取りを通して実践内容を精査し、児童養護施設出身者への支援に援用できる視点を抽出する予定である。
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Causes of Carryover |
調査対象者(郵送)を140名と見積もっていたが、実際に郵送した人数が111名であったため、未使用額が生じた。調査結果を補うために、次年度に聞き取り調査を加えたい。未使用額はそのための経費に充てることとしたい。
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Research Products
(2 results)